ファイナンス

医療の発展はブロックチェーンによっても可能に

2018.11.19

ブロックチェーン×医療の可能性 来たる革命への予感

医療の発展は、新しい薬の開発や新しい手術手技の採用のみでもたらされるわけではなく、医療とは直接は関係しない、”テクノロジーの進化”によって可能になることもあります。
今回はその中でも「ブロックチェーンと医療の可能性」について、複数の事例を交えながらご紹介したいと思います。

医療に役立てられるブロックチェーンの特徴とは?

ブロックチェーンは医療の発展に役立つもと考えられていますが、それはどうしてでしょうか?まずはそもそもブロックチェーンがどういうものかをおさらいした上で、その手がかりを探っていきましょう。

ブロックチェーン(Block Chain)は、「分散型台帳技術」、「分散型ネットワーク」と呼ばれる技術のことを指します。最近も大きな話題を呼んでいる仮想通貨というものがありますが、ブロックチェーンは仮想通貨の代表格であるビットコイン(bitcoin)の原型となった技術を用いて開発されています。

ブロックチェーンは”分散型”という言葉が示すように、複数のネットワーク(ノードと呼ばれるブロック)でデータを紐付けて保存することができ、複数人が閲覧できる台帳のことを意味します。具体的には「佐藤さんから鈴木さんに仮想通貨を送りました」というデータを複数のブロックで繋げていき、皆で共有して記録しておこうというものになるでしょう。

こうしたブロックのうちのひとつに不具合が生じたとしても、他のブロックが整合性を保とうとするため、データを改竄されたりデータを喪失してしまったりといった問題が理論上は起こらないようになっています。

もちろん、ブロックチェーンで取引した履歴などのデータは非公開にすることもできますし、取引で扱うものは仮想通貨に限りません。膨大な様々なデータを円滑にやり取りできるのがブロックチェーンの評価されている特徴です。

そして、ブロックチェーンは膨大なデータを円滑に管理・運用することにおいては、既存のシステムよりもコストがかからないという特徴も持ちます。こうした特徴が今回ご紹介する医療をはじめ、様々な分野への導入が検討されている理由になります。

医療カルテの管理・運用をブロックチェーンで容易に

前述のブロックチェーンを最も活かしやすいのが「医療用カルテの共有」と言われています。
これは現在各医療機関が電子・紙で保存しているカルテをブロックチェーン上で保存することにより、複数の医療機関で横断的に患者の情報を閲覧できるようにするものです。

これが可能になれば、患者はかかりつけの病院を別の病院へ変更した際にもスムーズな引き継ぎができるようになるでしょう。
また、急患として利用したことのない病院へ搬送された際にも、医師らにこれまでの病歴・薬歴を遡ってもらうことができ、迅速な治療へ役立てることができます。

もっとも、こうした利用の仕方を始めるには患者からの承認と、適切にデータを管理できるプラットフォームの確立が必要です。

保険金の支払いを円滑に 東京海上日動×エストニア

すでにブロックチェーンが医療に活かされている事例でいえば、日本企業である東京海上日動と北欧のエストニアで使われる技術とが連携した事例があります。
エストニアには国民番号制度の基盤として『avenue-cross』というものが存在します。東京海上日動はこの番号制度にブロックチェーンの技術を組み合わせることにより、保険金請求における手続きと支払いを簡略化・迅速化するための実証実験を2017年1月~12月まで行っていました。

この実験は福岡の医療機関らと連携して行われ、患者と保険会社と医療機関らの間にブロックチェーンが入り医療情報を照会するための情報を扱うものです。
この実験の結果、東京海上日動は『保険金請求から保険金支払いうまでの期間を1カ月程度短縮できる』との可能性が得られたことを発表しています。今後もこの実証実験に関する研究を進めていく旨を示唆しています。

東京海上日動 福岡エリアにおける医療情報連携に関する実証実験の完了
https://goo.gl/y6M3DW

医療のための仮想通貨 「NAM Chain」とは?

医療サービスに利用できる仮想通貨としては、「NAM Chain(NAM TOKEN)」そしてこの仮想通貨を統括する「NAMプロジェクト」というものが注目を集めています。このプロジェクトではすでにご紹介してきた医療カルテの共有に加え、AIを使った検査・治療サービスを提供する「NAM AIクリニック」というものまであります。
NAM Chainは医療費の決済などに使用可能とのことです。

まとめ

ブロックチェーンが医療で最も活かされるのは、医療のなかでも”医療事務”と呼ばれる領域でしょう。これは患者側にとっても医療機関側にとってもメリットがあるもので、診療や手続きにおける効率化を支えるものとなります。ブロックチェーンは導入コストも安く抑えられるため、人件費の削減ひいては医療費の削減にもつながる可能性があります。

ブロックチェーンの医療分野への活用を試みるプロジェクト・研究はこれからも複数生まれていくことでしょう。私達はその中から本当に有用なものを見極める必要があります。生きていく上で考えることを欠かせない医療の話題ですので、ぜひ様々なプロジェクトに目を向けていただければと思います。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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