ファイナンス

思い違いや行動の誤りを認識して幸せに生活するために必要なこと

2020.07.20

Think Smart~より快適で幸せに暮らすための思考法~

著者の作家であり、実業家としての顔を持つロルフ・ドベリ氏が、Think Clearlyに続いて記したのが、人々の考えや行動の誤りを徹底分析した本書です。今回は、著者が得意とする生物学的視点や心理学など多岐にわたる学術研究に基づく52の思考法から選りすぐりのものをご紹介します。

チャンピオンになる

幸せな生活を送るために、ドベリ氏は様々な不合理な行動を引き起こす原因となる「ねたみ」を避けるように忠告しています。ねたみは主に、自分自身の年齢や職業などと似通った人がその対象になることが特徴として挙げられます。たとえば、農家は隣人の農家の土地や生産物をねたむ一方で、芸術家の成功はねたまない傾向にあります。
ドベリ氏は人間が感じるねたみは排除することができないため、上手く回避することが重要だと説いています。具体的には、人との比較をやめることです。これだけで、同僚のボーナスが自分より多かったり、住居がより大きかったりすることなどに伴うストレスを軽減できると言います。また、Think Clearlyにも記されている「能力の輪」、つまり自分自身がチャンピオンになれる得意分野を見つけ出し、その能力の輪の中に居座り続けることで、ねたみを回避できると主張しています。

ブラックスワンを想像した行動をとる

ドベリ氏は誰も予期しない出来事、つまり「ブラックスワン(黒い白鳥)」を想像したほうが良いと説いています。ヨーロッパの人々は、白い白鳥以外存在しないと信じてきていましたが、1697年にオランダ人がオーストラリアを探索中に、初めて黒い白鳥を目撃したことで、起こりそうにないことを表現する際にブラックスワンという言葉が使用され始めたそうです。株式市場においても、しばしばブラックスワンと呼ばれる大きな事象が生じ、たとえば、2008年のリーマンショックや2016年12月の米国大統領選挙でドナルド・トランプ氏が当選したことが挙げられ、その際には世界中の投資家の資産状況に大きな影響を与えました。また、足元では新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが、グローバル経済及び金融市場に甚大な影響を及ぼしています。
ドベリ氏は予想できない異常な事態であるブラックスワンが生じる回数が増加していることに鑑み、起こる確率が非常に低い事象に関しても想定に入れておくべきだと主張しています。これを投資の世界に当てはめると、高成長を期待できる株式や、インフレに弱い現預金や保険のみならず、予めブラックスワンを想定したうえで、相場の急落に備え、資金の逃避先として金や不動産などの実物資産などにも資産を配分にしておき、バランスの良いポートフォリオを構築してことが大切だと言えます。

優秀な人材を積極的にサポート

ドベリ氏は自分自身より優れた能力を持つ人材をサポートすべきと考えています。「社会的比較バイアス」という考えをもとに、優れた個人はより優れた人材を採用する一方で、それ以外の人は自分よりも能力が低い人材を採用し、その能力の低い人はさらに能力が劣る人材を採る傾向にあるといいます。また、能力が低い人たちの間では「ダニング・クルーガー効果」も生じ、自分の能力を的確に認識できない状態に陥ってしまうと懸念しています。
万有引力の法則を発見したアイザック・ニュートンが、1666年から大流行したペストが原因で大学が閉鎖されていた時期に行った研究を、アイザック・バロー教授に提示した際、同教授は自ら職を辞して、ニュートンにポストを譲ったという話があります。このように、短期的には自分自身の地位や役職を脅かす存在であったとしても、非常に優れた人材はいずれその人を追い抜き、飛躍を遂げます。そのため、将来性あふれる人材をサポートすることは、優れた才能を秘めた人をその業界や大学、企業などに留めておくことにもつながり、長期的視点からプラスに働くと述べています。

期待に慎重に対処

ドベリ氏は、人々が作り出す期待には良い効果と悪い効果があると言います。悪い面として如実に表れるのが株式市場です。たとえば、ある年の米国企業の決算は、売上高が97%増、純利益は82%増と驚異的な数字を叩き出しましたが、その企業の株価は決算発表後の数秒間で16%下落し、売買が一時停止されたそうです。理由としては、業績がアナリストたちの市場予想を大きく下回ったためとのことです。このように、アナリストの予想ばかりに注目が集まると、多くの投資家や企業が期待のみに振り回される結果になってしまっていると述べています。
一方で、期待が良い方向に現れるケースとして、1965年に米国の心理学者が行った実験を挙げています。この実験では、学校の先生に対して、知力が伸びる時期にある生徒(ブルーマーと称す)を特定できるツールが開発されたと信じ込ませたことにより、その1年後にブルーマーに選出された生徒のIQの伸び率が、それ以外の生徒の伸び率を大幅に上回ったとのことです。ブルーマーに選ばれた生徒たちへの期待感から、先生が自然のうちに、ブルーマーに対し大きな注意を払うようになったからとされています。このように人々の思考や行動に甚大な影響を及ぼす期待に対し、ドベリ氏は「ブラセボ効果」を用いて、自分自身や大切な人に対しては大いに期待するようにすることで、モチベーションのアップにつながると説いています。一方で、投資の世界など、自分自身で判断やコントロールができないことに関しては、あまり期待を持たず、慎重に対処すべきだと主張しています。

まとめ

ドベリ氏が紹介した思考法は、いずれもすぐに実践に移せるものばかりです。本書をきっかけとして、より快適で幸せに暮らすための思考法を日々の生活に採り入れてみてはいかがでしょうか。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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