インタビュー

100年以上 地域と関わる 医院としての役割

2020.05.30

荒井歯科医院 院長:荒井 淳次氏インタビュー

明治時代に開業し、5代目にあたる荒井淳次院長に渡り地域と密に関わってきた『荒井歯科医院』。
積極的に高齢者施設への訪問診療を行ったり、地域のデンタルIQを高めることで、歯から健康をサポートする荒井院長が次に考えていることは、次世代へ渡す知識のバトンだった。

受け継がれてきた地域との関わり

―開院100年以上の歴史的にも、地域とは密接な関わりがあったのでしょうか?

荒井 淳次先生(以下、荒井) 「そうですね。祖父は特に地域貢献に力を入れていたようで、地元警察から表彰される機会が度々あったようです。父も青年会議所で地域ボランティアに携わって、歯科医師会の会長に就いていたこともありましたね。というのも、荒井歯科医院は2代目が埼玉県の歯科医師会発足に携わったひとりだったこともあり、開業当時から地域や社会貢献に積極的なんだと思います。そんな背景もあり私自身、荒井歯科で働き始めた7年前から、地域貢献のためにできることを考えています」

― ご実家の医院へ入る前は、どちらで医療に携わっていたのですか?

荒井 「東京医科歯科大学附属病院の義歯外来にいました。飯能には高齢者の患者さんが多いので、入れ歯の知識や技術は必須と考え、義歯を専門にしていたんです。診察や歯学部6年生の指導医など後進の教育も行いましたね」

―歯科医になる、いずれ家業を継ぐという点は、すんなりと受け入れられたんでしょうか?

荒井 「幼稚園の卒園時に書いた、将来の夢の寄せ書きアルバムで〝歯医者〟と書いていたので、継ぐことも歯科医になることも飯能に戻ることも、強い決断をした感じはありません。朝が苦手なので、自宅と勤務先が近い今は私にとって働きやすい良い環境ですね」

―戻られてから、先生が手がけられたことはありますか?

荒井 「まずは新しいレントゲンを導入しました。駐車場を半分潰して、ユニットを2台増やして計5台に。ほかにマイクロスコープの導入や滅菌システムを一新して、治療設備をリニューアルしました。
その設備器具を持って、地域の方々の歯をトータルに診る方針で経営をしています。私が義歯専門だから入れ歯以外は他の医院へ行ってくださいなどと言ってしまったら、来院した患者さんに不便を強いてしまいますからね」

―ほかに患者目線に立った改善は、あるのでしょうか?

荒井 「威圧感を与えないよう、院内スタッフは白衣を辞めてポロシャツにしました。また、待合室に熱帯魚の水槽を飾るなど、安心できる空間になるようにしてきました」

 

「人を喜ばせることが好きで、それが地域貢献への思いに直結しています」

誤嚥性肺炎の発生をゼロにした訪問診療

―さらに現在は、高齢者施設への訪問診療にも力を入れられているとお伺いしていますが、何かキッカケがあったのでしょうか?

荒井 「1番のキッカケは日本で訪問診療が始まったころから関わっているベテラン歯科衛生士との出会いで、その人は現在訪問診療チームのチーフをしてくれています。彼女が所属する医院を探していた際に、当院で働いてくれることになり、5年前から力を入れるようになりました」

―訪問診療による高齢者に対する歯科医療の効果はどの程度あったのでしょうか?

荒井 「劇的に変わりましたよ。施設で行う口腔ケアにより、高齢者の命を脅かすといわれている口腔内の細菌による誤嚥性肺炎の死亡率を下げることができます。当院が訪問診療に伺っている施設では、年間に何件か起きていた誤嚥性肺炎の発生がゼロになったというくらい効果がありました。目に見える効果を得られたことで訪問チームのやりがいも強くなり、自分たちで勉強してくれて、質の高い治療を提供できるといういいサイクルになっていると思いますね。訪問診療は朝9時から夕方4時まで施設をまわって、医院に戻ってからはご家族やケアマネジャーの方へ報告の手紙を書くのも仕事です。やりがいを感じられる環境を得られたことは、とても大きいと思います」

―ご高齢者本人のみならず、周りへの周知により歯の健康に関する知識向上にも良い変化が育まれそうですね。

荒井 「この成果が、まさに歯科医は地域あってこその業種ということだと思います。日本では、予防歯科に関する意識が高いとはいえません。歯科医にかかるべき虫歯や歯周病に罹っている患者は8000万人いると言われていますが、治療を受けているのは800万人です。残りの7200万人にいかに治療を受けてもらうのか。歯科業界全体での課題だと思いますね」

―そのために行うべきことの未来図は、描かれているのでしょうか?

荒井 「後進を育てたい思いがあるので、経営全体を見られる立場になりたいと思っています。これを形にするのに、インベストメントパートナーズさんとの出会いは、非常に助かっています。55~60歳で引退ができるよう、スカイプなどで資産形成のカウンセリングをしていただいています」

―リタイヤ後の具体的なイメージは持たれているのでしょうか?

荒井 「今、携わっている青年会議所は40歳で卒業する団体ですが、その後も何らかの形で地域貢献活動ができないか? それを模索しているところです」

―診療で忙しい中でも、その気持を忘れない原動力とは何なのでしょう?

荒井 「人を喜ばせることが好きで、それが地域貢献をしたいという思いに直結していると思います。それに、地域を盛り上げて良くしていくことは集患にもなりますし、ひいては家族と自分のためというのもあります。地域の人や、来院する患者さんが笑顔になれるような環境の一助になるような地域への貢献活動はずっと続けていきたいですね」

 

▲お口の中を20倍まで拡大して見ることのできるマイクロスコープ(顕微鏡)

 

地域の施設やお宅を巡る訪問診療チームの面々

 

水槽などが置かれ、安心できる雰囲気の待合室

 

最新の治療設備を導入し、安全な治療環境を整えている

 

駅より徒歩5分。荒井淳次院長の代で増改築を行った

 

【荒井歯科医院】

住所:〒357-0038 埼玉県飯能市仲町 6-15
TEL:042-973-7611
休診:火曜日・日曜日・祝祭日
スタッフ数:26人
1日の来患数:40人
1日の訪問診療:70人
ユニット数:5台

 

■担当コンサルタント
山田 裕也(やまだゆうや)

大阪府出身
[ ●日商簿記1級 ●米国NLP協会™認定マスタープラクティショナー●相続診断士]
クライアントの「痒いところに手がとどく」コンサルタントとなり小さな問題から大きな問題、どんな事でも対応できるチームをご提供しています。
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