マネジメント

強いリーダーシップを発揮するための3つの法則

2018.07.25

西郷隆盛から学ぶ組織運営論

国のために人生をささげ、幕末から明治初期の時代を駆け抜けた西郷隆盛氏は多くの人々から愛されたことでも有名で、今でも高い人気を誇っています。こうした人望があったからこそ、西郷氏はたぐいまれなリーダーシップを発揮したというエピソードが多く残っています。
それでは、西郷祖の人望とリーダーシップはどのように育まれたのでしょうか。その答えを導くヒントが庄内藩の人々が西郷の言葉をまとめた「南洲翁遺訓」から見出すことができます。
今回は「南洲翁遺訓」を紐解き、西郷氏がいかに人々を魅了し、彼らからの支持を原動力にどのように明治維新を実現していったのかをお伝えします。

西郷氏を愛したかつての宿敵が遺訓集を発行

旧幕府側の勢力であった庄内藩は、新政府軍の中心人物であった西郷氏とは対立関係にありました。そして、東北戦争に破れた庄内藩は、厳しい処分を覚悟したところ、以外にも寛大な処置が施されたといいます。こうした判断が西郷氏によるものであると知った庄内藩の人々は、西郷への敬意を深めていき、その後も鹿児島を訪問するなど、西郷との交流を温めるようになったのです。

その後、西南戦争に破れた西郷氏が官位をはく奪され、賊軍の将として扱われていた際には、西郷氏を愛する人々の尽力により、大日本帝国憲法発布のタイミングで官位が復活し、これを機会に庄内藩の人々が西郷の言葉や教えをまとめ、山形県の三矢藤太郎を編輯兼発行人として発行されたのが「南洲翁遺訓」です。

「南洲翁遺訓」から分かる3つの法則

「南洲翁遺訓」は全42カ条で構成されていますが、大阪大学名誉教授の猪飼隆明氏はこれらを6つのグループに分けています。その中でも「為政者の基本的姿勢と人材登用」として区分けされている1~7条および20条に西郷の人に関する基本姿勢が表れており、これらの言葉を読むと、リーダーシップを発揮するための3つの法則が浮かび上がってきます。

1. 私利私欲を捨て、贅沢を望まずに品行方正に努めることが大切
2. どんな人であってもそれぞれに長所があるのでそれを発揮させることが大切
3. 志をもって正しい道を進み、一定の方針を貫き通すことが大切

法則1は特に上の立場の人を戒めるように使われた言葉で、西郷自身も非常に質素な生活を送っていたと言われています。「南洲翁遺訓」の1条は「廟堂(びようどう:政治を行うところ)に立ちて大政を為す(政治を行うこと)は天道を行ふ(天地自然の道を行う)ものなれば、些(ちつ)とも私を挟みては済まぬ(わずかでも私心をはさんではならない)もの也。」という言葉で始まっています。つまり政治を推進することは天地自然の道天道を行うことであるから、私利私欲を持ち込んでははさんではいけないということを訴えています
また、4条には、万民の上に立つ物は慎み深く、倹約に努めることで国民の手本にならなければならないとあります。

3つの法則を経営にも応用

2番目の法則は人を大切に思う西郷氏ならではの言葉で、6条に最も色濃く反映されています。そこでは、世の中のほとんどは小人(普通の人)なので、そうした人々の長所を活かすことが重要だということを訴えています。すべての人を大事にして、思いやりをもって接していたからこそ、西郷氏は多くの人から愛されたのでしょう。

最後の法則は、政治を行う上では信念をもって人々を統率することが大切ということを示しています。3条に一定の方針を定めていないと、一度出した命令をすぐに変更してしまうなど、まとまりのない政治になってしまうとあるように、この要素もリーダーシップを発揮する上で重要なものと言えるでしょう。

これらの法則は、経営にも応用できるものです。上に立つ経営者は、社員の手本になることが重要であること、すべての社員の適材適所を図ること、そして組織として明確な方向性、目的を掲げ、その達成に向けてぶれることなく前進すること、この3つはいずれも組織の中で強いリーダーシップを発揮するための軸となります。特に公共性が高い医院経営においては、西郷隆盛氏の言葉の数々は非常に参考になるのではないでしょうか。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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