インタビュー

メガネほど楽しくワクワクするものはない ただの“ものを見る道具”ではないことを伝えたい

2020.04.30

アオヤマメガネ:小池信也氏・恵美子氏インタビュー

1971年に東京は渋谷区の笹塚に開業以来、約50年。
現在も地域密着型のメガネ店として
老若男女問わずに親しまれている「アオヤマメガネ」。
二代目店主である小池信也氏と恵美子氏夫婦に、跡を継いだ際の心構えや、
あふれる“メガネ愛”、今後のビジョンなどを聞いた。

メガネ店はお客からの信頼で成り立っている

―信也様はどちらのご出身ですか?

小池信也氏(以下、信也)「北海道で高校生まで過ごしました。卒業後、メガネの勉強をしたくて東京の専門学校に通うべく上京したのです。というのも、私の実家はメガネ店でして、その当時は、跡を継ぐための修業を兼ねての東京行きでした。結局、私が継ぐ前に実家の店は閉めることになりましたが…」

―専門学校ご卒業後はどのような道に進まれたのですか?

信也「東京の調布にあるメガネ店にお世話になりました。そこも大手ではなく、いわゆる〝街のメガネ屋さん〟でしたが、結局17年ほど働きました。メガネの知識から接客ノウハウ、経営のマネージメント的なことまで学ばせていただきました」

―「アオヤマメガネ」は奥様のご実家だそうですね?

小池恵美子氏(以下、恵美子)「はい、私は生まれも育ちもこの辺りなんです。幼少期のころから比べると、ずいぶんと様変わりしました」

―どのような経緯で信也様が継がれたのでしょうか?

信也「妻と結婚して7年ほど経った2008年にこの店を継ぐことになりましたが、『いずれは継ぐことになるだろうな』と、ずっと考えていました。結局、継いだのがこの年になったのは、前職で長く働かせていただいたので、もう学ぶことも少ないだろうと思ったことが大きいですね。それに私も40歳目前でしたので、年齢的な部分もあったと思います」

―継がれてからは、どのような苦労があったのでしょうか?

信也「やはり、義父の代からのお客様から客層をガラッと変える必要があるのではないかと模索していました。屋号こそ一緒ですが、その当時は、フレームとレンズを合わせて数千円で買える量販メガネ店が台頭していましたので、我々のような個人店はイメージを一新しないと生き残っていけないだろうと思いまして」

恵美子「とはいえ、先代があってこそ現在があるということも忘れてはいけないという思いでやってきました。先代が築き上げたお客様の信頼を、私たちにも寄せていただけるようになるまでは、正直つらい時期でした。改めてメガネ店はお客様からの信頼で成り立っているのだと痛感しましたね」

―どのようにしてお客様の信頼を得ることができたのでしょうか?

信也「前職での経験値もあると思います。お客様は検眼(視力測定)の際に、私たちにまるで眼科の先生に相談するように目の悩みなどを話されます。治療こそ出来ませんが、話をしっかりと聞くなど、コミュニケーションを大切にしています。量販店はそこまでひとりひとりに時間を割けないでしょうから。そういった細かいことでお客様の満足度は上がっていくと考えています。それに、私が継いだことで商品のラインナップもすべて変えました。より個性的な、感性の鋭いお客様にも振り向いてもらえるように舵を切ったのです。じっくりとお話を聞いて、それに応えられる商品を取りそろえていることが大事なのではと思います」

恵美子「もちろん、父の代から通ってくださっているお客様もいらっしゃいますが、私たちからすれば、もう〝家族〟なんですよね。家族構成から近況まで、街での立ち話などを通じてすべてわかっていますから。親から子へ、子から孫へといった感じでお付き合いできるのは、本当にありがたいと思っています。これからも、そういったご近所さんのコミュニティ的なつながりは大事にしていきたいです」

ネットの時代でも実店舗の意義がある

―新しくメガネを購入する際のアドバイスなどはありますか?

信也「とにかく、直感的でもいいので『これがいい!』と思ったものを一度かけてみることが大事だと思っています。それは好きな色で決めてもいいですし、気になる形で決めてもかまいません」

恵美子「メガネほど、見た印象とかけたときの感じが違うものはないんです」

信也「最近はネットショッピングで簡単にフレームが買える時代ですが、実際に手に取ってかけていただかないと、似合う似合わない、かけ心地、重さ、肌の感触などはわかりません。そういう意味でも、現代のネット時代においても、私たちのような店舗の意義はあると思っています」

―おふたりとも、素敵なメガネをかけてらっしゃいますね。

信也「やはり、メガネが好きなんですよね。実家がメガネ店だった幼少期は、1階が店舗で2階が自宅。ずっとメガネに囲まれて育ってきました。これほど楽しくて、ワクワクするものはありません。メガネはただのものを見る道具ではないんだ、ということを伝えていきたいですね」

―今後の展望をお聞かせください。

信也「やはり来てくださるお客様を大事にし、もっと下の世代も巻き込んで、これからも地域で役に立てるメガネ店を1年でも長く続けていきたいです」

恵美子「息子がいるのですが、『僕が継いで1番のメガネ店にしてみせる』といってくれていました。しかし私が『目のトップを目指すならメガネ以外のものもあるのでは?』とアドバイスしたところ、現在は眼科の医師を目指しています。我々がメガネ店で、息子が眼科でと、お互いに〝目に関わること〟で高め合っていければいいですね」

 

メガネの世界的産地として知られる福井県鯖江市のメーカーもラインナップ。「職人が1点1点丹精を込めて作っているというこだわりがわかる商品を仕入れています」(信也氏)

 

アオヤマメガネ
https://aoyamamegane.com/

1970年4月30日生まれ、北海道出身の小池信也氏と1972年10月8日生まれ、東京都出身の恵美子氏の夫婦が営むメガネ店。恵美子氏の父が1971年に開業。2008年に信也氏が跡継ぎに。2015年、現在の場所に移転し営業を続ける。

 

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