ファイナンス

海外口座や節税保険にもメスが!~年々厳しさを増す税務調査~

2019.03.03

医師が今行うべき税金対策とは!?

「海外口座の資産なら少しくらいごまかしても大丈夫」そんな常識が今は通用しなくなりました。2018年から、CRS※という世界100か国近くが参加している外国居住者の口座情報を交換できる制度に、日本が加入したことがきっかけです。なんと、この制度により2018年10月時点で55万件もの日本人が所有する海外口座情報を国税庁が入手し、今や富裕層の海外資産は丸裸状態と言われています。年々税務調査は厳しさを増していますので、国税庁の動向に注意しながら税金対策をすすめていく必要があります。

※CRSとは、日本語で「共通報告基準」と呼ばれ、加盟国間で金融口座情報を交換することができる制度です。2014年に策定され、2017年に欧州諸国が加盟し、日本をはじめとしたアジアやオセアニアの国々も2018年に加盟しました。なお、米国はCRSには加盟していません。代わりに米国は2010年に「FATCA」という税務コンプライアンス法を策定し、外国の金融機関に対して米国人の口座情報を報告するよう義務づけています。

最新税務調査の実態

2018年、関西の資産家が集まる場所として有名な兵庫県の芦屋市で、数十億円規模の申告漏れが国税局によって指摘されました。また、日本のCRS加入によって判明した名だたる資産家の方々の「タックスヘイブン」問題もニュースで大きく取り上げられました。
このように、近年とくに富裕層に対する税務調査が厳しさを増しています。国税庁が、富裕層の中でもとくに資産の多い方々をターゲットに税務調査を強化している理由は、第一に多くの税金回収が見込めることです。また他にも、見せしめとして他の富裕層への警告の意味合いも込めているのでは、とも言われています。富裕層は富裕層同士でのつながりが強く、税務調査員が取り調べに来たという情報は瞬く間に富裕層内で共有される可能性が高く、警告としての効果も覿面なのでしょう。
今後も、国税庁は調査員を拡充し税務調査を強化していく方針とのことで、今のところ調査の手が及んでいない開業医の先生方も注意が必要です。

節税保険も販売停止に

2019年2月13日。
保険業界に激震が走りました。
国税庁が国内生命保険会社41社の担当者を緊急招集し、節税目的での加入が横行していた法人を契約者とする保険の税務上の取り扱いを見直し、支払った保険料を損金算入できる範囲に制限をかけるとの通達を出したのです。これにより、昨月末多くの保険商品が次々と販売一時取り止めとなりました。
今回見直しの対象となったのは、2017年に日本生命が販売開始したプラチナフェニックスを筆頭とする全損の商品のみではなく、退職金目的で利用されることの多い長期平準定期保険や、半損の逓増定期保険なども含まれていたためその影響は未だ計り知れません。また、既契約のものに対してもメスが入る可能性もあるため、生命保険を活用して法人税の節税を行う手法は、新たな方針が確定するまで待つのが無難だといわれています。(実際に、2006年に長期傷害保険料の全損が否認された際には、既契約分に遡って損金算入額が変更されており、前例が存在するため)

今こそ公的税制優遇制度の再検討を!

税務調査が強化され、資産が丸裸になりつつあるという背景から、まず検討したいのは公的な税制優遇制度です。掛け金に上限があるため、大きな金額の節税にはなりませんが、税務調査で否認されるリスクのない数少ない手法といえます。代表的な2つの手法をご紹介しましょう。

【確定拠出年金】
個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」の制度改革がすすみ、税制優遇措置による恩恵が非常に大きくなっています。月々の掛け金は全額所得控除の対象となるため大きな節税効果が見込めます。運用益も非課税で、受け取り時にも退職所得控除(あるいは公的年金等控除)を受けることができます。法人の場合は企業型を選択することも可能です。ただし、個人型、企業型問わず途中解約ができないというデメリットがありますので、掛け金は無理のない範囲に設定しましょう。

企業型確定拠出年金の説明はこちら
https://drs-wealth.com/finance/fi210/

【小規模企業共済】
個人事業主のための退職金積み立て制度で、医師の方のおいては、主に個人開業医の方が対象となります。積立金は全額所得控除となり、受け取り時も分離課税の退職所得となるため、積み立ててお得、受け取ってお得な制度と言えます。途中解約した場合には元本割れする場合があり、近年運用率が下がっているといったデメリットはありますが、節税効果のみを見ても検討する価値はあるのではないでしょうか。

まとめ

タワーマンションや、太陽光発電による節税スキームなど、多くの課税制度の裏をかいたスキームが生まれては、過熱感のあるものにはメスが入るといったいたちごっこは今に始まったことではありません。税逃れに対してシビアになってきている今、国が公に認めている税制優遇制度を活用して、少しでもお手元に残る資金を増やすといった基本的な取り組みが大切になってくるのではないでしょうか。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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