開業医のミカタ

資産形成を検討する前にぜひ準備しておきたいポイント

2020.02.25

医師が「資産形成」を検討する前に 見直したい3つのポイント

 年末年始が慌ただしく過ぎていき、1月は休み明けで仕事のリズムが狂い、体のバランスが崩れがちですよね。まだまだ寒い日が多い2月。皆さんもお体にはくれぐれもお気を付けください。
 さて今回は資産形成を検討する前にぜひ準備しておきたいポイントを3つに分けてお伝えしたいと思います。
 実践してもらえると手元に残るお金もだんだん増えるようになり、資産形成の予算作りも楽になると思いますので、ぜひ参考にしてください。

ぜひとも取り組みたいお金の「見える化」

 テレビやインターネットなどでよく特集が組まれている家計の見直し企画では①食費や水道光熱費、被服費などの生活費、②家賃や住宅ローン、リフォーム費用などの住宅関連費、③教育費、④社会保険費、⑤その他の雑費などの種類に分別できる生活関連支出の見直しが中心となっていることが多いですが、医師の方の場合は、①税金、②生命保険料、③借り入れを見直すことによって収支が大幅に改善することがよくあります。
 しかも、生活関連支出は、各ご家庭の事情によって削減が難しい場合も多いですが、今回ご紹介する3つは、ライフプランやファイナンシャルプランから逆算した計画を立て、制度や仕組みを利用することで、今の生活を変えることなく可処分所得を上げることが可能です。
 まずは、中身や内訳を数字で「見える化」して、把握しておくことが大切です。将来的なお子様の留学や結婚資金、親御様の介護といったライフイベントに備える意味でも、ご自身のお金の「見える化」にぜひ取り組んでいただきたいと思います。

①税金を見直す

 税金は直接税と間接税の2つに分けられます。
 直接税とは税金を負担する人が直接納める税金のことで、所得税や住民税、相続税などが該当します。間接税は税金を負担する人と納める人が異なるもので、消費税や酒税、たばこ税などが該当します。このうち医師の方が意識するべきはやはり所得税・住民税、そして医療法人の法人税ではないでしょうか。税金は多くの医師の方にとって一番金額が大きい支出に当たります。しかし源泉徴収や確定申告など、ご自身で直接的に納税事務に関わっていない方が多いこともあり、単純に高いという認識はあっても、どのように納税額が計算されているのかよくわからないと感じられている方も多いようです。それが原因で「節税できますよ」という甘い勧誘に負け必要のない節税スキームや商品に手を出してしまい、後で痛い目に合われた方もこれまで見てきました。そういう事態を招かないように、ご自身の税金がどのようにして算出されるのかを今一度、源泉徴収票や確定申告書を基に確認されることをお勧めします。
 確定申告書の見方はインターネットでも簡単に検索できますので納税のこの時期にぜひ取り組んでみてください。

②生命保険を見直す

 日常生活には、病気やケガ、天災、交通事故など様々なリスクが潜んでおり、多くの方は保険を利用することでそういったリスクに備えています。
 日本人は世界的に稀に見る「生命保険」が大好きな人種といわれています。しかし、日本の人口が縮小する中、生命保険の契約金額も減少傾向が続いています。ピークの1996年に比べて2015年の契約高は約4割も減少したといわれおり、保険業界の競争は年々熾烈になっています。その分高額所得者が多い医師への売り込みは激しさを増しており、不要な生命保険を売られているケースも増えているのです。しかし生命保険は加齢や子供の成長、社会状況の変化などによって必要な保障金額も変わっていきますし、保険の内容も時代とともに古くなっていきます。
 生命保険は税金や住宅費などと共に支出の大きい割合を占めるものになります。だからこそ定期的な見直しを行い、最適化を行うことが肝要です。できれば3年ごとくらいには見直しを行い、不要な支出は抑えていきましょう。

③借り入れを見直す

 医師の方の場合、住宅ローンや事業借入れの返済が収支を圧迫しているケースもよく見受けられます。昨今1%を大きく下回る金利の住宅ローン商品が数多く出回るようになり、かなりの低金利でお借り入れができている方も多いかと思います。しかし住宅ローンも金融商品の1つですので様々な内容や条件があり、ニーズに合わせて選ぶことが重要になります。住宅ローンの種類を挙げると金利では①フラット35に代表される「全期間固定金利型」、②市場金利と連動して金利が定期的に変動する「変動金利型」、③金利が一定期間固定されており、期間終了後はその時の相場で改めて固定金利か変動金利かを選択する「固定金利期間選択型」などがあります。その他返済方式もチェックが必要です。返済方式には、「元利均等方式」と「元金均等方式」の2パターンがあります。「元利均等方式」は月々の返済額が変わらない返済方法ですが、その利息と元本の内訳が変動していくので、最終的には総支払利息が多くなるのが特徴です。一方、「元金均等方式」は毎月元金を同じ金額返済していくので、最初は返済額が大きくなりますが、返済が進むにつれて金額が少なくなり、総支払利息も少なく抑えられます。その他は返済期間の設定も重要な要素になります。これらの条件をしっかり把握して住宅ローンを選択し、尚且つ近年マイナス金利の影響で超低金利の商品が登場したように、時代と共に住宅ローンも新しくなりますので定期的な見直しが必要です。
 一方事業ローンのほうは開業や運転資金、設備投資など用途によって年数や金利などが異なり、融資審査の条件も異なります。金融機関もその条件に応じて様々な条件提示を行うので無理な計画や開業当初などの実績が少ない期間には融資条件も厳しくなります。しかしそれらをクリアすれば有利な条件で借入することも可能なので、融資を検討する段階でしっかりと事業計画を立てることが重要になります。そして経営実績や手元資産が増えていけば、より有利な条件なものに借り換えられるようになりますので、事前の計画と実績作りが肝要です。
 民間の金融機関だけでなく、日本政策金融公庫や自治体の制度融資など公的な機関も融資を行っていますので、この辺りは専門家と協議しながら検討されることをお勧めします。

まとめ

 今回は資産形成を始める前に見直したい3つのポイントをお伝えしました。資産形成は余剰資金の中から行うのが大前提になります。そして長い時間や十分な検討を行えばリスクは軽減できます。そのためにもお金に対する基本的な知識を押さえたうえで、余裕のある資金計画を立てることは非常に重要になります。
 まずは、今回お伝えした3つのポイントの見直しから始めてみてください。

■プロフィール
山下 晃司(やました こうじ)

シニアコンサルタント。500件以上の医師のコンサルティング実績を誇る。資産形成プランニング、ライフプランニング、財務改善、リタイア・相続プランニングなど医師の人生設計のワンストップ・プラットフォームサービスを手掛けている。

 

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