ファイナンス

テレワークによる需要の変化が及ぼす投資対象への影響

2021.04.10

世の中はここまで変わった!コロナ禍前後で起こる変化とは!?

新型コロナウイルスによる「コロナ禍」は、世の中の様々な常識を大きく変えてきました。その中でも、密集、密接、密閉の三密を避けるよう呼びかけられたことによる外出の自粛の影響で、都市部での通勤による満員電車が三密に当たることで、積極的に在宅勤務(テレワーク)を行う企業が多くなりました。今までは都心の一等地に勤務するために様々な需要があったのですが、通勤事態を行わないという事態になったことで、大きな需要の変化が起こったのです。今回は、テレワークによる需要の変化による各業界の収益構造の変化について考えましょう。

テレワークによる勤務を年間120日以上した人が420万人

野村総合研究所が2021年2月に公開したレポートによると、2020年に120日以上テレワークをした人が20%程度いて、人数にすると420万人となることがわかりました。日本の就業人口は6600万人ともいわれていますので、就業者のおよそ6%程度の人がテレワークを120日以上実施したということになります。
これは、年間の平日がおよそ250日ある中で、テレワークを120日行ったということで、平日のうちの半分(週3~4日)テレワークを行ったことがある人の割合と言えます。ほぼ平日を家で過ごす人が皆無だった以前と比べると、就業人口の6%がほぼ平日を家で過ごすことになるというのは非常に大きな変化です。これだけ大きな生活スタイルの変化はやはり、需要の変化をもたらし、企業業績への影響は大きいものと考えられます。

コロナ禍が起きたために好調となる業界は?

経済全体として、コロナ禍はマイナスの印象が強いですが、逆にコロナ禍による需要が増えた業界も存在します。
例えば、テレワークで、在宅でも会社のサーバーなどのITインフラに外部から接続するような設備の需要が一気に加速しました。今までも在宅でも仕事ができる環境をその気になれば整えることが可能だったのですが、家での仕事に懐疑的な見方が強かったために先送りされていました。コロナ禍によりどうしても整備を行わざるを得ない状況となったことが挙げられます。NTTデータなどのIT企業がこの需要をつかむ形で多くの商品を打ち出しています。在宅勤務によるIT化では特に新しい技術等はなく、すぐに整備が進んだといえます。
また、昼食を家でとる人が増えたことから、手軽に食べられる冷凍食品や即席めんといったインスタント食品の需要も増えました。日清食品、東洋水産、プリマハムの三社は主力に即席めんや加工肉食品を持っていることで、コロナによる巣ごもり需要をつかみ、2020年業績予想を増収としています。
そして、通勤時間がまるまるなくなることから、家での可処分時間が増えたことになります。その影響で、ゲーム業界でもコロナ禍による巣ごもり需要をつかむ形で、ソニー、任天堂は2020年の業績予測を上方修正しています。
世界的な流れとしては、感染リスクの低い移動手段として、自転車の需要が増えたということが挙げられます。欧州では、感染防止のために自転車購入に補助金が出たことから、特需的な需要が発生しました。これらが後押しをして自転車部品メーカのシマノは、2020年の業績予測を増益としています。

コロナの影響を直に受けている観光・飲食業界

テレワークを提唱する中で、ワーケーションという言葉が出てきたように、旅行先でテレワークを行うということを、緊急事態宣言前に政府の記者会見等で言及されていました。
コロナ禍で最も深刻な打撃を受けた業界は旅行業界と言えるでしょう。海外からの観光客はコロナ禍でゼロとなり、国内の旅行客も外出自粛により大きく減っています。GoToトラベルキャンペーンへの批判も強まり、なかなか旅行に行こうという気運が高まってきません。大手旅行代理店のJTBが、売り上げ前年比81%減となるなど、業界全体的に多大な影響を受け、大規模なリストラを行う必要性も出てきているようです。
飲食業界も旅行業界と同様で、会食の中止を呼び掛けたりしていることや緊急事態宣言による営業時間の短縮要請など、コロナ禍がなくならなければ、客足は戻らないのではと言えるような状況が続いています。
しかし、飲食業界は企業によって明暗が分かれています。
ファミリーレストランを展開するすかいらーくグループは売上前年比23%減となる最終赤字となったのに対し、マクドナルドは営業利益が300億円を超え過去最高益を更新する事態となっているのです。マクドナルドは、コロナ禍が始まった直後からいち早くテイクアウトに供給を絞り、ドライブスルーやデリバリーなどのサービスを強化しました。テレワークによる平日の昼食の需要もデリバリーなどでカバーできたとも言えます。その結果、他の外食チェーンとは異なる需要をつかんだと言えるでしょう。

需要の変化を見極め、柔軟な対応を行った企業が勝っている

テレワークの普及は大きな社会変化と言えます。ゲームや自転車など特需的な需要に沸いた業界もあれば、マクドナルドのように需要を見極めて、同じ飲食業界の中でも特異な業績を上げている企業もあります。医薬や医療などの業界はコロナ禍でも影響を受けづらい業界ではありますが、そういった業界にいるからこそ、逆にこうした社会変化を見逃してしまう危険性があります。
コロナ禍は誰も経験したことのない今までにない災害でしたので、様々な社会変化が起きやすくなります。株式投資などを行うような場合でも、社会変化による業績の変化に注目してみてはいかがでしょうか。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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