マネジメント

提供する商品やサービスを知り尽くすことが顧客満足の第一歩となる

2018.09.12

デル社の創業者に学ぶ、顧客価値を重視した経営戦略

「顧客価値」の重視ということが経営戦略論でよく言われています。
顧客が本当に求めるものは何か、どんな商品・サービスや価格を求めているのか、ということを明確にして販売戦略を練ることが大切だという考え方です。しかし、どのように顧客価値を見いだしていけばよいのか具体的な事例が知りたいという方も多いことでしょう。
今回は、コンピューターを製造販売しているデル社の創業者マイケル・デルについて紹介します。顧客価値を重視するための経営を実践するために重要な点を、彼から学んでいきましょう。

デル社のダイレクト戦略とは?

デル社の経営戦略は、ダイレクト戦略と呼ばれています。マイケル・デルが始めたのはパソコンを受注生産で、この考え方は当時の業界としては大変画期的なものでした。パソコンという商品が世の中で販売されるようになり始めていた当時、パソコンは基本的には卸売業者を仲介して販売されていたためです。

デル社も、単にコンピューターを製造販売する会社として始まったのですが、この戦略により、マイケル・デルは起業家として成功し、更に業界の考え方そのものを変えてしまったのです。

この戦略の利点の一つは、中間業者を仲介しないことでパソコン自体の価格が安くなったことです。パソコンは大変高価な買い物ですので、このことは消費者にとっては大変大きなメリットであった上に、余計な在庫を持つ必要がなくなり、販売側にとっても効率的な経営が可能となったのです

「効率的な経営」よりも重要なこと

パソコンは精密機械ですので、消費者はパソコンの利用に不安を抱えています。従来の中間業者を介在させた販売方法では、パソコンの知識を十分に持たない仲介業者が顧客対応を行うことが多かったため、パソコンの利用者の不安が十分に取り除かれることはありませんでした。

デルの受注販売では、消費者は、インターネットや電話を介して直接販売者からパソコンを購入することで、自身が望むパソコンを手に入れ、困った際には購入者の情報を把握していて且つパソコンに詳しい担当者と直接対話できるようにしたり、ターゲットを法人に絞ることですぐに担当者に電話が繋がる状態にしたりすることで、顧客満足度を向上させていったのです。

ダイレクト戦略が生まれた経緯

マイケル・デルがどのようにしてこのようなダイレクト戦略を構築するに至ったのか、そのプロセスを見てみましょう。

マイケル・デルは子供のころから好奇心が強く、10代の頃からパソコンを分解したり組み立てたりして、パソコンに大変詳しくなり、大学時代にはその知識を活かして、コンピューターの部品を安く買って自分でパソコンを組み立てて販売するということまで行っていたといいます。

こうしてデルは19歳という若さでデルコンピューター社を創設し、すでに24歳にはナスダックで株式公開を達成し、フォーブス500というアメリカの上位企業リストにもすぐにランクインできたのです。

つまり、マイケル・デル自身がコンピューターの仕組みをよく知り尽くすことで受注生産が可能となり、その過程でカスタマーサポートも充実し、なおかつ顧客の要望をしっかりと聞くことができたという好循環が、デル社の成功の秘訣だと言えます。

医療の現場でもダイレクト戦略を活かす

医療の現場でも同じようなことが言えます。
医療機器や技術は日々進歩しており、患者にとっても選べる選択肢が増えていますが、選択肢が増えることで、様々な医療方法が選べるということ自体はメリットですが、医療の専門知識のない患者にとっては、自分に合う治療法は何なのかといった選択の不安が多くなってしまうことも考えられます。そんな時、例えば、新しい技術を用いた手術を受ける際に、その治療法を熟知し、執刀する医師が直接説明し、些細な不安や疑問にも直接こたえてもらえるといったように、その技術や医療機器を知り尽くした人と直接話ができるようにすることで、治療を受ける側の大きな安心を得ることができます。

このように、サービスや商品を熟知した人とユーザーの距離が近くすることで、本当に顧客価値を重視したサービスが実現できるようになり、経営にも好循環が生まれるのです。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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