開業医のミカタ

2020年の経済を予測していく上でキーとなるイベントや、注視していく必要のある国際問題

2020.04.15

2020年の世界情勢を把握する上で注視しておきたい4つの国際問題

 世界情勢を把握しておくことは、投資を行う上で非常に大切です。今回は、2020年の経済を予測していく上でキーとなるイベントや、注視していく必要のある国際問題を4つご紹介します。
 ※本原稿は2020年3月23日に執筆したものです。

完全に見通すことは難しい世界情勢だからこそ、情報収集と落ち着いた行動が大事!

①中東問題(イラン)

 2020年1月3日にイラクのバグダード国際空港で武力攻撃を行いイランのイスラム革命防衛隊のガーセム・ソレイマーニー司令官を米軍が殺害したことで、中東問題が日本でも改めて意識されるようになりました。
 イラクとアメリカ間で緊張状態が続く中、2020年1月8日にはウクライナ航空の旅客機をイランが撃墜し、176名の死者が出る事件が起こりました。この一件に関しても、イラン政府は人為的なミスによるものと最終的に認めながらも、責任の一端はアメリカにあると非難をしています。
 年始の一連の衝突以降、一旦は、イランとアメリカの軍事行動を含めた衝突の可能性は消えていますが、緊張関係が消えたわけではありません。トランプ大統領は今年の大統領選挙に向けて、先送りできるものは先送りしていますが、支持率如何によってはイランに強気の行動を起こすのではないかと考えられており、今後も注意しておきたい国際問題です。

②Brexit(イギリス)

 イギリスのボリス・ジョンソン首相率いる保守党が昨年の12月に行われた総選挙に勝利し、2020年1月末が期限となっていたBrexitの実現を果たしましたが、まだこれで問題が終わったわけではありません。現在は「移行期間」と呼ばれる期間に入っており、この期間中にイギリスとEUが自由貿易協定(FTA)を締結・発行できないと、合意なき離脱と変わらない状況になることが懸念されています。通常、FTAの交渉には複数年かかることが普通なのですが、移行期間は2020年末で終了します。イギリスとEUの双方が合意の上であれば移行期間は最大2年間延長できますが、延長する場合には、6月末までにイギリス・EUの合同委員会で採択する必要があります。しかし、ジョンソン首相に移行期間の延長の意思はないため、合意なき離脱に似た状況が起こる可能性が1月末から12月末に先延ばしをされただけだという見方もあります。EU離脱後も永続的にヨーロッパ市場へのアクセスや顧客へのサービスが提供できるように、イギリス政府はEUへ働きかけています。イギリスの経済を支えるのは金融業をはじめとしたサービス業であり、特にロンドンシティの国政金融センターとしての世界的な地位が、Brexitの後も持続できるのかが、イギリス経済の鍵となりそうです。

③大統領選挙(アメリカ)

 2020年11月3日に実施予定の大統領選挙ですが、民主党は7月13日~16日の民主党全国大会で、共和党は8月24日~27日におこわなれる共和党全国大会でそれぞれの立候補者が確定し、選挙戦へと突入します。共和党からはドナルド・トランプ大統領が再選を目指し立候補することになります。そして、対抗馬となる民主党の候補者は、3月3日のスーパー・チューズデーで勝利したジョー・バイデン氏が最有力と言われています。バイデン氏を含む民主党の候補者には左寄りの政策を掲げる人が目立ち、マーケットが乱れる可能性があると考えられます(現状左派のサンダース氏対中道左派のバイデン氏という構図になる見込みです)。そして、仮に大統領選挙で、トランプ氏が敗北した場合、株式市場などの資産市場に与える影響は決して小さくはないと考えられます。
 また、アメリカのGDPの約7割が個人消費で占められているため、外出禁止措置などでこの個人消費が長期的に冷え込まないようにトランプ政権は200兆円を超える経済対策を示唆しています。この対策が功を奏すればアメリカの経済は徐々に回復していくとみられます。しかし、ひとたび消費が冷え込めば、それが製造業に波及し株式市場に連鎖する流れになり、過去10年以上にわたって上昇し続けてきた株式市場にも多大な影響を及ぼすでしょう。実際に3月23日現在ダウなどのアメリカ株価は大きく値を下げています。トランプ大統領は企業減税や金融緩和の継続のプレッシャーをFRBに与えており、この政策を継続することで景気の腰折れを回避すると考えられますが、民主党に政権交代した場合は、この政策を継続することは考えにくく、大統領選挙の結果によっては、アメリカ経済の今後の予測が大きく変わってくるのではないかと考えられます。

④オリンピック・パラリンピックの開催(日本)

 2020年7月24日~8月9日までオリンピックが、8月25日~9月6日までパラリンピックが、それぞれ東京にて開催されます。コロナウイルスの影響がどこまで長引くかは不透明で、今後の動向次第では、延期や、予定通り実施できたとしてもオリンピックやパラリンピックを見に来る訪日外国人の数に大きな影響が出る可能性が大いにあります。
 そして、新聞を含めたニュースなどでもオリンピックやパラリンピックが終わった後の景気動向に注目が集まっており、見聞きされる機会も多いかと思います。日本単独の要因では、消費税増税による消費の冷え込みの影響が非常に大きく、GDPは年率でマイナス6.3%となりました。キャッシュレス・ポイント還元事業は6月末で終わりますが、マイナンバーを利用したポイント還元システムの「マイナポイント」が9月より7か月間実地されます。ただ、これらキャッシュレス決済による還元の効果が本当に消費税増税による消費の冷え込みを回復させるのかどうかは不透明であり、今回のGDPから消費の冷え込みを考えた際には、十分な景気刺激策とは言えないでしょう。
 オリンピック後の日本の景気を考える際には、内需の冷え込みの度合いやそれが企業業績に与える影響を鑑みて、政府がどこまで景気刺激策を講じて実行するのかが、重要になってくると考えられます。

⑤その他

 2020年3月9日にニューヨーク市場で起こったサーキットブレーカー発動による取引停止をはじめ、その後も1987年以来の大幅安を記録するなど、各国の中央銀行や政府が対策を打ち出していますが、いまだに金融市場の混乱が続いている状態です。また、原油市場の大幅な下落も重なり、世界の経済成長率はリーマンショック以来の低水準となる見通しが発表されています。
 まだまだ投資環境を考えた際にどのようになるのかが不透明なものが多く、慎重な立ち振る舞いが必要とされる局面が多くなりそうです。

まとめ

 今回は4つの世界経済に影響を与えるトピックスをお伝えしました。
 現在、コロナウイルスのパンデミックやそれに関連する経済不安は益々拡がりを見せており、現時点で世界の情勢を完全に見通すことは難しい状況になってきました。
 このような時だからこそ、しっかりと情報収集を行いながら、落ち着いた行動が求められます。焦らずに状況が見通せるまではなるべく急な動きをしないことをお勧めします。

■プロフィール
山下 晃司(やました こうじ)

シニアコンサルタント。500件以上の医師のコンサルティング実績を誇る。資産形成プランニング、ライフプランニング、財務改善、リタイア・相続プランニングなど医師の人生設計のワンストップ・プラットフォームサービスを手掛けている。

 

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