ファイナンス

ベーシックインカム理論を実用化させるには?

ベーシックインカム

2017.06.19

ベーシックインカムVol.3

2016年6月7日。日本においてもベーシックインカムの試験導入プロジェクトが始動したことをご存知でしょうか?

そのプロジェクトが行われているのは岩手県遠野市。遠野市は、地域と起業家のビジネスマッチングなどを手掛けるNext Commonsと共同で「Next Commons Lab」を設立し、「遠野市に住民票を移す」「地元の資源を生かして起業する」という条件を満たした起業家に対して、3年間、月額約14万円のベーシックインカムを支給するプロジェクトを開始したのです。

このプロジェクトにおいては、起業家に対する条件付の支援金という位置付けのため、働かなくても最低限の生活が保障される純粋なベーシックインカム制度とは異なる制度のため、その呼称に対して賛否両論あるのは事実です。しかし、事業が軌道に乗るまでの最低限の生活保障がされるため、起業という新しい挑戦に踏み切りやすくなるという意味では、ベーシックインカムの狙いの1つである職業選択の幅を広げるという効果を有した施策であると言えるのではないでしょうか。

財源が限られている中で、無条件に給付を行うことは、前回も取り上げたように、近い将来実現する可能性は非常に低いものですが、この遠野市の取り組みのように、目的とその目的を達成させるための条件を兼ね備えた人に対して最低限の生活保障を行うことは非常に可能性のある取り組みであるように思えます。

また、遠野市のようなベーシックインカム理論を個人若しくは家族単位で取り入れることも可能です。

例えば、「老後資金の準備」と聞くと、「貯蓄」という手段で取り組み、老後はそれを切り崩す形で生活をするイメージを持たれている方が多いでしょう。この考え方に、今回3回にわたって取り上げた「ベーシックインカム」のようなお仕事以外の収入を準備するという視点を加えると「老後の生活」というイメージが変わってくるはずです。

残念ながら、日本においては、投資や金融といったお金に関することを子供の頃から学ぶ機会はほとんどなく、上記の「老後資金の準備」1つ取っても、「切り崩す」「細々と」というイメージが断ち切れず、ただただ不安を募らせている方も多いようです。もし、そこにベーシックインカムがあれば、その老後のイメージはどう変わるのか一度想像してみてください。現役時代の生活レベルを維持するに足るお仕事以外からの収入が保障されていれば、あれもしたいこれもしたいという新たな夢を描ける方もたくさん出てくるのではないでしょうか。

ご自身、ご家族、そして身の回りで助けを必要とされている地域の方々のためと視野が広がっていったことで、ある方は、資産管理会社を立ち上げ、その会社を通じてご子息の支援できる仕組みを作られ、またある方は、地域で不足する保育施設を立ち上げ、シングルマザー支援に尽力したいという目標が見みつかり、その目標に向けて邁進されているというお話も耳にします。

国として導入できる可能性は今のところ低いベーシックインカムですか、この理論自体は広めていく価値のある考え方なのではないでしょうか。このコラムがきっかけで、ご自身独自のベーシックインカムについて考えるきっかけとなれば幸いです。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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