マネジメント

リーダーに求められているのは「教育する組織作り」

2018.04.18

ノエル・M・ティシーに学ぶ経営論

GEのCEOを務め、20世紀最高の経営者といわれるジャック・ウェルチに大きな影響を与えた人物が、当時のコンサルティングを務め、ミシガン大学ビジネススクールの教授でもあった「ノエル・M・ティシー」です。

ティシーの考えには「ただ日常を反復して、マニュアル通りの業務や管理に長けたマネジャー」では、急速に変化する世界情勢に対応する組織は作れないというものがあります。

時代の変化を敏感に感じ取り、迅速に行動できる組織こそが勝ち残ることができ、そのためには、冷静に現実を把握し、枠にとらわれない発想力と、それを実行に移せる行動力を持つリーダーの育成が必要となります。

ティシーは「そんなリーダー自らが、次世代のリーダーを育成していくシステム」をつくりだした組織こそ、「勝ち続けていく組織」であると提唱しています。「リーダーシップエンジン」と呼ばれるものです。

言い換えると、「学習する組織」で甘んじることなく、そこから一歩踏み込んで「教育する組織」作りを目指すことがリーダーには必要だということになります。そして『部下の能力を伸ばし、継続的に変革を起こすことのできるリーダーを育成し続けること』が生き残っていく組織の重要要素になるのです。

しかし、実際のところ「人はリスクを冒すことを恐れます」。「リスクは失敗を生み出す可能性が高い」からです。そうなると人は自分にとって居心地のいい領域でしか活動しなくなります。

ティシーはこの居心地のいい領域、快適領域を「コンフォートゾーン」とし、その外側を「ラーニングゾーン」、最も外側を「パニックゾーン」と呼んでいます。子供であっても大人であっても、この3つのゾーンのどこかに身を置いていることになるわけです。

コンフォートゾーンにいる限り、無理をする必要がありません。ストレスを感じることも少なく、日々同じことを繰り返していくので業務で失敗することもほとんどないでしょう。

一方でその外側にあるラーニングゾーンに身を置くと、これまでのスキルでは通用しなくなります。新しい環境に慣れる必要があり、戸惑いや失敗も発生してきます。

ティシーは『ビジネスパーソンとして成長していくためには、ラーニングゾーンに身を置くこと』が大切だと提唱しました。「適度な不安を感じる状態にある方が、人は緊張感を持ち、集中力を高めるのでパフォーマンスが向上する」ためです。

入社したての新入社員を例に出して考えてみると、慣れ親しんだ大学生活がコンフォートゾーンになります。就職するということは、社会に出て、新しい職場に馴染み、新しいスキルを身につけていかなければなりません。これがラーニングゾーンです。

困難や苦労を経験していくなかで、やがてこの新入社員も仕事や環境に慣れていきます。大学時代よりもひと回り成長し、この環境を長く続けていくと、現状の業務や職場環境がコンフォートゾーンになってしまうのです。そして、マンネリ化した日々の中で、成長から遠ざかっていきます。ここでさらなる成長を求めて外に踏み出せるかどうか、勇気を持ってチャレンジできるかどうかが重要です。

コンフォートゾーンとラーニングゾーンは人それぞれなので、自分がどこに身を置いているのかしっかり分析できていないといけません。そのためには、冷静に客観視できる視点が必要です。また焦らず小さな目標からコツコツと達成し、自信をつけていくことも大切です。「やればできるという実感を持つこと」が、失敗しても成功に繋げる心の余裕を生み出すのです。

一方で、過度なチャレンジは強烈なストレスとなり体調や精神面の不調に繋がります。こうなると業務を続けることができなくなります。これが最も外側にあるパニックゾーンなのです。ここに身を置くことは危険です。

継続的に変革を起こすことのできるリーダーとは、まさに『常にコンフォートゾーンを抜け出し、ラーニングゾーンに踏み込もうとチャレンジしている人』です。そして『そうある必要性を部下たちにしっかりと伝え、同じように実践させられるリーダー』こそが、次世代のリーダーを育成できるのではないでしょうか。

これこそが求められている「教育する組織作り」になるのです。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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