「ピーター・リンチの株で勝つ」~アマの知恵でプロを出し抜け~
2019.11.25
アマチュアの知恵でプロを出し抜く株式投資とは
ピーター・リンチは、1970年代後半から80年代前半の不振を極めた相場を含む13年間で、資産を700倍に成長させた伝説のファンドマネージャーです。そんなリンチ氏によって執筆された『ピーター・リンチの株で勝つ』は、1989年に原書が最初に出版されてから30年が経過してもなお、名著として世界中で広く知られています。リンチ氏の名言の一つに「典型的なアマチュア投資家が典型的なプロのファンドマネージャーに対して優位性を持っていることについて、私の確信はいささかも揺らいでいない」という言葉があります。リンチ氏の名著から、アマチュアがプロに勝つ投資方法のヒントを探ります。
個人投資家というアマチュアが持つ「二つの優位性」
個人投資家の銘柄選びでは、自分の得意な知識を生かすことが重要です。
リンチ氏は、「町に行ってドーナツを食べることが株式の基礎的調査の第一歩になる」と述べています。自分の家の近所にできたお店でドーナツを購入し、「このドーナツはとても美味しい、これは売れるぞ」と思った時に、そのドーナツ会社の業績に注目し、株を購入する足掛かりになるからです。「ダンキン・ドーナツ」の例を挙げると、1982年に1年間、毎週2ダースのドーナツを買ったとすると270ドルになりますが、この額を株式投資に当てていたとすると4年後に1539ドル、6倍株へと成長していたことになります。これはあくまで一例ですが、スーパーのウォルマートや玩具のトイザラスなどの企業も同様の成長を遂げていました。このように、買い物客が好ましく思う商品こそ成功の最初の兆しとなることが多く、それは地域の至るところで見つけることができるため、裏庭、商店街や職場など自分の家の近くから調査を始めることが大切であると説明しています。
一般消費者として流行りのものや、好ましいものを見極める知識のほかに、ある業界に関する専門知識は有望株を選ぶのに非常に役立つとリンチ氏は述べます。化学業界にいれば、塩化ビニールの需要が上向いて価格が上がり、在庫が減ることを最初に知ることができます。さらに、他に競争相手はまだ参入しておらず、仮に新しく工場を建てるにしても数年は要することを知っていれば、既存の会社はこれらによって大きな利益を出せるということに気が付けます。
「一般消費者としての知識」と「ある業界に関する専門知識」という2つの知識を生かすことが有望株を選びぬく手がかりとなるのです。
調査を重ねることが成功に結びつく
リンチ氏は「調査なしの投資は、カードを見ずにポーカーをするようなものだ」と説く一方で、多くの個人投資家が調査なしに投資をしがちであると考えています。ロンドン行きの一番安い航空券を探すために週末を費やす人が、KLM航空を500株買うときにはその会社について5分と調べないといった例を指し、株を買うときには雑貨を買うときと同じくらいの努力をすべきだと述べています。
リンチ氏の言う調査とは、投資を考える企業が何を材料に、どのように成長を遂げ、どの程度の利益を上げるかのストーリーを描くことです。企業の魅力、成長性、弱点などを調べ上げ、子供にも理解してもらえるまでに、自分自身がその企業について理解することが大切だと述べます。年に20~25%の成長といった急成長を遂げている企業ならば、どの分野でどの程度まで今のスピードで成長し続けられるのか考えることですし、業績不振の淵から立ち直りつつある企業に投資する際には、その会社が変革に熱心であるか、またその計画は十分に機能しているかなどを検討すべきなのです。もちろん経済や市場の変動はどんなプロ投資家でも予測を的中させることはできませんが、取り扱うサービスや商品の売れ行きを調べたうえで、その企業の株価を予測することは自身の観察眼を磨くことで十分可能であるとリンチ氏は述べます。投資を始める時から予めストーリーを決めておくことで、市場の一時的な変動に動揺して不要な売買をしてしまうこともなくなりますし、また自分の描いたストーリー通りに動いているかを定期的に再チェックすることで思わぬ損失が広がることを防げるとも説明しています。
最後に
本著では、個人投資家がプロに勝つための投資方法として「知識を生かすこと」と「調査に時間を費やすこと」の重要性が説かれています。リンチ氏は「自分で理解できないものには手を出さない」という考え方のもと、自分の信じるに足る会社を念入りに発掘し、じっくり保有する投資方法を貫いているのです。
リンチ氏の推奨する投資方法に倣い、ドクターとしての専門知識を生かして、事業内容や今後の展望性を深く理解している分野への投資を検討されてみてはいかがでしょうか。