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ワイヤレス給電技術の医療分野への応用事例と今後の研究課題

2019.02.27

スマートフォンを置くだけで充電できる!?ワイヤレス給電技術の将来性

スマートフォンを充電器の上に置くだけで充電が開始されるワイヤレス充電器をご存知でしょうか?
今までの充電器と違ってコードで接続する必要がないため、すっきりとした外観となるためガジェット機器として注目を集めています。
そんなワイヤレス充電器の技術の根幹となる「ワイヤレス給電技術」は、医療分野での応用も期待されていて、大きな将来性を秘めている技術分野です。

ワイヤレス給電技術とは?

スマートフォンの充電をコードレスで行うため、電源線に代わるもので電力を送っています。ワイヤレス給電の方式は複数ありますが、スマートフォンの充電を行うものはQi(チー)と呼ばれる規格で製作されています。これは磁気による電力伝送の規格となり、極めて近距離間でワイヤレス給電を行う規格です。

アメリカの企業や、日本の企業も開発に参画しているワイヤレス給電

ワイヤレス給電の大元の技術は、ニコラ・テスラによる地球上空の電離層の反射による電力伝送が始まりでした。この壮大な計画は20世紀初頭当時の技術では実現しませんでしたが、テスラはアメリカを活動の拠点としていたことから、その計画に影響を受けた研究者が多く、ワイヤレス給電技術はアメリカで発展してきたのです。
日本の企業の中にもワイヤレス給電技術の開発に力を入れてきた企業があります。例えば、村田製作所などの電子回路設計メーカーはワイヤレス給電技術に力を入れています。また、電気自動車のワイヤレス充電といった比較的大きな電力を送電する技術も研究開発中です。
ワイヤレス給電の市場の多くは北米であり、今後日本からも北米向けに多くの製品が輸出される可能性があると考えられています。

ワイヤレス給電技術の応用例と将来性

スマートフォンの充電以外にワイヤレス給電技術はどのようなものに応用される可能性があるのでしょうか?
ワイヤレス給電技術の最も壮大な計画として古くから研究されているものとしては、人工衛星に搭載した太陽電池で発電した電力を地上に向けてマイクロ波によって送電するというものです。これには長距離電力伝送が可能となる研究がまだ実用段階となっていないため、構想のままとなっていますが、ワイヤレス給電技術には大きな可能性があるということが伺えます。
その他にも、2016年に大成建設と豊橋技術科学大学は、道路にワイヤレス給電を行える素子を並べて、電気自動車を充電しながら走行することができる道路の開発を行い、実験を行いました。
ドローンの飛行中の充電に関してもワイヤレス給電を用いれば、通常数分から数十分と言われているドローンの飛行時間が充電を行いながら飛行することができるようになるでしょう。そのような技術が確立すれば、ドローンの応用の幅が広がり、多くのドローンを活用したベンチャー企業への期待が高まることにもつながりそうです。
電気を供給するにはコードが必要という概念を根幹から変えてしまうワイヤレス給電技術は、多くの電気分野でイノベーションを起こす可能性を十二分に秘めているのです。

ワイヤレス給電技術の医療分野への応用

こうしたワイヤレス給電技術の医療機器への応用も研究されています。
マサチューセッツ工科大学の研究チームは、ワイヤレス給電素子を搭載したカプセル状の機器を患者に飲んでもらい、ワイヤレス給電と同時に無線通信を行い、体外からの指示で必要な薬を患部に投薬する治療法の研究を行っています。
例えば、駆動期間正常に動作するバッテリの大きさの問題で小型化が困難であった従来のマイクロ医療機器の小型化や、ペースメーターや人工内耳など既存の体内に埋め込む医療デバイスへの給電、長寿命化を目指す研究も進んでいます。
給電と同時に無線通信を行う技術を生かして、今までの医療ではすべて手術により体内の状況を医師が確認しなければならなかったものを、体外から必要な情報を体内のデバイスに届けられるようにし、遠隔で手術を行うことなく体内の状況を確認できるようになれば、患者負担を軽減する新医療技術になるのではといった期待もされています。
しかし、ワイヤレス給電の人体に対する影響はいまだに未知の部分も多く、これからの研究課題となっています。

多くの可能性を秘めたワイヤレス給電技術に期待

今までの送電技術概念を根本から変えるかもしれないワイヤレス給電は、まだまだ研究段階であると言えます。
しかし、スマートフォンのワイヤレス充電などで少しずつではありますが、着実に普及していっています。今まで電線を引かなければ送電できなかったものが、送電線を建設することなく送電をすることができるようになれば、電力の概念すら変えてしまうかもしれません。
医療においても患者負担が軽減されるなどワイヤレス給電技術は様々な分野にイノベーションを起こす可能性を秘めているのです。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部