ファイナンス

個人開業医の年金事情~老後資金をどのように準備するか~

2018.01.29

個人開業医が陥りやすいセカンドライフ資金の問題と対策Vol.2

前回はセカンドライフ資金の問題がなぜ起こるのかと、目標額の設定方法ついてご説明しました。今回は以下を前提条件とし、その資金をどのように準備すればよいのか、具体的な数値を用いてご説明します。【前提条件】

45歳 個人開業医(法人化の予定なし)

リタイア希望時期 70歳

奥様40歳、ご長男10歳、ご長女7歳

年収  院長2000万円、奥様500万円

保有資産 2000万円(預貯金のみ)

目標額 2億円(70歳時点)

 

まず、多くの日本人が老後資金の準備と聞いて思いつく方法は「貯金」なのではないでしょうか。

2億円を全て預貯金で準備使用とすると以下のようになります。

 

全く利子が付かないと仮定すると

(2億円-2000万円)÷25年÷12ヶ月=60万円

と月々60万円の積み立てが必要になります。

世帯年収が2500万円あるとはいえ、生活費や、保険料、教育費の支払いや住宅ローン等の返済とは別にこれだけの額を貯めるのはかなり厳しいのではないでしょうか。

 

ではどうするのか?そのためには資産を運用することも1つの選択肢として考えられます。

もし仮に平均1%の利回りを達成できれば、60万円→約58.7万円に、平均3%の利回りを達成できれば、60万円→約44.8万円に、万が一平均5%の利回りを達成できれば、60万円→33.6万円まで圧縮できます。

このように複利の効果を活用すると月額の貯金額を大幅に低減できるのです。1年でも早くから積立を始めることが出来れば、その効果はさらに大きくなります。

日本国内の定期預金の利率と比較すると3%、5%といった数字は非現実的な数値のように思われるかもしれませんが、世界中の金融商品の利回りは平均4~6%であると言われていますので、ある程度の投資の勉強をすれば可能なレベルです。しかし、たとえ年利5% (税引き後)で回せたとしても毎月30万円以上の積立が必要となるため、教育費やローンを抱えている世代にとってはまだまだ現実的ではないかもしれません。

年収が2000万円ある個人開業医にとって最も大きい支出は、特に何も対策されていらっしゃらなければ所得の半分に相当する「税金」となるでしょう。この税金を活用して老後資金を準備する方法もあります。

例えば、最近導入されている方も多くなりましたが、確定拠出年金でご夫婦共に上限額68,000円ずつ拠出すれば、年間1,632,000円の所得控除を受けながら老後資金を積み立てることが出来ます。

60歳までの15年間積立を行い5%で運用できたと仮定すると、節税を加味した実質の手出し約1591万円で約3635万円の資金が準備できる計算となります。

また小規模企業共済も同様に所得控除となり、確定拠出年金との併用も可能で、2名までの専従者も加入できますのでこちらも検討の余地があります。

ただし、昨今の運用実績を見るかぎりでは複利運用の効果は期待しない方が懸命でしょう。

ここまででご説明した方法は全て、老後資金を退職時期までに貯めて、リタイア後はそれを切り崩しながら生活するという考え方でしたが、資産を作り、資産収入を受け取るという手法もあります。年金保険、不動産等の賃料収入、株式やファンドからの配当収入などがそれに当たります。

もちろん、資産収入を受け取るための資産を築くためには、出資が必要となりますが、例えば月20万円の資産収入があれば、それは15年間で3600万円に相当し、15年以上価値が残る資産であれば、平均寿命以上に長生きした場合や、奥様のための生活保障にもなりますので、「貯めて切り崩す」資産と併せて、このような「築いて受け取る」資産を持つことができれば、より安心できる状態となるのではないでしょうか。

このように考えていくと、最初貯金だけでは不可能と思われた2億円の老後資金の準備も現実味を帯びてきますよね。

以上をまとめると、老後資金を考える上での重要成功要因は以下の4つです。

①現役時代に生活レベルを上げすぎないこと

②少しでも早く始めて時間を味方につけること

③税金や保険等の見直しで資金を確保すること

④貯めて切り崩すのみではなく、築いて受け取る資産も組み込むこと

本コラムが、皆様の老後をより豊かなものとする手助けとなれば幸いです。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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