ファイナンス

人生を豊かにするためのヒント

2020.03.20

投資の大原則~誰でも実践できるシンプルな投資法とは~

本著の共著者であるバートン・マルキール氏とチャールズ・エリス氏は、それぞれベストセラーの「ウォール街のランダム・ウォーカー」と「敗者のゲーム」を著した投資のエキスパートです。そんな両者が、今回は共著という形で、投資経験の浅い人にも分かりやすく簡潔に、そしてゆとりある老後生活を送るために誰しもが実践できる投資の大原則をご紹介しています。

資産配分が最も重要

投資を行う際には、資産配分とマーケット・タイミング、銘柄選定という3つの決断が求められます。マーケット・タイミングとは、長期的な資産配分を一定の比率に保ちつつも、短期的にある資産を売買することを指します。
そして、マルキール氏とエリス氏は、3つのなかでも資産配分が最も大切であり、投資収益に大きな影響を与えると主張しています。その資産配分方法に関しては、自分自身の収入や貯蓄といった資産状況や年齢、どのくらいの損失であれば耐えることができるかというリスク許容度、投資知識と経験を踏まえて、自身に適した資産配分計画を立てる必要があるとのことです。
そこで、両氏はその中でも年齢に応じた資産配分割合を提示しています。まず、マルキール氏の場合、20代から30代までは株式の割合を75~90%(残り25~10%が債券の割合となる)、40代から50代の人は株式を65~75%、60代は45~65%、70代は35~50%、80歳以上は20~40%の割合で保有すべきとのことです。一方でエリス氏の場合、20代から30代までは株式の割合を100%、40代の人は株式を85~100%、50代は75~85%、60代は70~80%、70代は40~60%、80歳以上は30~50%の割合を示しています。マルキール氏の方が慎重な投資戦略とする一方で、エリス氏は若年世代の知的財産および将来得られると期待される収入に着目して、より積極的な資産配分戦略を採っています。

誰でも実践できるシンプルな投資法

マルキール氏とエリス氏は、ゆとりある老後生活を送るために誰しもが実践できる投資法として5つのポイントを解説しています。
1つ目が、若年層から貯蓄を開始し、それを継続させることです。まずは投資の原資とする資金を貯め、その後、投資によって得られた利益も含めて再投資する複利の効果を享受することこそ、投資の世界で着実に資産を増やすポイントだといいます。
2つ目が、勤務先企業の福利厚生制度や、国が活用を推進する制度を積極的に利用し、税制上のメリットを享受することです(日本の場合、iDeCoやNISAなどがそれに該当します)。
そして3つ目が、市場全体に投資するインデックスファンドを通じて、分散投資を行うことです。インデックスファンドの代表格であるS&P500インデックスと、プロフェッショナル投資家に運用を委託するアクティブファンドの投資成績を比較したところ、2012年6月30日までの過去10年の間に、75%のアクティブファンドは、市場平均のインデックスファンドに対して、成績が劣っているという結果が明らかになっています。また、実際の年率リターンを比較してみても、2012年6月30日までの20年間において、S&P500インデックスファンドが+8.34%であるのに対し、アクティブファンドの平均が+7.00%と1.34%の開きが生じています。
株式のみならず、債券に関しても、アクティブファンドよりもインデックスファンドの方が高い収益率を誇っています。これは、アクティブファンドの場合、ファンドの運用・管理コストである信託報酬分、インデックスファンドの運用成績を下回ると指摘しています。なお、数あるアクティブファンドから、ウォーレン・バフェットのような一握りのマネージャーを探し出すことは非常に難しく、昨年素晴らしい投資収益をあげた投資家が、今年も引き続き優れた成績をあげる確率は、コインで表を出す確率と同じとのことです。そして、両氏が推薦するファンドのなかにおいて、低コストで全世界の株式市場の幅広く分散投資ができるファンドとして、バンガード全世界株式市場インデックスファンドを挙げています(国内の証券会社で取り扱いのあるものでは楽天・全世界株式インデックスファンド(愛称:楽天・バンガード・ファンド(全世界))がそれに当たります)。
4つ目が、自分自身にマッチした資産配分を維持すべく、年1回は資産配分比率を見直す、つまりリバランスを行うことです。リバランスにより、必ずしも収益性が高まるわけではないが、リスクを軽減させることができるといいます。
最後の5つ目には、自分自身で決定した投資方針を厳守し、一時的な価格の上昇や下落に対し、一喜一憂しないことを挙げています。

まとめ

マルキール氏とエリス氏が提示するシンプルな投資法をもとに、日本の投資家にとっては、税制メリットの大きいiDeCoやNISAを活用したインデックスファンド投資が考えられます。その際は、両氏が紹介された年齢に応じて資産配分割を参考にしながら、ご自身にマッチした投資戦略を実践されてみてはいかがでしょうか。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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