ファイナンス

海外移住の“もしも”に備えましょう

高齢期の住まい 海外

2017.02.27

開業医が海外移住をするために必要な準備と知識

医師・歯科医師・開業医の皆さまの中には、現役を退いたあとに、海外に移住しようとお考えの方も多いのではないでしょうか。今回は、海外移住を考えるときの心構えや準備、注意すべきポイントなどについてご紹介します。

海外に永住するなら必ずすべきこと

「老後は旅行などで訪れて気に入っている場所で暮らしたい」、「友人や知人がすでに住んでいるところなら何かのときに頼りになるし安心だ」、「日本から子どもたちが飛行機で来やすい国がいい」、「医者仲間に評判を聞いておススメの場所にしよう」など、移り住む国と地域を選ぶとき、自分の意見だけでなく、他人の意見が参考になることがあります。

しかし、実際の海外移住の情報はネット上の情報を含めて玉石混合です。自分が暮らしてみたい国や地域に信頼できる友人・知人がいれば、その人からの情報が一番でしょう。しかし、そのような人がいない場合は何度も訪れ、とにかく自分の目で見て、肌で感じて確かめることをお勧めします。

“旅行”と“住む”では、大違いだからです。住むためには、治安、リタイアメントビザなどのビザ取得のための条件、物価や生活に必要なお金、気候・風土、習慣・風習などの文化、環境汚染、介護や医療事情、法律関係など、事前に情報収集をしておくことが重要になります。

そして、それらを総合的に判断して決めていくことが大切なのです。ただ、どうしても譲れない条件もあると思いますので、優先順位を決めてから絞り込んでいくという方法もあります。

海外移住をするからには、永住権を取りたいと思われる方もいるでしょう。しかし、取得条件や取得期間は、国によってまちまちです。永住権を取るメリットとデメリットも事前に理解した上で決断してください。

また、亡くなるまでその地で暮らすという決意で移住したとしても、現地の生活や習慣などにどうしても馴染むことができないと思った際には、無理せず日本に戻るという勇気は必要です。その選択肢をなくさないためにも、自宅や預貯金などの資産は保険として持っていたほうがいいでしょう。自宅の維持費がかかる場合は、賃貸に出す方法や子供たちに住んでもらう方法もあります。

海外移住は大きな決断になりますので、早めに情報収集し、無理のないスケジュールで進めていきましょう。

海外で一時期暮らすための準備

高齢期の住まい 海外

「人生の最期はやっぱり日本がいいけれど、現役引退後は、海外で少しの間暮らしてみたい」いう方も、多くいらっしゃるのではないでしょうか。

移住や永住とは違いますので、気軽なイメージがあるかもしれません。しかし、一時期でも暮らすのですから、日本との違いについて、しっかり理解しておくことは大切なことです。現地の治安や気候・風土、医療事情、法律関係、習慣・風習、物価などについて事前に調べておきましょう。また、言葉の習得にも事前に取り組んでおくことで、現地での生活に向けて、気持ちの余裕が出てくるはずです。

暮らす国と地域選びついては、旅行会社などで行っている下見ツアーや体験ツアーなどがありますので、参加してみるのは一考です。また、ロングステイに関心のある方向けに、医療情報や食生活、不動産、物価についての情報提供をしてくれるところもあります。聞くのと見るのでは大違いということがありますので、必ず現地を訪れてから決めたいものです。

予算が許せば、時期を変えて、数回、同じ国や地域を訪れてみると、より日本との違いや現地の文化などを感じることができます。外務省のホームページでは世界の医療事情や日本国大使館の連絡先などを知ることができますので、海外に行く前に必ず確認しておきましょう。

また、ロングステイについては、国によってビザの取り扱いが違っています。例えば、ロングステイで人気のあるマレーシアは、観光目的の場合、特別なビザは必要なく、1度の入国につき、90日まで滞在が許されています。さらに、マレーシアマイセカンドホームプログラムでビザを取得すると、最長10年間の滞在が可能になります。

