レジャー

トヨタのフラッグシップカーがフルモデルチェンジ

2018.09.21

15代目クラウンの魅力は新次元の走りとコネクテッド技術

2017年の東京モーターショーで「クラウン コンセプト」が初公開され、市販モデルの発売が今年の夏頃と告知されていましたが、6月26日に開催された「ザ・コネクテッドデー」と称するイベントで発表、即日発売となりました。キャッチコピーは「未来とつながるか。CROWN BEYOND」です。先代のロイヤル、アスリート、マジェスタという3つのシリーズを一本化。パワートレーンのラインアップは3.5Lハイブリッド、2.5Lハイブリッド、2.0Lターボエンジンの3つです。

いつかはクラウン

クラウンは庶民がクルマを買うことなど夢物語であった1955年に純国産乗用車第1号として産声をあげました。1983年に発売された7代目は「いつかはクラウン」というキャッチコピーに象徴されるように、ユーザーの憧れのクルマであり、オーナードライバーカーとしては日本の最高級車でした。また、成功を収めた者がクラウンに乗るというジャパニーズドリームのアイコンのひとつでもありました。しかし、近年はその存在感が希薄になっています。

低迷と改革

1996年には2位だった国産車販売台数ランキング(「日本自動車販売協会連合会」調べ)は、2002年に12位に転落。2009~2012年、2015年以降は20位以下と販売台数は右肩下がりになっています。昔と比べて格段に車の種類が増えているという時代背景や、日本人あるいは日本の社会のクルマに対する価値観の変化、社会のグローバル化といった様々な要因があり、クラウンの魅力が乏しくなったことだけが原因ではないでしょう。ただ1989年に誕生した「レクサス」ブランドが2005年に日本でも発売されたことにより、オーナードライバーカーとしてトヨタ自動車の最高級車という地位が揺らいでいると映ります。レクサスはグローバル・ブランドであり、クラウンは国内市場をターゲットにしているという棲み分けはありますが、日本のユーザーにとって、レクサスの登場でクラウンの位置付けや存在理由が曖昧模糊となった感は否めません。その意味において、クラウンの真のライバルはジャーマン3(メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ)ではなく、レクサス。特に同じ価格帯のGS、ISといえるのではないでしょうか。
そのような時代の潮流を踏まえ、トヨタの開発陣はクラウンに次々と改革の手を打ってきました。21世紀になって発売されたモデルには、「ZERO」や「Re BORN」というコンセプトを掲げ、20世紀のクラウンとの訣別を鮮烈にアピール。ピンクや空色、若草色という従来では考えられなかったボディカラーも話題を集めました。人気が低迷するクラウンに明確なアイデンティティーを与えることに知恵を絞っていることがうかがえます。

走りの革新とコネクテッド技術

15代目クラウンで導き出されたその解は「走りの革新」と「コネクテッドカー」です。運動性能を高めるため、プラットフォームをゼロから見直し、人車一体の走りを目指しました。地球上で最も過酷なサーキットといわれているドイツのニュルブルクリンクで、クラウンとして初めてテスト走行を敢行。ダイレクト感に磨きをかけたハンドリングや様々な路面変化にも目線のぶれが少ないフラットな乗り心地という新次元の走りへと鍛え上げました。ネットや雑誌での試乗レポートで、モータージャーナリストはクラウンらしからぬハイレベルな走りに高い評価を与えています。

もうひとつのセールスポイントは「コネクテッド技術」です。今は、あらゆるモノがインターネットにつながるIoT時代。クルマもその例外ではなく、「走る・止まる・曲がる」という基本性能に加えて「つながる」ことが求められています。新型クラウンはDCM(専用通信機)とT-Connectナビを標準装備し、トヨタスマートセンターと通信を行うことができます。T-Connect for CROWNに契約すれば、専任オペレーターに24時間365日、口頭で情報の検索や配信を依頼できます。たとえば、行きたい場所を伝えるだけでオペレーターが目的地を検索しナビに目的地を設定したり、ホテルやレストラン、国内航空券などの予約も依頼したりすることもできます。また人気アプリ「LINE」を通じて、ナビの目的地登録やガソリンの残量確認なども可能です。

そのほか「事故を起こさないクルマ」という究極の理想を目指して、自動運転につながる高度運転支援機能など次世代予防安全パッケージ・TSS(トヨタ・セーフティー・センス)を全車に標準装備するなど、最先端のテクノロジーが満載です。エクステリアに目を向けると、クラウン史上初となるシックスライトキャビンを採用したことにより、クーペのような非常に流麗なサイドシルエットを実現しました。若い層への訴求力を高めたデザインですが、若者のクルマ離れが指摘されている昨今、彼らの振り向かせることも新型クラウンの重要なミッションでしょう。

これまでの日本の自動車史を顧みると、数多くのクルマが生まれては消えていきました。栄枯盛衰の激しい世界で60年以上の歴史を持つことは、紛れもなく名車の証しです。7月の国産車販売ランキングでは10位と出足は好調ですが、クルマに対する日本人の意識が「所有」から「共有」へと変化している時代に、クラウンはユーザーの羨望の的で在り続けることができるのでしょうか。「伝統」を「革新」し続けること。それはクラウンの永遠のテーマです。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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