ゆとりある老後のための事前準備
2017.05.15
いくらもらえる?「医師年金」 開業医・勤務医でどう違うのか
今回は、公的年金以外の老後生活資金の確保手段となる「医師年金」について解説します。
■ 知っている人も知らない人も 医師年金をおさらい
医師年金とは、満64歳6ヵ月未満の日本医師会に加入する医師の方が加入できるものです。保険料には、全員加入する必要のある「基本年金保険料」と、追加で任意加入可能な「加算年金保険料」があります。
基本年金保険料は、月払いのケースで月額1万2,000円、年払いのケースで月額13万8,000円となります。加算年金保険料は、月払いで6,000円単位、随時払いでは10万円単位で支払っていくことも可能となっています。加算年金保険料は、上限がないのが特徴です。
こうした掛金を支払い、一般的には満65歳から養老年金として受け取ることになりますが、希望により満75歳まで受給開始を延長することも可能です。また、医師年金をお子さまの教育資金として利用することもできるほか、疾病により診療に従事できない場合には傷病年金となり、加入者本人が亡くなった場合には遺族年金を遺族が受け取ることもできます。
■ 医師年金のシミュレーションをしてみよう
仮に2017年4月末時点で35歳(1982年4月1日生まれとする)の医師のAさんを例に、シミュレーションをしてみましょう。
基本保険料:月額1万2,000円
受取コース:保証期間15年付きの終身年金
加算保険料月額3万円で継続支払いした場合(ケース①)です。
この場合、65歳から受け取れる金額は見込みですが、
基本年金:月額2万1,800円
加算年金:月額5万4,700円
合計:月額7万6,500円
この額を亡くなるまで受け取ることができます。
もしAさんが、加算保険料を月額12万円とした場合(ケース②)であれば、
基本年金:月額2万1,800円
加算年金:月額21万8,900円
合計:月額24万700円
平成28年度の生命保険文化センター「生活保障に関する調査」によると、老後のゆとりある生活資金の平均は34.9万円となっています。あくまでも一般の平均値ですので、高所得者といわれる医師の方からすると全然足りないと思われるかもしれませんが、国民年金や厚生年金とは別途この金額が支給されることになれば、最低限の生活資金の確保につなげられるでしょう。
■ 勤務医と開業医の考え方の違い
医師年金には、勤務医と開業医で違いがあるのでしょうか。
実はいずれにおいても同じ掛金であれば、受け取ることができる年金額は同じになります。そのため、現状の年収からどれくらい支払えるのかを考えることが重要です。また、厚生年金加入者の場合には、年収により受け取ることができる年金額は異なります。
先の例に出したAさんをもとにおおよそどの程度なのかを説明します。
Aさんは民間病院に勤務する医師で、Aさんの妻は専業主婦(簡素化のために同じ生年月日とする)とします。簡素化のために妻は最初から国民年金のみの加入とします。また、Aさんは平均して月給100万円、ボーナス込みで年収が1,600万円、65歳まで勤務すると仮定します。あくまでも受給見込み年額となりますが、Aさんが65歳から453万円、妻が78万円ほどです。このケースの場合には、合計で531万円ほどとなり、ここから税金が差し引かれることになります。
もしこのようなケースの場合には、一般的な生活レベルであれば十分でしょう。しかし、現役時と同様に年収1,600万円前後の生活がしたいとなると、まったく足りないことになります。そこで医師年金をはじめとする老後の私的年金を準備したり、勤務医の方であれば退職金を活用したり、退職時までに計画的に貯蓄したりするなどの対策が必要となります。
■ 定年までの年収と公的年金、一般的な老後資金には足りるのか
Aさんのようなケースでは、収入が高いのでその分厚生年金が多く受け取れるため、一般的な老後資金であれば確保することが可能です。
ただし個人開業医などの場合には、国民年金のみの加入という方もいることでしょう。この場合、年間で78万円前後(夫婦で156万円前後)の受給のみとなりますので、まったく老後資金は足りないことになります。そのため、医師年金などの代替手段で老後資金を確保していく必要があります。
仮に、年間追加で420万円ほどの年金が欲しいと考えたとします。上記同様の1982年4月1日生まれのケースでは、医師年金で基本保険料と加算保険料の合計で、月々19万2,000円加入する必要があります。
このように、状況に応じて加入すべき掛金は異なってきます。自分に合わせて事前に計画を立て、老後に備えてはいかがでしょうか。