ファイナンス

中国製品のイメージを激変させる!中国が掲げる壮大な国家目標とは!?

2019.05.18

世界の製造強国を目指す!?中国製造2025の目標と問題点

『中国製品』と聞くとどのようなイメージを持たれるでしょうか?
あまり品質がよくないという先入観をお持ちの方も多いのではないかと思います。
映画「Back to the Future」のワンシーンに、過去から来た科学者のドクが「この製品は大丈夫か?メイドインジャパンだぞ」と聞かれた時に、現在に生きるマーティが「日本製は最高さ」と返すシーンがありました。この映画のワンシーンのように同じ国で製造されたものとは信じられないくらいに、短期間で品質が上がりイメージがガラリと変わった事例は存在しています。
中国の製造業でも、国をあげて製品の品質を上げる目標を立てているということをご存知でしょうか?今回は、そんな中国の製造業立国を目指す指針「中国製造2025(メイドインチャイナ2025)」についてご紹介します。

潤沢な労働力故に世界に後れを取った中国

日本製品が世界的な競争力を持った背景には、資源も少なく国土も狭い日本では、原料を輸入して高品質で高付加価値な製品を世界に再輸出しなければ、外貨を稼ぐことができなかったというものがあります。
一方で中国は、広い国土と人口の多さ、鉄の原料となる鉄鉱石や石炭などの資源はある程度国内調達ができることから、多くの人を使って安価な製品を大量生産する「世界の工場」としての地位を90年代に確立しています。これにより中国製品は、安いけれども品質はそれなり、使い捨てというイメージが先行したのです。
中国の物価が高くなかった当時、多くの工場労働者を雇って日本では考えられないような手作業での製造業を行っていました。この手作業中心の製造業は、日本では当たり前の工場の自動化に後れを取ることになります。
中国が発展していく過程で、人件費も上がってきたこともあり、今までのような製造業では世界と競争ができない状況に陥る未来が見えてきたのです。

そこで登場した中国の国家目標「中国製造2025」

2015年、中国政府は2025年までに中国が製造分野で世界の中位となることを目指した中国製造2025を発表しています。その内容は先進国の製造業ではすでに実施されている環境配慮型の製造やFA(ファクトリーオートメーション)化など従来の中国の製造業では見落とされていた部分の強化を実施し、品質においても世界水準まで引き上げるよう投資を実施するというものです。
その対象となる製造分野には、現在、アメリカも脅威と感じているファーウェイなどのある情報通信分野やバイオ、医療機器分野なども含まれています。
このように、中国製造2025は、製造業の現場革命を起こし、今まで安い労働力を売りにしていた製造業の方針転換することを意味しています。
今後、中国のバイオや医薬、医療機器などの製造分野が発展してくると仮定すると、日本市場にも影響を及ぼす可能性もあるでしょう。

中国製造2025にアメリカが反発

アメリカと中国は、製造業では今まで品質に大きな差があったため、競合しない状況でしたが、情報通信分野などで世界シェアを拡大している企業が出てきたことで、品質が徐々に上がってきている中国の製造業にアメリカが危機感を募らせているといいます。米中で関税合戦となった貿易摩擦も中国製造2025に対するものともいわれています。
アメリカと中国では物価の差がまだまだ大きいため、同じ品質で同じ機能の製品であれば、中国製品の方が相対的に安く市場に出回ります。アメリカはこうした状況による中国製品の市場圧巻を恐れたのです。
特に中国製造2025では、先進技術の10分野への投資強化を打ち出しているため、これらの分野全てで世界と競争できるようになれば、価格面で中国が非常に有利になると考えられています。
過去に自動車の輸出入をめぐって日米貿易摩擦が起こったように、日本もアメリカとの関係の歴史の中で同様の反発をかったことがありました。このような前例から、中国も先進国への階段を上がっていると言えそうです。

中国製造2025には続きがある

中国製造2025で、2025年までに製造業で世界中位となるという目標を掲げていますが、この目標には続きがあり、最終的には2049年までに世界上位の製造業立国となるというものがあります。
壮大な目標で、多くの設備投資や産業分野の市場開拓を必要とするため、そこには多くの障壁があるものと想像ができます。
その一つが、先述のアメリカによる貿易摩擦ですが、他にも、中国製造2025が、中国国内の景気が悪くならないことを前提に設定された目標である点を問題視する見方もあります。
事実、中国は高い経済成長を続けてきていますが、ここ数年、GDPの伸びが鈍化してきているというニュースを耳にすることも多くなってきました。
さらに、中国の動きとは別に、東南アジア諸国の発展も無視することができません。
東南アジアの国の製造業が発展し、その製品が中国製品よりも安くて品質のよい製品だった場合、今後も中国製品が売れ続けるという保証がなくなってしまいます。

まとめ

中国は、一時期の飛ぶ鳥を落とすような勢いはなくなってきてはいるものの、中国製造2025を目標としていることには変わりはありません。
中国製造2025を通して、中国は過去の成功例からの脱却とさらなる発展のための変化を起こそうとしています。
これは病院経営や医療分野でも、過去の成功例に安住すると改革が遅れ、取り残されてしまうということと共通しています。そのためには大胆な改革や設備投資が必要となり、これは中国に限った話ではなく、身近にも存在するものと言えるでしょう。
冒頭の映画の話でもあったように、国の優位性は時代とともに変化し続けています。その裏では、中国製造2025のような国家プロジェクトがあることを理解しておくと、より国際情勢を読みやすくなるでしょう。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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