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なぜ不動産を活用すると相続対策になると言われるのか?

2018.03.05

【相続税】資産圧縮と優遇措置が魅力の不動産を使った相続税対策 Vol.1

相続税法が改正され、最高税率が55%に上がり、5,000万円だった基礎控除は3,000万円に下がりました。こんな話題を聞くたび気にはなるものの、具体的な相続対策は手付かずのまま、という方は少なくありません。相続税対策の基本を確認し、不動産を活用した節税方法について考えてみましょう。

なぜ不動産を利用すると相続税対策になるのか?

相続税対策の基本は、「各種優遇措置を利用すること」と「相続税評価額を圧縮すること」です。不動産には、この基本に当てはまる方法が数多くあり、相続対策の王道とも呼ばれています。

《不動産の評価額は現金より低くなる》
不動産は、現金より評価額が低く相続税節税に有効です。相続税上の土地価格は、国税庁が毎年7月に公表している路線価を用います。路線価は実勢価格の約80%で、現金1億円で土地を買えば、評価額は8,000万円程度になり、実際に財産が減った(2000万円損をした)わけではありませんが、相続税の計算上は、相続税上の財産額が減ったのと同じ効果があるのです。

建物の相続時評価額は、毎年春に送られてくる固定資産税評価額で確認できます。おおよその額は、新築時で実際の価格の70%ほどで、築年数の経過とともに評価額が下がり、最終的には20%ほどになります。

《規格外の土地は評価額が低くなる》
土地は、形によって評価額が異なり、使いにくそうな土地は評価額が下がります。たとえば、形状がいびつ、道路に少ししか面していない、といった場合、定められている補正率で土地評価額が減額されます。

節税のため、敷地を分割し故意に使いにくい土地を作成し全体の評価額を下げる、といった対策が行われることもありますが、土地形状による評価額は、税務署により判断が分かれ、主張が認められるとは限りません。そのため、専門家と相談するなど十分な調査と検討が必要です。

《広大地の評価減特例はディスカウント率が低下》
広すぎる土地も、評価額が低く算定されます。500㎡の土地の場合、以前は57.5%の額に評価されていました。1億円の土地が、広すぎるという理由で5,750万円の評価額だったのです。

ところが、国税庁の通達により平成30年1月1日以降は、80%の評価額とされることになりました。同じ土地の評価額が5,750万円から8,000万円となり、税額が増えてしまったのです。

この例に限らず、税制は年々変化します。常に最新の情報を確認し、対策を考えましょう。

税額が最大8割引になる小規模宅地等の減額特例

不動産を利用した節税方法として、特に大きな効果があるのが、「小規模宅地等の減額特例」です。自宅の土地の場合、条件を満たせば、330㎡まで相続評価が80%割り引かれます。とても割引率が高く、地価の高い土地であるほど効果的な制度です。

《配偶者が自宅の土地を相続する場合》
配偶者(夫が亡くなった場合妻、妻が亡くなった場合夫)が、相続する場合、無条件で特例の適用が可能です。特例を使えば、1億円の土地が、80%引きの2,000万円で評価されることになります。

《同居の親族が自宅の土地を相続する場合》
亡くなった方と同居していた親族が、自宅用の土地を相続する場合も、特例の適用を受けることができます。

同居については、税務署は実体をみて判断するので、実際に一緒に生活をしていることが必要です。住民票を同一住所に移しただけでは、同居とは認められません。他の条件としては、相続税の申告期限までその土地を所有し、住み続けることが必要です。

《2世帯住宅は同一登記なら同居と認められる》
親子で2世帯住宅に居住している場合も、同居に含まれます。以前は、建物内部で行き来できる構造でなければ同居と認められませんでした。しかし現在は、玄関が2つある完全分離型でも問題ありません。

ただし、2世帯住宅で建物を1階父親名義、2階子ども名義、といったふうに別々に登記していると、2つの建物とみなされてしまいます。このような登記を区分登記といい、同居とは認められなくなるので注意が必要です。

親と子で登記する場合、それぞれ2分の1ずつといった共有名義ならば、同居として扱われ特例の適用を受けることができます。

《持ち家がない別居親族が自宅の土地を相続する場合》
配偶者も同居親族もいない場合に限り、別居している親族が特例の適用を受けることができます。条件としては、特例の適用を受ける人がマイホームを持っていないことと、相続税の申告期限までその土地を所有し続けることが必要です。

次回は、事業用、賃貸用の不動産の場合はどのような取り扱いとなるのか?活用できる優遇措置や抑えておくべきポイントについてお伝えします。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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