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事業計画書の中で重要視されるのは収支計画の精度

2019.05.30

開業医が融資を受ける際の事業計画書の作成ポイント

高齢化が急激に進む日本にとって、医療サービスは成長が見込まれる分野であるため、マネジメントに不慣れな勤務医の方でも、きちんと基本的なことを守れば開業医として十分にやっていける可能性は高いと考えられています。そのため、税理士などの専門家任せにしていても、特に苦労することなく事業融資を受けることができるケースが多くあるのも事実です。
しかし、融資が受ける先生方ご自身で理解しておくことによって、融資条件に差が生まれることもよくあります。今回は、開業医の資金調達のために、開業医の方が知っておくべき「事業計画書の作成ポイント」をお伝えします。

収支計画の重要性

融資を申し込む際にはたくさんの書類を出す必要がありますが、その中でも事業計画書は特に重要な意味を持ち、その事業計画書の中で最も金融機関が重要視することの多いのは収支計画の部分です。様式によっては収支計画書として単体で提出する場合もあります。

ポイント①収支計画が借入金を返済できる計画になっているか?

収支計画が最も重要な理由は貸し手(銀行等金融機関)にとって「投資が回収できるかどうか」「貸したお金がきちんと期間内に返ってくるか」が端的にわかるからです。
収支計画は損益計算書が数期分並べられたものです*。 各期の返済原資が毎年の返済額以上確保できているかどうかで「貸したお金が毎年滞りなく返ってくるか」を貸し手は判断します。公式で示すと下記のようなイメージです。実際には利息等も含めた正確な数字を把握する必要がありますが、扱う金額が大きい場合、概要を把握する上では下記の式でも把握できます。

返済原資(=税引後当期純利益+減価償却費)  〉 毎年の返済額(=借入金額÷借入期間)

*収支計画の例
https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/keikakusyo3_131128.pdf
日本政策金融公庫 中小企業事業部 HP
(→この様式の場合、「業績推移と今後の計画」の部分が収支計画に該当します)

ポイント②収支計画の妥当性は高いか?

収支計画について、バラ色の収支を並べるだけでは当然いけません。本当にその数値通りにいくのか?という質問に対する根拠が必要です。
なぜその医業収益が上がるのかは、すでに実績のある開業医であればその実績に基づいて説明することで足りる場合も多いですが、これから初めて開業される場合には、その医院で提供したい医療サービスと地域の医療ニーズがマッチしていることを説明する必要があります。その際には、見込みの患者数と単価をできる限り客観的なデータを用いて説明しましょう。
医業収益は保険収入と自費収入に分かれますが、特に美容外科やレーシック専門とする眼科、インプラントや矯正を専門とする歯科医院など、自由診療がメインとなる場合は患者ニーズの把握だけでなく、想定されるマーケティングコスト等、よりシビアなビジネス視点が必要になる場合もあります。

ポイント③収支計画の後に設備投資計画を考える

収支計画がイメージできた上で設備投資計画を考えること。この順番が重要となります。
土地や建物、医療機器など、設備投資額が大きくなるのも医療業界の特徴ですが、開業医として理想を追い求めるあまり、ニーズの少ない土地に立派すぎる建物を建てて失敗する例もあります。特に建物については過剰投資とならないようにコントロールする必要があります。「いくら投資すべきか」は「どれくらいの集患が見込めるか」が分かって初めて決断できます。
開業医の方でよくあるのが、欲しい建物や設備が頭の中で先に決まってしまっているパターンです。先に「医業収益」がどのくらい確保できるかの見通しを立てる、つまりざっくりとした収支がイメージできた上で設備投資計画を立てるようにしましょう。

事業計画書と担保権設定の関係性

銀行が融資をする場合、借主の所有する不動産等の資産に抵当権あるいは根抵当権という担保権を設定する場合があります。基本的に設備資金として融資する場合はその融資対象物件には担保権が設定されますが、借入金の資金使途(お金の使い道)が運転資金のみの場合は担保が要否はケースバイケースです。
具体的には、銀行は事業計画書や決算書の内容を元に担保権を設定するかどうかの判断を行いますが、決算書の内容があまり良くない状況で事業計画書の実現可能性も低いと判断された場合、運転資金であっても、追加の担保権設定を求められる場合がよくあります。
少しでも担保提供したくないと考えるのが借主の本音かと思いますので、不本意な担保提供をしなくて済むようにするためにも、前段で解説したような可能な限り実現可能性が高く、精度の良い事業計画書を策定することが重要なのです。

まとめ

メインバンクのある方はまずメイン行に融資の相談をされるかと思いますが、これから開業される方などメイン行が無い場合は、預金残高や日々の入出金記録がわかることでスムーズに話が進みやすくなったり、金利優遇を受けられる場合もあるため、ままず長年預金等でお付き合いのある地元の金融機関に相談されることをお勧めします。
担保提供の少ない借入ができる良い事業計画書が策定できるよう今回お伝えしたポイントを是非参考にしてみてください。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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