第2の中国となりつつある国~ベトナムが抱える経済の課題とは!?~
2018.10.29
親日家の国ベトナム~これからの経済発展に期待できる理由~
ベトナム人に親日家が多くなった背景は諸説ありますが、日本製品のファンが多いことや、ODA(政府開発援助)でベトナムを支援し続けてきたということが大きいと言われています。そんなベトナムですが、近年高い経済成長率を維持しており、注目を集めています。今回は、ベトナムの経済成長の理由と課題について考えていきましょう。
●第2の中国となりつつあるベトナム
ベトナムでは、1960年代のベトナム戦争によって、社会主義政権が誕生しました。それによって社会主義経済となり、長年外資の受け入れを行っていませんでしたが、2000年代のWTO(世界貿易機関)への加盟により、海外取引を活発にする方針を定めたことで、少しずつ海外とのやりとりが行われるようになってきました。
この当時、ベトナムはまだ東南アジア諸国の中でも経済的には貧しい国であったため、積極的に海外からの開発援助を受け、それによって、港や空港、発電所などのインフラが整備され、海外の製造業の工場を誘致することでベトナム人の雇用を生み出す政策を取っていました。
これは、中国が2000年代に人件費の安さ、労働力の多さを売りにして世界中から製造工場を誘致した政策と似ています。現在、中国は人件費が高騰し、自国の製造業で海外へ出ていくような立場となったため、こうした政策を転換しつつありますが、それに代わるように多くの工場を誘致しているのがベトナムと言えるでしょう。
過去に中国でも多くのエレクトロニクス関係の製造工場が建設されましたが、ベトナムでも同様で、安い労働力を売りにして、製品を安く作る工場がベトナム経済をけん引しています。今、先進国の製造業の製造拠点は中国からベトナムに移りつつあり、TPPへの加盟も決まったことで、こうした動きは加速するものと考えられています。
●ベトナム経済の課題 高い歳出と国営企業改革、未熟な株式市場
ベトナム経済発展の足かせとなっているのが、国営企業による非効率な経営です。こうした企業に働く人は公務員となるのですが、ベトナムではGDPに対する公務員給与の比率が東南アジア諸国の中でも群を抜いて高く、経済規模と対称的に、公務員は給与を多くもらっているという状況が続いています。
これは社会主義経済の悪い部分が出てしまっていると言っても過言ではありません。
過去に中国やロシアでも、こうした状況が経済の行き詰まりを生んでしまい、ロシアでは政権が崩壊するクーデターまで発生しています。ベトナム政府もこれをただ見ているというわけではなく、国営企業改革を掲げ、国営企業の民営化や統廃合を行ってきました。これは日本でいう所の一般財団法人などが国内企業の多くを占めている状態だったということをイメージすれば分かりやすいでしょう。
多くの国営企業は利益を生む可能性が低いものばかりでした。
こうした国営企業改革の一環として海外資本の受け入れのためのインフラ整備を行ったのですが、原資の少ない国のため、海外からの援助に頼らざるを得ませんでした。その中で、日本のODAなども積極的に受け入れられ、他の国からの支援も多く受け入れた結果、政府歳出の内訳に海外への債務の割合の増加が問題となっています。
また、民営化した企業が株式会社として再スタートを切るにも、株主が必要となりますが、ベトナム国内にそういった富裕層が少なく、株式市場規模が小さいことも国営企業改革の弊害となっています。海外との株式取引を行うシステムも発達しておらず、未だに発展途上と言えます。
●多くの課題があるが、今後に期待ができる国 ベトナム
TPPへの加入決定により、今後さらに貿易による経済発展が期待できるベトナムですが、課題も多くまだまだ発展途上と言えます。しかし、地理的にも国土の多くの範囲で海に面しているため、海上輸送の拠点を作りやすいことなど大きな利点を有する国でもあります。
さらに親日家の多いということもベトナムに対してよい印象を持つこともできます。
これから先、本コラムをご覧の方の中から、ベトナムの成長企業に投資をする、ハノイやホーチミンなどのベトナムの大都市部の病院設立に協力するという方も出てくるかもしれません。今後の動向に注目したいところです。