ファイナンス

節税や福利厚生を兼ねた共済制度とは!?

2019.04.15

開業医向け3つの共済制度を活用した資産形成法

開業医のみなさまは、ローリスクで節税したい、従業員満足を高めるために福利厚生を整えたい、万が一の際の保障を確保しておきたいといった様々なニーズをお持ちかと思います。
そこで今回は、「中小企業倒産防止共済制度(愛称:経営セーフティ共済)」、「小規模企業共済制度」、「中小企業退職金共済(略称:中退共)」という3つの共済制度それぞれの制度概要や相違点、メリット・デメリットを解説します。

《経営セーフティ共済》

経営セーフティ共済は、万が一取引先が倒産してしまった際や、掛金などの回収が困難となった場合に貸し付けを受けられる共済制度であり、国が全額出資する独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営を行っています。なお経営セーフティ共済は、個人事業主として医院を開業してから1年以上が経過している方が加入対象ですが、医療法人は加入できませんのでご注意ください。
そして経営セーフティ共済の掛け金額は、毎月5千円から20万円の範囲において5千円単位で自由に設定すること可能で、個人事業主である開業医の先生方にとって掛け金の全額を必要経費に算入できることが大きなメリットといえるでしょう。つまり掛金上限である20万円を12か月間拠出することで、合計240万円の経費計上ができ、その分節税につなげることが可能です。掛け金は最大で800万円まで積み立てることができます。
経営セーフティ共済制度を活用するうえでの注意点としては、掛け金の納付月数が12カ月未満の場合は掛け捨てとなります。また、契約者本人が任意に行う解約である「任意解約」の場合の解約手当金は、40か月以上の掛金を納付することで掛金合計額が戻る制度設計です。
ただし、それまでの積立金を受け取る際には事業所得として課税されるため、経営セーフティ共済は「課税の繰り延べ」を行っていると言えます。そのため、所得税率の低い時期に積立金を受け取るなど工夫をしなければ、積立金を受け取る際に節税よりもむしろ増税されてしまうリスクもありますのでご注意ください。

参照:中小機構HP
http://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/entry/eligibility/index.html
http://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/about/features/index.html

《小規模企業共済》

小規模企業共済は、小規模の事業を営む経営者向けに、節税しながら退職金を備えることができる共済制度であり、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営主体となります。経営セーフティ共済と同様に、個人事業主としてクリニックを開業している先生方を対象とする一方、医療法人は加入することができません。
小規模企業共済の掛け金額は毎月1,000円から7万円の範囲で自由に決めることができ、満期や満額といったものはなく、積み立てた共済金を退職や廃業時、医療法人化した際などに経営者の退職金として受け取ることが可能です。そして小規模企業共済を活用する大きなメリットとしては、掛金の全額が所得控除となり課税対象所得から控除することができることが挙げられます。
また積み立てした共済金を一括で受け取る場合には「退職所得扱い」に、分割受け取りを選択する場合「公的年金等の雑所得扱い」となるため、税制メリットを享受することが可能です。なお一括と分割の併用もできます。

なお中小企業基盤整備機構のホームページ内にて、小規模企業共済制度の加入シミュレーションを行うことも可能です。具体的な例を挙げると、試算条件として加入年月を2019年3月、共済金を受け取る脱退年月を加入から30年後の2049年3月に、月の掛け金額を上限の7万円、課税所得金額を1,000万円とした場合の節税効果は、年間36万7,000円と想定されます。
解約手当金は12カ月未満が掛け捨て、240カ月未満まで掛金合計額を下回るため、注意が必要です。

参照:中小機構HP
http://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/entry/eligibility/index.html
https://www.smrj.go.jp/skyosai1/cgi-bin/syo-sisan-calc.cgi

《中小企業退職金共済》

中小企業退職金共済は、その名の通り、安全で確実に将来の備えとして従業員向けの退職金を積み立てることができる共済制度であり、独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営を行っています。中退共には個人事業主として開業した先生方に加え、医療法人も加入することができます。

中小企業退職金共済の毎月の掛け金額は、5,000円から16種類あり、従業員が自由に選択できるほか、パートタイマーなど短時間労働者向けにも、2,000円より3種類の中から掛け金額を選ぶことが可能です。また新たに中小企業退職金共済制度に加入した場合、従業員1人ごとに月の掛け金額の2分の1(上限5,000円)、パートタイマーなど短時間労働者の場合にもそれぞれ国から助成金が支払われる仕組みを採っています。
そして中小企業退職金共済にも税制優遇メリットがあり、掛金の全額を法人の場合は損金に、個人企業の場合は必要経費に算入することができます。そのため、中小企業退職金共済も節税効果を得ながら、効率的に福利厚生の充実(従業員のための退職金資産の形成)を図ることが可能な制度といえるでしょう。また中小企業退職金共済で積み立てた退職金資産は、小規模企業共済制度と同様に、一時金払いであれば「退職所得」、分割であれば「公的年金等の雑所得」として取り扱われます。
ただし、中小企業退職金共済の対象はあくまでも『従業員』で、小規模企業共済制度に加入している方(経営者)は、加入できませんのでご注意ください。

参照:勤労者退職金共済機構HP
http://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/seido/seido04.html
http://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/seido/seido02.html
http://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/seido/seido03.html

《まとめ》

今回ご紹介した経営セーフティ共済には万が一の保障と課税の繰り延べ効果が、小規模企業共済には経営者の退職金制度の構築と節税効果が、そして中小企業退職金共済には従業員の退職金制度を整備し充実した福利厚生を提供するというそれぞれの加入目的を有しています。それぞれの共済制度を目的別に応じて最大限に活用し、着実で効率的な資産形成を目指しましょう。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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