ファイナンス

新たなビジネスモデル・医療サブスクリプションの現状

2019.09.24

こんなサービスも!医療現場でのサブスクリプション導入事例

アマゾンの会員サービスであるアマゾンプライムやNetflixなどの動画配信サービスが普及したことで、一般に知られるようになったサブスクリプション。英語で「定期購読」や「会費」などを表す言葉で、日本では定額制サービスとして知られています。
もともと雑誌の定期購読や通販会社の頒布会など、サブスクリプションというサービスは以前から行われていたのですが、デジタル化が進んだことやAirbnbやUberなどのシェアリングエコノミーが広まったことから、一挙に人気に火がつきました。
サブスクリプション事業支援会社Zuoraが、既にサブスクリプションを導入済みの複数企業にアンケートを実施したところ、2012年からの7年間で、収益成長率が300%を超えたことからも、人気のほどがわかります。
動画や音楽配信サービスの利用者が目立ちますが、飲食店やアパレル、自動車など様々な分野もサブスクリプションに進出し、近年では医療分野でも、サブスクリプションが行われるようになりました。

<海外でのサービス事例>

医療系サブスクリプションが特に盛んなのは、自由診療が基本のアメリカです。アメリカでは、高齢者や障害者対象のメディケア、低所得者対象のメディケイドの加入者以外は、民間の保険に加入する必要があります。しかし、実際はメディケイドから漏れた無保険者が約2割いるそうです。アメリカの医療費は、他国に比べての非常に高額であるため、安価で利用できる医療系サブスクリプションの需要があり、以下のようなサービスが提供されています。

【SteadyMD】

オンライン上でかかりつけ医を選ぶことができるサービスで、1人の場合は月に99ドル、家族の場合は169ドルで利用できます。初診の際に、自分の症状にあった医師を選択。その後は、ビデオ通話で時間制限なく診断が受けられるだけでなく、いつでもチャットや電話で質問に答えてもらうことができます。緊急性はなくても定期的に受診が必要な、慢性疾患の患者向けサービスです。

【Sherpaa】

24時間年中無休で専属医師チーム(5~7人)に受診できるオンライン診療サービスです。月99ドルで、1500種類の病気を診てもらうことができます。年間契約はベーシック(500ドル)、プラス(800ドル)、エクストラ(1200ドル)の3プラン。主にチャットや電話を使って診療しますが、エクストラではビデオ通話も使用することができます。

【One Medical】

年199ドルの会員制病院です。現在アメリカの9都市に72の病院があります。おしゃれなカフェのような内装の病院で診察を受けることもできますが、多くの場合、24時間対応のビデオ通話などで診察を受けることも可能です。診察は、予約した当日か翌日に受けることができます。1人の医師が担当する患者の人数が少ないため、一般的な病院よりも長めに診察してもらえるのも特徴です。

【Forward】

富裕層向けのハイテク医療サービスで、月額料金は149ドルです。患者の意見を尊重し、話し合いながら治療方針を決定。待ち時間は1~2分と短い一方、診療時間は60分と長めにとられています。4都市に7つの病院があり、リアルタイム血液検査やボディスキャンなど最新技術を使った診療を受けることが可能です。24時間対応のオンライン診療も受けられます。

【Curolog】

肌トラブルに関する質問の回答とすっぴん状態の顔写真をデータで送ると、皮膚科の医師が症状にあわせた治療薬をカスタマイズして自宅まで送ってくれるサービスで、月額19.95ドルです。洗顔クリームと乳液もセットで送られてくるだけでなく、担当医にチャットで相談することもできます。にきびに悩んでいる高校生などからも、手が届きやすい価格のサービスとして支持されています。

【Smile Direct Club】

歯並びを重視するアメリカならではのサービスです。まず、自宅に送られてきたキットを使うかお店で歯型をとり、写真を撮影。そのデータを歯科医か歯科矯正医がチェックした後、3Dプリンターで作成した透明のマウスピースを使って歯列矯正します。1回払いだと1,895ドル、月払いならば85ドルの24回払いで、頭金が250ドル(合計2,290ドル)です。日中に22時間はめる半年のプランと夜に10時間はめる10ヶ月のプランの2種類から選ぶことができます。
以前からの矯正器具に比べ、3分の1の値段で矯正できるのが人気の秘密で、利用者は70万人を超えました。歯の状態によっては使うことができませんが、特に前歯の矯正をしたい方に向いているサービスです。電話やチャットなどで専門家に相談できる他、ホワイトニングのチューブもセットになっています。オプションで、矯正後にはめるリテーナー(6ヶ月ごとに交換)を、上下セット99ドルで購入することも可能です。

