ファイナンス

敗者のゲームで最も効率的な資産運用方法とは

2019.09.15

おすすめ書籍「敗者のゲーム」資産運用は敗者のゲームに

本書は、30年以上にわたり世界を股にかけるグローバル金融機関や大手運用会社向けに第一線でコンサルタントとして活躍してきたチャールズ・エリス氏が、資産運用で成功するための基本原則を、プロフェッショナルのみならず個人投資家にも分かりやすく解説したものです。
本書は1985年に初版が出版され、第6版は世界の金融の中心である米国で100万部超のミリオンセラーとなっており、何十年にもわたる経験や鋭い洞察をもとにしたエリス氏の運用哲学に触れることで、着実な資産形成を目指す医師の先生方にとっても非常に参考なる一冊になるといえるでしょう。

資産運用は敗者ゲームといわれる所以

始めに、エリス氏は、資産運用の世界においては多くのプロフェッショナルを有する金融機関をもってしても、S&P500などの市場平均に打ち勝つことができていないことに触れています。実際に、市場平均に劣る運用成績となったプロの投資家(ファンドマネージャー)の割合は10年間で70%、20年間の長期におよぶと80%のプロフェッショナル投資家が市場平均に負けているようです。なお、個人投資家の運用成績に関しては、さらに悪いパフォーマンスになっており、エリス氏はデイトレーダーに価値を見出していません。
そして、資産運用は勝者のゲームから敗者のゲームに変わってしまったと説いています。TRW社のサイモン・ラモ氏の初心者のための驚異のテニスによると、テニスのプロフェッショナルは得点の80%を自ら勝ち取る一方で、アマチュアは得点の80%がゲームの相手側のミスによるものだとのことです。これは、ゴルフの世界でも同様のことがいえるそうです。
エリス氏は、現在の資産運用の世界における個人投資家は、海千山千のヘッジファンドや有力運用会社、世界を代表する年金基金といった数千にもおよぶプロフェッショナル投資家を相手にしなければならないため、テニスやゴルフと同様に、いかにミスを少なくするかが重要であると説いています。
また、資産運用においても、平均への回帰という統計学的アプローチが確立されていると述べています。つまり、一時的に平均的な運用成績を大きく上回ったとしても、いずれ平均値に戻ってくる現象のことです。この平均への回帰を前提として、敗者のゲームとなった現在の資産運用の世界では、コストをいかに抑えるかがキーポイントになってくるようです。そして、S&P500などの市場平均を上回る運用成績を目指すアクティブ型の投資信託が、売買手数料や信託報酬といったコストを考慮した場合、長期間にわたって市場平均並みの収益率を上げることは極めて難しいと説明しています。

最も効果的な運用手法とは?

エリス氏が提示する資産運用で最も効率的かつ効果的だと言っている手法は、売買を頻繁に繰り返さずに市場平均並みの運用成績を目指し、コストも比較的低いインデックス型の投資信託への投資です。長期的にはアクティブ型の投資信託の80%が市場平均に劣るとともに、どのファンドマネージャーが残りの20%に含まれるのか、投資信託を購入する前に把握することはほぼ不可能であることがその理由です。またエリス氏は、インデックス型の投資信託であれば、信託報酬や売買手数料といったコストも低く抑えられているほか、相場環境や経済情勢、ファンドマネージャーの選択といったことに悩まされることもなく、腰を据えて長期投資を実践できる利点があると述べています。

個人投資家へのアドバイス

個人投資家にとって資産運用を実践する際に最も重要なことは、株式や債券、不動産といった資産への長期的な配分割合の決定であるとエリス氏は述べています。また、その配分割合を決める際には、各資産の成長性や安定性に加えて、自分自身の毎年の収入なども考慮する必要があり、いつの時点で資金が必要になってくるかマネープランを立てなければならないとのことです。さらに、リーマンショックのような大暴落に備え、一つの資産に偏らせず、分散投資を徹底し、一度決めた配分割合を長期的に実行に移すことが肝心であると説いています。
ただし、年に1度は、自分自身が策定した長期の資産運用目標や資産状況などを足元の実績と比較し、長期資産配分割合とのずれが生じている場合には修正する必要があると述べています。また、最新版となる第6版においては、確定拠出年金(DC)で運用する投資家に向けたアドバイスとして、運用商品はインデックス型の投資信託を選択し、市場環境から投資判断を下すのではなく、売買は10年に1回で十分だとしています。そして、確定拠出年金においてもコストに注意を払うべきであると述べています。
なおエリス氏は、株式、債券、米国の短期財務省証券のインフレ調整後の超長期平均年間収益率を、それぞれ4.5%、1.5%、1.25%とみています。医師の先生方も、この収益率をもとに、ご自身のマネープランを踏まえつつ、iDeCoや、つみたてNISAで購入する投資信託の資産配分割合を検討されてみてはいかがでしょうか。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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