ファイナンス

マルキール教授が提示するウォール街のプロフェッショナルに勝る投資法とは!?

2020.01.30

株式投資の不朽の名作~ウォール街のランダムウォーカー~

書籍のタイトルにもなっている「ウォール街のランダムウォーカー」は、初版から多くの版を重ね、既に40年の月日が経った今も、株式投資の不朽の名作として世界中の投資家に愛読されている一冊です。著者のバートン・マルキール教授は、現在米国の名門私立大学であるプリンストン大学の名誉教授であり、フォード大統領時代には経済諮問委員会の委員を務めるとともに、インデックスファンドの生みの親としても知られる金融や経済、投資のエキスパートでもあります。
今回は、本シリーズを初めて手に取る方にも分かりやすく、ランダムウォークとは何を意味するのか、また、マルキール教授が長年にわたり一貫して揺るぐことなく伝える、海千山千のウォール街のプロフェッショナルに打ち勝つアプローチ法やライフスタイル別の投資戦略などをご紹介します。

ランダムウォークとは

本書においてマルキール教授が伝えたいエッセンスの大前提となる株式市場におけるランダムウォークとは、何十年と投資の世界を経験するプロフェッショナルなアナリストや投資家をもってしても、短期的な株価の値動きを的確に予想することはできないということです。マルキール教授は、プリンストン大学の学生たちと共に実施したランダムなコイン投げ実験において、コイン投げの結果を示すチャート上で一定の規則性が生まれないのと同じように、株式の世界でも将来を予測できるようなパターンは生じず、値動きを予想することはできないと主張しています。
そこで、マルキール教授はこのランダムウォークする株式市場を相手に、如何なる投資戦略を用いることが有効かを提示しています。ちなみに、マルキール教授はトップクラスの投資銀行で株式アナリストとして調査業務の経験を持ち、インデックスファンドのパイオニアとして知られるバンガード社の社外取締役を務めたほか、個人投資家として実践の投資の世界においても成功を収めた人物です。

テクニカル分析とファンダメンタルズ分析

多くの投資家が将来の株価の値動きを判断する際に用いる手法として、テクニカル分析もしくはファンダメンタルズ分析が挙げられますが、マルキール教授はどちらの分析手法も十分に機能するものではないと指摘しています。
まず、テクニカル分析に関しては、株価の上昇もしくは下落トレンドが出来上がった後でしか投資をしないため、利益を得るタイミングを逸してしまうことをデメリットとして挙げています。たとえば、テクニカルツールを用い、株価の上昇トレンドが明確となった時には、すでに株価が上昇しています。また、いかなるテクニカル手法を用いたとしても、他に多くの投資家が同様の手法を利用し始めると、その有用性が低下し、最終的には収益を生み出すことができなくなると指摘しています。なお、足元までの80年間のデータを検証したところ、インデックスファンドを持ち続ける投資戦略に継続して打ち勝つテクニカル手法は一つもないとのことです。またマルキール教授は、テクニカル分析手法を用いて投資のタイミングを図ることは非常に危険であると警鐘を鳴らしています。ミシガン大学のセイバン教授の調べによると、1960年代半ばからの30年間において、大きな上げ相場は全営業日のわずか1%しか占めておらず、この大きな上げ相場による株価の上昇を享受できないと、株式投資で得ることが期待できる長期リターンの多くを失うことになる模様です。
次にファンダメンタルズ分析に関しては、ある企業の業績などを徹底的に分析したとしても、そもそも情報源が間違っていたり、分析が正確でないこともがあるとのことです。また、その分析をもとにした企業価値や株式価値の推測が正しくないこともあるため、同手法も絶大な信頼を寄せることができないと見ています。なお株式投資信託は、プロフェッショナルなアナリストが企業業績やマクロ経済などを徹底的に分析するものが多いですが、2013年12月末までの20年間において、代表的な指数であるS&P500が年率9.2%上昇したのに対し、株式投資信託は年率8.36%の上昇に留まる結果になったとのことです。また、仮に一時的に市場平均を上回る良好な運用成績を上げていたとしても、それを継続的に維持することもできていないようです。

プロフェッショナルに打ち勝つ投資法

マルキール教授が提示するウォール街のプロフェッショナルに勝る投資法は、多岐にわたる資産に分散投資するインデックスファンドを購入するだけの非常にシンプルなものです。これにより、大きな上げ相場のタイミングを逸することも、頻繁に売買を繰り返して多額の手数料を支払うこともなくなり、結果的にリスクを抑えながらリターンを高めることができると指摘しています。
また、リスクとリターンは正比例することを前提にして、ライフスタイル別のポートフォリオを提示しており、たとえば30代後半から40代初め投資家であれば、株式を65%、債券を20%、不動産を10%、現金を5%とし、50代、60代になるにつれて、一般的にリスクの高い株式の比率を低下させる一方で、債券の比率を高めるのがよいと主張しています。

まとめ

今回は、株式の世界の大前提となるランダムウォークの意味を明らかにするとともに、マルキール教授が提示するシンプルで効率的な投資手法をご紹介しました。医師の先生方も、一時的な市場の値動きに惑わされることなく、インデックスファンドを用いた長期投資を実践されてみてはいかがでしょうか。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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