NISAの出口戦略に有効!『ロールオーバー』の仕組みと注意点
2019.05.09
NISAの非課税期間が終了する際の対応策
少額投資を推進する税制優遇制度であるNISAは、金融庁が公表した最新の「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査(平成30年12月末時点、速報値)」によると、一般・つみたて・ジュニアNISA合わせて1,200万超の口座数、買付額にして16兆円ほどとなり、NISA制度はすそ野の広がりを見せている状況です。そこでNISA制度を更に有効活用すべく、今回はNISAの非課税期間が終了する際の対応策として「ロールオーバー」の仕組みや活用の際の注意点などを解説します。
NISAが有する特徴
まずは一般NISA制度の最大の特徴を整理しますと、NISA口座を通じて投資した個別株式や株式投資信託、REIT(不動産投資信託)などの運用商品の価格が上昇した際の売却益や分配金が非課税となる税制優遇措置が講じられていることです。通常、利益に対し20.315%課税される税金分も含め次の投資に活用できるため、複利効果を発揮させながら資産を大きく拡大させることが期待できます。
そして一般NISAの非課税期間は5年間と定められており、一般NISA制度を有効活用するためには、非課税期間終了時の対応が大切なポイントです。つまり、①ロールオーバーする、②NISA口座内で保有資産を売却する、③課税口座に移すといった3つの中から自身にとってベストな選択をすることになります。
ロールオーバーの仕組み
そこでロールオーバーとは、非課税期間終了時にNISA口座内で投資した運用商品を翌年の非課税投資枠に移管することができる仕組みです。自身が保有する運用商品の価格が今後更に値上がりすることが期待できるのであれば、ロールオーバーすることで、更に5年間にわたり運用益が非課税となるメリットを存分に享受することが可能となります。また、合計で10年間利益を再投資に回せるため、複利効果を十分に発揮させた資産運用を実践できると考えられます。なお、ロールオーバーする金額には上限が設けられていないため、仮に1年間の非課税投資枠である120万円を上回る金額でも翌年の非課税投資枠に移すことが可能です。
一方で保有商品の価格が十分に上昇したと考えられる場合には、非課税メリットを確実に活かすべく、ロールオーバーせずに非課税期間終了前にNISA口座内で売却するのがよいでしょう。また、NISA口座内で保有する商品の価格が値下がりし損失を抱えている状態で、今後も価格の回復が見込めないケースにおいても、ロールオーバーせず一度課税口座に移すのがよいかもしれません。そして改めてNISA口座においては、高い成長が見込まれる株式や投資信託などに投資することによって、NISA制度が有する運用益が非課税となるメリットを十分活かした投資戦略といえるでしょう。
ロールオーバーの注意点
なおロールオーバーを活用する際には注意点もあります。まず1点目は、ロールオーバーは3つあるNISA制度のうち、一般NISAとジュニアNISAのみが利用できます。つみたてNISAは、非課税期間が最長20年と長い期間にわたるため、ロールオーバーができない仕組みとなっています。
注意点の2つ目が、非課税期間終了時の対応としてロールオーバーすることを選択し場合、ロールオーバーする金額分の翌年の非課税投資枠が削減されます。簡単な例を挙げますと、NISA口座で100万円分のREITを購入し非課税期間終了時にロールオーバーした場合、翌年の非課税投資枠は年間の上限金額である120万円からロールオーバー分の100万円を引いた20万円のみ投資することができる仕組みになっています。また非課税投資枠を超える金額をロールオーバーすることは可能ですが、その際には翌年の非課税投資枠は使い切ることになり、新たに投資を手掛けることはできなくなることに留意してください。
そして注意点の3点目が、過去にNISA口座を経由して投資したとして、その後金融機関の変更を行っていたケースでは、変更後の金融機関において保有商品をロールオーバーすることができません。つまり、当初NISA口座を開設し投資を行った金融機関に戻す金融機関変更手続きを再度行わなければなりませんので、金融機関の変更をご検討中の方は注意が必要です。
注意点の4点目が、非課税期間が終了する際に投資した運用商品をロールオーバーしない場合、課税口座へ移管されます。金融機関によって対応が異なってくる可能性がありますので、正確を期すにはNISA口座を開設した金融機関に確認する必要があります。仮に将来性が高い有望銘柄を保有し運用益をあげていた場合、非課税期間終了時にロールオーバーしなければ、利益に課税がされることになります。また今後も値上がりを期待でき、非課税メリットを活かした運用を実践できなくなってしまいますので、ご自身が保有する運用商品の非課税期間終了時期を事前に確認するようにしましょう。
まとめ
今回はNISAの非課税期間が終了する際の対応策として、ロールオーバーを中心に解説してきました。非課税期間終了時にロールオーバーを有効活用することで、運用益が非課税となるNISAのメリットを十分な期間にわたって活かし、効率的な資産形成をしてください。
【参照】
金融庁HP
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/nisa/overview/index.html
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/nisa/point/index.html