マネジメント

院長のための産休・育休の基礎知識と対応策 vol.1

2018.11.28

産休・育休を取得する権利の再確認~制度の概要を知る~

医院には他業種と比較して女性スタッフが多いため、産休・育休について頭を悩ませている院長先生も多いのではないでしょうか。特に、最近は妊娠・出産したあとも働き続けたいと希望する女性が増えています。また、人材難の昨今はスタッフの出産後、落ち着いたら職場に復帰してほしいと考えている院長先生も多いことと思います。しかし、産休・育休を取得したいとスタッフから伝えられて、法令上最低限取得させなければならない休業はあるのか、給与はどうしたらいいのか、代わりのスタッフをどう手配しようかと悩まれている院長先生も多いと思われます。この記事では2回に分けて、法令上義務付けられている産休・育休の制度と代わりのスタッフの手配方法について解説します。

1 産休期間中のスタッフの権利

産休には、出産予定日の6週間前(双子、またはそれ以上の子を妊娠している場合には14週間前)から出産まで休業することができる「産前休業」と、出産の翌日から8週間を経過する日まで休業することができる「産後休業」の2種類があります。どちらも、休業期間中は給与を支払う必要がありませんが、支払ってもかまいません。

契約社員やアルバイトなどの雇用形態には関係なく、どなたであっても産休を取得する権利がありますが、出産する女性に限定されています。女性の配偶者(夫)は対象となりません。

産前休業と産後休業の違い

産後休業はスタッフ本人や院長先生の意向にかかわらず、法令により強制的に取得することを義務付けられています。一方で産前休業は働いているスタッフから請求された場合に与えなければならないとされているため、本人が希望しなければ与えなくても構いません。

休業期間中は給与を支払う義務がないことから、体調が良いため出産ギリギリまで働きたいと申し出るスタッフも少なくありませんが、慎重に対応したほうが良いでしょう。

まず、法令では「妊娠中の女性が請求した場合」に限定されていますが、他の軽易な業務に就かせなければならないとされているからです。

ただし、軽易な業務がない場合には、軽易な業務を無理に作り出す義務まではなく、軽易な業務がないために休業せざるを得なくなったとしても問題はありません。

また、そのような請求がなかったとしても、医院は妊娠中であることを考慮して安全に労働させる義務を負っています。医院スタッフの業務は通常の事務職と比較して妊婦にとってリスクが高いものが多く、医院の責任者は医師ですから専門家として通常以上の注意義務が生じるためです。

万一の事故のリスクを考え、事情を説明して休業期間中を有給(通常の給与より減額することも可能)とする代わりに休業してもらうといった選択肢も考慮しておきましょう。

社会保険料の手続き

産休期間中は有給・無給を問わず社会保険料が免除されます。医院は産休期間中にその手続を行わなければいけません。なお、社会保険料が免除されたとしても年金の計算上は納付したものと扱われますので、スタッフには安心するよう伝えてあげましょう。

この社会保険料の免除手続きをうっかり失念してしまうことが多いのですが、期間中に手続きを行わないと受理されないこともありますので注意しましょう。

産休期間中は解雇できない

産休期間中、および産休が終了してから30日間は法令により解雇することが禁止されています。この禁止は大変拘束力が強く、たとえ就業規則に明白に違反した場合でも解雇することはできません。

この期間中に悪意で解雇をしたり退職を強要したりするのは論外ですが、女性の体調を気遣って「一度退職して、落ち着いたら再度復職したらどうか?」というような提案をする際にも退職勧奨と受け取られることがないよう、細心の注意を払いましょう。

2 育休期間中のスタッフの権利

育児休業は原則として子が1歳になるまで、最大1年間取得することが可能です。育休に関しては例外が多く理解しにくいため、その都度厚生労働省のウェブサイトにて制度を確認した方がいいでしょう。

厚生労働省 育児・介護休業法について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html

また、以下のパンフレットでは産休・育休制度についてわかりやすく解説されています。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/31.pdf

育児休業はスタッフの申請があれば必ず取得させなければいけませんが、申請がなければ必ずしも取得させる必要はありません。

また、産休と同じく休業期間中は給与を支払う必要がありませんが、支払っても構いません。しかし産休と異なり、育休を有給とすることはあまりお勧めできません。

多くの場合、育休期間中は後述する「育児休業給付金」が支払われます。しかし、給与を支払ってしまうと受け取る給付金が減額されてしまいますので、給与を支払ってもスタッフの手取りがあまり増えず、ロスが大きいからです。

<育児休業給付金>

一定の条件を満たした従業員が育児休業を取得する場合には、最大で育休取得前の給与の8割にあたる金額の給付金が雇用保険から支払われます。手続きは医院がやってもスタッフがやっても良いとされていますが、医院が用意しなければならない書類が多いため、申請まで医院が一貫して行った方が良いでしょう。

まとめ

今回は、意外に知られていない産休・育休の概要と育児休業給付金についてお知らせしました。次回はスタッフが産休・育休を取得している期間中、人手をカバーする方法についてお知らせします。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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