MANAGEMENT

幸せな社員を育てるエッセンスとは?

2018.03.07

山田昭男氏の考える「社員が幸せに働く方法」

岐阜県に本社のある「未来工業株式会社」は、社員数が約800名の電気資材設備メーカーです。地方企業であるこちらの会社は、知る人ぞ知る、ある別名で呼ばれていることをご存知でしょうか?実はこの企業、「日本一“社員”が幸せな企業」「元祖ホワイト企業」と名高い会社なのです。同社は休みの多さが日本一であったり、豪華な国内外への社員旅行を企画したりと、他の会社で働く会社員からすると羨ましい制度が充実しているため、様々な業界から注目を集めています。

この「日本一“社員”が幸せな企業」の背景には、創業者・山田昭男氏の経営哲学が根底にあると言えるでしょう。山田氏は3年前に他界されましたが、その経営手腕と仕事への思想が、今もなお多くの経営者ファンを魅了してやみません。

今回は「山田昭男の仕事も人生も面白くなる 働き方バイブル」から、未来工業が実施している“社員を幸せにする10の実践”をピックアップし、どのような取り組みが社員を幸せにすることができるのか、あるいは社員が楽しく働けるのか、ヒントを探っていきたいと思います。

1.とにかく休みが多い!働く時間も短く、残業も原則禁止

未来工業が有名になった最も大きな要因は、「年間休日が日本一多く、働く時間も短く、残業も原則禁止」という社風です。未来工業の1日の労働時間は7時間15分で、かつ残業は原則禁止されています。年間休日140日のうち、年末年始は最大16日間連続、ゴールデンウィークとお盆はそれぞれ10日間連続と、日本一休みの多い会社として表彰されたこともあるそうです。年間休日が少ない方からすると、羨ましいことこの上ないですよね。しかし、もちろんタダでこの制度が生まれた訳ではありません。社員自らが生産性を高め、効率的に、無駄なく働くことを考えた結果、皆が帰宅時間を5分短縮、10分短縮、15分短縮…としていった結果、日本一になった制度だそうです。経営者が舵をとって労働時間や休日について考えることももちろん重要ですが、社員一人ひとりが自分の役割と時間の使い方に対する意識を持つことが大切であると、山田氏は説いています。

2.社員は全員正社員で、希望があれば70歳まで働ける

社員が全員正社員採用というのには、理由があるそうです。山田氏曰く、
「人間の働きぶりは会社経営の根幹なのに、数字だけしか見ていない経営者が多すぎる。人件費を下げて会社を強くするというのは、世の中にはこびる、常識という名の大きな誤解だ。」と本書の中で述べています。
正社員の半分の給料で働かされる契約社員や派遣社員、パートさんが、正社員と同じだけのモチベーションを持って働いてほしいというのには無理がある、だからこそ全員を正社員で雇うのだそうです。

3.会社全体で売上目標がなく、個人の営業ノルマもない

普通、会社というのは会社全体で売上目標を決めたり、個人のノルマを設定したりするものです。医院を経営されている先生方の中にも、「1日の来患数◯名」といったような目標設定をされた経験がある方も多いのではないでしょうか。しかし未来工業にはそれらが一切ありません。ノルマを設定して1社当たりの時間配分を気にして営業するより、1社に対して自分や相手の気の済むまま営業することで、結果としてお客様からの信頼を得ることができるというのが山田氏の考え方なのです。

4.「ホウレンソウ」も「成果目標」もない

会社全体で売上目標がなく、個人の営業ノルマもないため、上司から部下に対する「ホウレンソウ」(報告、連絡、相談)の強制がなく、また成果目標もありません。その理由は、一人ひとりの社員に対して責任を持たせること、信用することを重要視しているためです。また社員に無言の「信頼して任せている」というメッセージを送ることで、社員に自信を持たせることができるそうです。

5.未来工業の「3ナイ」主義とは?

