減らさない資産運用方法における3つの柱
2017.07.31
「増やす資産運用」と「減らさない資産運用」の使い分けをしていますか? Vol.2
しかし、減らさない資産運用では、「単なるリスク分散だけとは異なる安全な投資」や「相続税対策、事業継承対策」、および「本業の重視」の3つを柱とします。
1.単なるリスク分散だけとは異なる安全な投資とは
投資にリスク分散は必須で、リスク分散方法はさまざまな媒体で語りつくされており、とてもすべてを紹介できません。
そこでリスク分散の考え方としてあまり取り入られていない考え方・方法を2つ紹介します。
1-1 少ない資産でハイリスク・ハイリターンの運用
預金などローリスク・ローリターンの運用をベースに、多少リスクある投資を余剰資金で行うという形で分散投資を行われている方が多いかと思います。
例えば、資産全体の5割でリスクを取った投資をするとします。
世界的には、金融商品は平均4~6%で回っているため、資産の半分で、ミドルリスク・ミドルリターンの投資を行うと、資産全体では2%~3%の利回りが期待できることになります。
一方、資産全体の1割でハイリスク・ハイリターンの運用を行うとどうでしょうか。投資商品にもよりますが、数年で資産を倍にすることを目標とする商品(利回り20%~50%)も世の中には存在します。
1割のみでハイリターンを狙うことで、資産全体でリスク分散した投資と同じ程度の利回りを目指すという考え方もあるのです。
逆に運用に失敗した場合のことを考えてみましょう。
株式投資など少し高い利回りが期待できる投資を行っていると10%から20%の資産が減少する可能性があります(資産全体では5%~10%減少)。
リーマンショックの際などには、比較的リスクが低く初心者向けといわれていた商品の中にも、半値以下になったものも存在しました(資産全体では25%以上の減少)。
一方、資産全体の10%でハイリスクな運用を行っていた場合は、その全額を損失しても、最大10%を失うのみで済みます。
リスクを抑えるために、あえて少ない資産でハイリスクな運用を目指すというリスク分散の投資方法も選択肢の1つとして持っておくと良いでしょう。
1-2 リスクオン・オフの市場心理に注意を払った分散投資
リスクオンとは、リスクの高い投資商品に資金が流入し株式などリスクの高い投資商品が値を上げる状態ことです。
逆にリスクオフは、国債などリスクの低い商品に資金が流入しリスクの低い商品が値を上げる状態のことです。この状態を見極めて、それに合った投資商品でリスク分散をしないと効果が薄れます。
例えば、リスクオフ状態でリスクの低い投資用品に対する投資額とリスクの高い投資商品の投資額を同じにしていれば損失が上回る可能性が大きくなります。マーケットがリスクオンかリスクオフかを見極める指数にはRORO指数やVIX指数などがあります。
2.相続税対策
相続税は2015年に基礎控除額が今までより40%も引き下げられ、相続人が1人の場合は資産の評価額が3,600万円を超えると原則課税されます。加えて、税率は、従来の最大50%から55%へ引き上げられました。
これにより従来にまして相続税対策が重要となりました。
相続税対策も、たくさんありますが大きく分けると「贈与税非課税制度を活用した生前贈与」「不動産を活用した資産評価額の圧縮」に分けられます。
相続税の対策は生前から計画的に行うことで最大限に節税ができます。
2-1 贈与税の非課税制度の活用
贈与税は110万円を超えた贈与から課税され、税率も最高55%です。同じ1,000万円でも相続税はかかりませんが、贈与税は231万円です。
5,000万円だと相続税は160万円(法定相続人が1人の場合、もし法定相続人が4人以上いれば相続税はかかりません)です。贈与税は2,049.5万円と金額が多くなるほどその差は広がっていきます。
しかし、贈与税には以下のような非課税制度があり、計画的に活用することで大きな節税ができます
2-1-1 基礎控除額110万円を活用した継続的な贈与
2-1-2 相続時精算課税制度の利用で2,500万円までの贈与が非課税
2-1-3 1,500万円までの教育資金の贈与が非課税
2-1-4 配偶者に居住用の不動産を贈与すると2,000万円までが非課税
2-1-5 1000万円までの結婚・子育て資金(結婚資金は300万円まで)の贈与が非課税
2-1-6 最大3,000万円までの住宅取得資金の贈与が非課税
2-1-7 一定の条件を満たした配偶者は1.6億円または法定相続分の額の大きい方の金額までの贈与が非課税
2-2 不動産を活用した資産評価額の圧縮
不動産を活用すると相続税を大幅に節税できるのは、現金や預貯金、あるいは株式などの有価証券が時価で評価されるのに対して、不動産は同じ金額でも評価額が低くなるからです。
事業用、賃貸用、小規模宅地の特例等により、最大で80%の減額が可能になります。
2018年以降の新築物件に関しては高層階の固定資産税と相続税を引き上げる方針が出るなどの動きもあり、以前ほどの過熱感は無くなりましたが、タワーマンションの上層階を相続対策のために買い求める富裕層が多かったのはこのためです。
3.本業の重視
資産運用はそれを本業としない限り、皆様の本業である医業に支障をきたしてしまっては本末転倒です。
本業をしっかりこなして、そこで稼いだ資金を資産運用するというスタンスを持たずに資産運用を行うと本業も資産運用も失敗するリスクが高くなります。
本業をしっかり行っていれば資産運用で少しの失敗をしても取り返せます。逆だとそうはいきません。
2回にわたって、減らさない資産運用の必要性、減らさない資産運用を行うときに大切なスタンス、および減らさない資産運用で行うべき分散投資の考え方、相続税対策、および本業の重要性について、今回はハウツーではなく考え方を中心に解説しました。
「減らさない資産運用」という視点が加わることによって、皆様の将来がより豊かなものとなれば幸いです。