マネジメント

競争を優位に進めるために適切な戦略を選択する

2018.08.01

マイケル・ポーターに学ぶ競争戦略

アメリカの経営学者「マイケル・ポーター」は、ファイブフォース分析やバリュー・チェーン分析など、現在の経営戦略の主要な考え方を提唱し、著書である「競争の戦略」は、経営戦略の古典として今でも読み継がれています。
ポーターの基本的な競争戦略には、「差別化戦略」「集中戦略」「コスト・リーダーシップ戦略」という3つの戦略があります。この記事では、医院経営に活かすことができる「差別化戦略」と「集中戦略」について紹介していきます。

差別化戦略

「差別化戦略」は、他社の真似できない特異性を発揮して競争を優位に展開する事業戦略です。ポーターは、差別化戦略は業界によって異なり、様々な方法があることを示しました。
差別化の方法として最初に挙げられるのが、「製品やサービスの差別化」です。自社でしか開発できない製品やサービスを市場に投入することで、競争を優位に進めることができます。コンピューター会社のアップルは、iMac、iPhone、iPadなど洗練されたデザインと機能で他社製品と差別化を図り成功しました。医院経営でいえば、他院のやっていない治療法を提供するなどしてサービスの差別化を図ることができます。
他の差別化の方法として、「ブランドイメージの差別化」があります。衣料品の生産・販売を行うユニクロは、CMを通して「ユニクロの服はかっこいい」というブランドイメージを築きました。また、店舗を清潔かつきれいに保つことで、顧客にいいブランドイメージを与えています。医院経営でいえば、ウェブサイトで病院の特徴を伝えたり、スタッフの対応を良くしたりといったことで、他院と差別化した病院のイメージを築くことができます。
また、「テクノロジーの差別化」を実施することでも、競争を優位に進めることができます。例えば、他院の持っていない先端の医療機器を導入すれば、他院では治療できない患者に来てもらうことができるでしょう。

集中戦略

「集中戦略」は、特定のターゲットにおいて自社の強みを活かして競争優位を築いていく事業戦略です。経営資源を集中する分野には、「製品」「顧客」「地域」といった領域があります。
ある特定の「製品」に特化する集中戦略では、特定の製品またはサービスに自社の経営資源を集中させます。自動車メーカーのスズキは、軽自動車の生産・販売に集中することで収益を上げてきました。病院経営においては、ある特定の疾患や治療法に経営資源を集中することで競争優位を築くことができます。
ある特定の「顧客」に特化する集中戦略では、他社がターゲットとしていない顧客層に集中して製品やサービスを投入します。衣料品店のしまむらは、20~50代の主婦層をターゲットにして収益を上げています。病院経営においては、特定の患者層に経営資源を集中するといったことが考えられます。
ある特定の「地域」に特化する集中戦略では、事業を行う地域を狭いエリアに限定することで競争を優位に進めます。企業はより大きな市場で事業を展開したいと考えますが、特定の地域に特化することで、その地域において他社に負けない競争力を付けることができます。病院経営においては、病院が少ない地域を選ぶ、高齢者が多く住む地域に特化するといった戦略が考えられます。

競争戦略のメリット・デメリット

「差別化戦略」にも「集中戦略」にも、それぞれメリット・デメリットがあります。
例えば、テクノロジーの差別化を実施するために、先端医療機器を導入するとします。他院では治療できない患者が来てくれるかもしれませんが、高額な購入資金により経営状況が圧迫されるかもしれません。また、ある特定の疾患に経営資源を集中した結果、その疾患の患者数は増えるかもしれませんが、他の疾患の患者数は減ってしまうかもしれません。
このように、戦略にはメリットとデメリットがあるので、病院の置かれた状況に応じて適切な戦略を選択することが大切です。

まとめ

以上、ポーターの競争戦略について解説してきました。医院経営はビジネスと違って営利目的ではないので、ビジネスの戦略を適用するのは難しいかもしれません。しかし、先端技術を取り入れて差別化したり、特定の地域に集中したりと、医院経営においても適用できる場面はあります。
ポーターの競争戦略は発表されてから40年近くが経ち、時代背景もずいぶん異なりますが、その本質的な部分は医院経営にも活かすことができるのではないでしょうか。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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