そもそも、ロングステイは、1ヶ月、半年、1年以上など、特に期間が決まっているものではありませんので、数ヶ月海外で暮らして、日本に戻ってしばらく生活し、また海外に行くという暮らし方や、国から国へ数ヶ月ごとに移動して暮らすという選択肢もあります。その期間の長い短いに関係なく、現地での住まいを賃貸するのか、保有するのかも大きな問題です。どちらを選ぶかでかかるお金や法律上の手続きなどが違ってきますので、ゆっくり考えたいところです。

海外不動産所有権付きリゾート会員権の「タイムシェア」を利用される場合は、国民生活センターへの相談件数が増えていますので、特にトラブルの多い管理費や解約方法、予約の取りやすさについて入念な確認が必要です。賃貸にせよ保有にせよ海外で契約を行う場合は、日本の法律が適用にならない可能性が高い旨も念頭に入いて慎重に行いましょう。

元気なときこそ楽しめる海外での生活です。現役引退後に、海外で有意義なひとときを送ってみたいという場合は、有意義な時間を過ごすためにも事前準備に時間をさきましょう。

海外で暮らしていて亡くなった場合の注意点

高齢期の住まい(海外編)

海外に移住後や一定期間の滞在中に、事故や病気で亡くなることも想定できます。海外では日本とは手続きが異なるので、そう簡単に対処できるものでもありません。また、海外に行かれる方のみでは解決できない場合もありますので、万が一の際の対策は日本に残られるご家族等とも事前に共有しておきたいものです。

万が一の際、まず頼りになるのは、在外公館(日本大使館、または、総領事館)です。亡くなった方のご遺体を現地で荼毘に付すことやご遺体を日本に搬送することについての助言や情報提供をしてくれます。海外に行くときには、必ず、在外公館の連絡先を控えておきましょう。

海外にいる家族が亡くなったことを教えてくれるのは、在外公館若しくは日本の外務省で、亡くなった現地での手続きは、その国の法律に則して行われます。ご遺族が現地に行ってもろもろの手続きをすることが一般的で、手続きが完了した後に、日本への搬送という流れになります。

ご遺体と一緒に日本に帰国したいという思いがあっても、法定伝染病の疑いがあるときなどは、それができないことがあります。また、ご遺体を日本に搬送する場合には、エンバーミング処理(ご遺体が腐敗しないよう処理をするとともに感染症の防止や傷を隠す作業なども行うもの)をする必要があるのですが、国によってはその処理ができないことがあり、ご遺体の搬送については、国によって事情の違いがあります。

費用面から見ると、現地で火葬して遺骨を持ち帰るよりも、ご遺体を日本に搬送する方が高くなります。残された家族に金銭的負担をかけなくて済むよう、現地でのケガや病気、死亡などの費用対策として海外旅行保険への加入を検討しておきましょう。また、遺骨を持ち帰るとき、またはご遺体を搬送するときは、在外公館に申請をして、遺骨証明書や遺体証明書をもらう必要があります。

亡くなった人の死亡届は、現地の在外公館に提出する方法と日本に帰国してから役所に出す方法があります。現地の在外公館に死亡届けを出した場合は、日本の戸籍に死亡したことが記載されるまで、日本での火葬や埋葬をすることができません。

死亡届を出してから日本の戸籍に記載されるまで、1ヶ月以上かかることがありますので注意が必要です。

日本で早く火葬や埋葬をしたいときは、日本に帰国してから死亡届を出す方がいいでしょう。その場合はあらかじめ、亡くなった人の本籍地がある役所に連絡をして相談をしておきます。そして、ご遺体と一緒に帰国するときは、葬儀社に空港まで迎えに来てもらえるように頼んでおきましょう。日本での葬儀をスムーズに行うためにも葬儀社とのやりとりはしっかり行いたいところです。

海外へ行く際は移住でも一時期だけ暮らすだけでも、日本国内と同じようにいかないことが多くあります。海外に出かける前には、もしものときの手続の知識もおおまかに頭に入れ、その手続きをされる可能性のある方とも共有するなど万全の準備を行いましょう。

このコラムが、海外生活をより心から楽しめ、より実りあるものにする一助となれば幸いです。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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