【平安好医生(Ping An Good Doctor)】

中国でも、平安好医生(Ping An Good Doctor)が2015年からサービスを開始しました。
AIのサポートを受けながら医師が診察を行う24時間オンライン診療や病院での診療・予約、名医のセカンドオピニオン、治療に必要な薬品の割引などのサービスを受けることができます。
スタンダードなプランの他、子ども用のプラン、糖尿病に特化したプラン、ガン保険がセットされたプランなど5種類から選択でき、年会費はプランにより499元、999元、1,999~4,699元にわかれています。

<日本でのサービス事例>

日本では、2018年4月の診療報酬改定で、オンライン診療に対する診療報酬が新設されました。しかし、診療料の点数が低いことや、対面診療との組み合わせが必須で、緊急時には30分以内に診療ができることなど、条件が厳しいため、オンライン診療を行っている病院はまだ少数です。しかし、ソフトバンクやLINE、ジュピターテレコム(J:COM)がオンライン診療事業に参入することが決まったため、今後はもっとオンライン診療を行う病院が増えていくと考えられています。医療系サブスクリプションも外国に比べると普及していませんが、日本でも以下のサービスが始まっています。

【テレメディーズBP】

高血圧の治療を、月額4,600円(税抜き・薬込み)でオンライン上で受けられるサービスです。このサービスは自由診療のため、対面初診は年1回で、日本国内ならばどこからでも利用することができます(医師が必要と判断した場合は、対面診療を追加で行うケースもあります)。いつでもチャットで相談することができ、薬は自宅まで配達してもらうことも可能です。

その他にも、以下のようなオンラインで医師に相談できるサブスクリプションは、料金が手頃なこともあり、オンライン診療に比べて、既に多くの人が利用しています。

【Doctors Me】

医師や医療従事者に相談できるサービスで、5種類の専門家に相談できる「相談し放題プラン」は月額324円、回答者を指名できる「指名プラン」は540円です。人間の病気だけでなく、獣医に相談することもできるのが特徴です。医師が、朝9時から夜24時まで待機しているため、「相談し放題プラン」ならば、平均30分程度で回答をもらうことができます。過去の相談内容がQAとして公開されているため、それらを参考にすることもできます。

【アスクドクターズ】

医師向けサイト「m3.com」を運営するエムスリー株式会社のサービスで、月300円(税抜き)で利用できる、医師QAサイトです。5,900人以上の医師が登録していて、月に3回まで医師に直接相談することができる他、200万件以上の相談内容から、自分の症状にあった回答を探すこともできます。

【First call】

医師専用コミュニティサイト「MedPeer」を運営するメドピア株式会社が提供している、チャットとテレビ電話で医師に相談することができるオンライン医療サービスです。月540円で、12科目の医師にいつでも何回でも相談可能。テレビ電話は相談時間が15分なので、画面で症状をチェックしてもらいながら、対応方法を詳しく教えてもらえることができます。

【日経Gooday】

WEBマガジン定期購読者は、月780円で、健康に関する最新記事読み放題、いつでも医師に電話相談できるサービス、ベストドクターズ社が選んだ名医の受診をサポートするサービス(会員登録180日以降から)などを利用することが可能です。

まとめ

サブスクリプションには、解約されやすいというデメリットもありますが、安定的な収入を生むことができたり、今まで利用していなかった人に気軽に利用してもらうことができたりするなど、メリットも多く存在します。
仕事が忙しくてなかなか病院に通う時間がない方や、身体的な理由や交通事情により移動が難しく、病院に通うのが困難な方などに、時間や場所を問わず利用できる医療サービスの潜在ニーズはまだまだありそうです。
2019年6月25日付の日本経済新聞には、厚生労働省が、医療機関での受診回数を減らすため、かかりつけ医の定額制を検討している、という記事が掲載されました。その後、厚労省事務局は「そのような事実はない」とこの報道を否定しましたが、今後また別の形で、医療費の定額制が検討される日も近いかもしれません。
今後の診療報酬改定でオンライン診療がしやすい環境が整えば、今後ますます医療サブスクリプションの普及は加速していくことでしょう。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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