MANAGEMENT

長時間労働をやめて生産性を高めていく方法

2018.10.24

小室淑恵に学ぶ「真のワーク・ライフ・バランス」とは?

日本で「ワーク・ライフ・バランス」という言葉が普及し始めたのは2007年頃、行政の政策にワーク・ライフ・バランスを盛り込んだことがきっかけと言われています。今では一般名詞となった「ワーク・ライフ・バランス」という単語ですが、この言葉に誰よりも早く気がつき、社名として掲げ、今もなお走り続けている企業をご存じでしょうか。
株式会社ワーク・ライフバランスは、2006年の創業以来、「残業ゼロで売り上げアップ」をテーマとして、毎年増収増益を続けている会社です。
事業内容は、「労働環境・働き方改革」のたった一つだけ。それでも毎年増収している同社の売り上げアップの秘策は、「長時間労働をやめたこと」なのだそうです。
今回は代表の小室淑恵氏が提唱する、長時間労働をやめて仕事の効率を高め、「ワーク・ライフ・バランス」をうまく取り入れる手法をご紹介します。

1.「ワーク・ライフ・バランス」という言葉の誤解

小室氏によれば、「ワーク・ライフ・バランス」という言葉は、日本では誤解されがちな言葉であるといいます。本来のこの言葉には、「仕事にやりがいや充実感、責任感を持って働くとともに、家庭や生活、人生の各ステージで多様な生き方が選択・実現できる」という意味合いがあります。しかし日本では、「仕事よりもプライベートを重視し、充実させる」「仕事と生活のちょうど良いバランス・配分」という誤った解釈が生み出されているのが現状です。

そのような誤った認識が生まれた背景には、日本にはびこる「長時間労働」があると言っても過言ではありません。日本には一貫して「勤勉で真面目、長時間労働を厭わない」国民性のイメージがありますが、この国民性を形成したのは、1970年頃までの日本を支えた高度成長期の成功体験です。高度成長期には、国民皆に生産力があり、長時間労働してもコストを削減できた時代でした。時代の移り変わりとともに共働き家庭が増え、人件費が高騰し、男女ともに仕事に対する価値観が変わる一方、働き方だけは過去の成功モデルから、「長時間労働が当たり前」という風潮が残ってしまったと小室氏は言います。「長時間労働しても給与で報われない」というズレが生じ、今のワーク・ライフ・バランスという言葉の誤解を生み出したのです。

2.働き方改革とは、時代の変化に合わせて働き方を変えていくこと

現在、日本にはびこる長時間労働の原因は、「中身のない会議」「生産性のない書類仕事」「雰囲気で残業」であることが多くの割合を占めているといいます。

小室氏は残業について、著書やインタビューの中で「残業を減らすと売り上げが上がる!」と伝えています。残業を減らすことで、残業にかかる固定費を正規雇用や営業費に回すことができ、企業としての利益が上がるのです。
しかし、慣習的だった残業をいきなり明日からなくすのは至難の技です。ここからは残業をなくすための手法を、いくつかご紹介していきましょう。

・書類を無くして全て電子化(PDF化)する

人間は目の前に書類があると、その書類に対して無駄に意識を送りがちです。紙の資料をなくしペーパーレス化することで、視覚的にも整然とし、仕事への意識を変えていくことができます。

・雰囲気での残業をやめる

先生方の中にも、「今日はスタッフのみんなが残っているから、自分だけ先に帰りにくいな」と思われる方が多いのではないでしょうか。しかし雰囲気で残業しても、疲労感しか残りません。帰れる時は帰る姿勢を、上司自らの背中を見せるべきです。

・コミュニケーションを重視する

仮に先生方が「短時間勤務の女性は時間が限られているから、Aさんには無理は言えない」と思っているとしましょう。しかしAさんは、「私はもっと出来るのに、遠慮されている」と思っていれば、仕事全体のキャパシティに対して余力が生じていることになります。また、Aさんの仕事をするためにBさんが残業することで、無駄な残業費が発生しているかもしれません。このような場合には、コミュニケーションを重視することで、全体の仕事の割合とスキルを適切に測ることができます。

このように、身近にある小さなことを変えていくことが、残業を無くしていくことに繋がっていくのです。

3.真の「ワーク・ライフ・バランス」とは?

今、世の中で仕事の時間を削ってでも休みを必要とする方は、どのような方が多いのでしょうか?実は、「親を介護する男性管理職」が大きな割合を占め、急増し続けています。その背景には、2017年に団塊世代が一斉に70代に突入し、介護を必要とする高齢者の存在感が一気に増したことがあります。

小室氏によれば、「ワーク・ライフ・バランスとは、女性が育児から復帰して社会進出するために、女性の権利を声高らかに謳っているというものではなく、男性の労働時間を減らすことでもある」のだそうです。

確かに、これまで時間的な制約を持つのは、女性特有のネガティブ要素として捉えられがちでした。しかし国民人口の比率が変わってきている今、男性にとっても身近な介護のための休職・離職というテーマとして考えていく必要があります。

「親の介護をする暇がない」「育児する時間はおろか、子供が起きている時間に帰ることができない」と嘆きながら働く男性や、「頼れる人がおらず延長保育をお願いするしかない」と困っているワーキングマザーなど、働く人の数だけ価値観が存在します。働くすべての人の多様な価値観を認め、それぞれの個性を大事にして働き方を整えていくことが、残業を減らすこと、ひいては真のワーク・ライフ・バランスの実現へと繋がっていくのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。「ワーク・ライフ・バランス」とは、その言葉の向こう側にある、多様な価値観を認めることでもあります。時間のある女性や時短の女性が成果を出せるようにする一方で、介護が必要な男性が気兼ねなく休めるよう、また育児のために仕事を辞めてしまう女性が少なくなるように、短時間で効率的に仕事を進めていくきっかけ作りとなれば幸いです。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部