目標の共有もノルマの設定もない未来工業では、それでは一体どのようにして人材を育てているのでしょうか?未来工業では、独自の人材の育成方法として、上司は部下を「教育しない」・「管理しない」・「強制しない」という、「3ナイ主義」で「プロ社員」を育てる事に注力しているそうです。未来工業がいう「プロ社員」とは、「自分の頭で考え行動し、その結果を自分なりに検証できる人」のこと。山田氏曰く、「世の中の多くの上司は、部下を教育したがり、管理したがる。そのせいで上司から命令されるまで動かない「指示待ち社員」が増えている。」と言います。だからこそ未来工業では、「3ナイ主義」で自ら動くことのできる人材を育てているのです。

6.信じて、任せる

「3ナイ主義」で社員を育成するためには、上司が部下を信じ、仕事を任せる心意気が必要です。皆さんの中にも「仕事を任せた」つもりでも、その後細かく口出ししてしまった経験はありませんか?これでは仕事を任せたことにならず、仕事を強要したことになりかねません。部下を育てるためには、まずは上司が部下の仕事には途中で口出しをせず、任せることが大切です。一方、信じて任せることは、放任することではありません。上手にアドバイスをすること、例えばアドバイス自体を短くする、簡潔な内容にするなどで、部下はアドバイスとして受け入れやすいと言います。

7.コスト意識を叩き込む

コスト意識を高めるためには、次の3つのステップが有効だと言います。ひとつめが、「小さな節約の習慣付け」、次に「無駄な慣習の廃止」、3つめが「給料に見合った仕事を意識し、仕事の生産性をあげること」だそうです。例えば、席を離れる時にデスクの照明を消す。(未来工業の社内には、自分自身担当の蛍光灯スイッチがあるそうです!)、書類を郵送する際、わざわざクリアファイルに入れて送らない。あるいはお中元やお歳暮、年賀状など慣習の廃止。そして自分と同僚や同期の仕事量、仕事の質と給料が見合っているかどうかを比べること。そうすることで、自ずと自分の仕事の質も高まり、無駄をカットできるようになり、好循環が生まれてくると言います。

8.改善提案、社内提案を習慣にする、提案には奨励金を出す

未来工業には、ユニークな社風があります。それは、社内で改善すべき点や仕事に対する提案を行うと、その提案に報奨金が出るという制度です。
これは、社内で推奨されている「ムダ」や「無理」を自分なりに創意工夫して仕事を効率的に進め、生産性を上げることを、全社員で取り組むためです。改善が習慣になると、社員一人一人の「常に考える」という姿勢が自然と身につき、それが仕事全般の質を高めてくれると山田氏は言います。

9.言い訳をしない

山田氏は、日本人は言い訳が大好きだと本書の中でも述べています。皆さんの中にも、仕事が上手くいかない原因を環境のせいにして言い訳していたが、実は無駄が多いことを平気で続けていたことに気付けていなかった、という経験はありませんか?医院を経営するにあたっても、コストダウンが難しい場面や、カットできないプロセスが発生することもあると思います。しかし無駄を削り、利益を上げるための創意工夫を実践してみることこそに、チャンスはあるのです。

10.常に考える

最後にお伝えしたいのは、未来工業の社員は常に考える姿勢を持っているということです。これまでにご紹介した通り、働く時間に創意工夫をしたり、無駄なコストを省いたり、部下に強要しないといった価値観を形成している未来工業。しかしこれらを日々継続するためには、一人ひとりの常に考える力が実践されているからこそだと、山田氏は強く訴求しています。

いかがでしたでしょうか。山田氏の「試しにやってみて、うまくいけば採用、うまくいかなければまた考えればいい」という思想は、業界は違えど、「より良い医療を提供し、地域に選ばれ愛される医院を経営していく。そのためもまずは、従業員の幸せを考える必要がある。」という先生方の経営にもきっと通じるところがあるはずです。山田氏から働き方についてのエッセンスを学び、より魅力的な医院を目指してみてはいかがでしょうか。

参考文献:
「山田昭男の仕事も人生も面白くなる 働き方バイブル」
山田昭男著 東洋経済新報/2015年

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部