ファイナンス

鴻海のシャープでの成功は、国際経験にあった

2018.12.17

無名だが高いシェアを誇る!台湾のテクノロジー企業の前途は?

多額の負債を抱え、経営不振に陥ってしまったかつての名門シャープが、国内の銀行などにも見放され、一時は倒産寸前までなっていたことを覚えていらっしゃいますか?そんなシャープの救済を行い、今期の決算で黒字転換を達成した台湾の電機メーカー、鴻海(ホンハイ)精密工業などを有する台湾は、他にも多くのテクノロジー企業を有しています。海外製や国内製の医療機器の部品やシステム開発の部分で、台湾企業が製造しているということもあります。
企業名を聞いても、全くの無名であったとしても、実はあるグローバル製品を構成する一部で世界的なシェアを獲得しているというのが台湾企業の代表的なビジネスモデルです。
今回は、製品の生産委託などを受託し、業績を伸ばしてきた台湾のテクノロジー企業の今後について考えてみましょう。

台湾という国(地域)の成り立ち

1940年代に中国で起こった文化大革命により、中国では社会主義国家「中華人民共和国」が成立します。その際に、今まで政権を運営していた「中華民国」政府は、処刑を逃れるために台湾へと逃れます。
現在、中国と台湾、どちらも自国を中国と主張していますが、多くの国は中華人民共和国を中国と認識しているため、台湾は国ではなく「地域」という扱いとなっています。しかし、主権を持つ政府もあり、ほぼ国として機能していると言っていいでしょう。
中国との大きな違いは、台湾は日本と同じ資本主義による自由経済であるということです。
したがって、海外との貿易なども自由に行うことができます。
こうした状況から、アップルなどの欧米企業の製品生産を受託することで、業績を伸ばしてきた台湾企業も多く、シンクタンクの国際競争力ランキングでは常に上位にランクインしています。

中国との関係性は、政権によって変わっている

もともと同じ国だったこともあり、中国本土に行っても北京語によるコミュニケーションを行うことができます。
こうしたことから、1990年代から、台湾の企業が製品の生産を受託し、中国の合弁会社で生産を再委託するというような構図で、経済的には切っても切れないような関係性が続いてきました。
日本でも、中国企業と取引は難しいが台湾企業を通してであれば、安価な製品を信頼性のある形で生産することができると言われていた時期もありました。
そんな中国と台湾ですが、いつも友好的というわけではありませんでした。
台湾では、台湾としての独立を党理念とする民進党と中国と友好的な関係を続けようという国民党の二大政党が与党と野党に分かれています。
現在、与党は台湾独立を理念とする民進党ですが、アメリカとの関係を重視するものとなるため、アメリカが中国との関係が悪化している現在、大国に挟まれるような形となってしまっています。経済的な結びつきの強い中国と友好的な関係を強化しようという台湾の人たちの思いがあり、地方選挙で与党が惨敗するという結果となってしまいました。

近年の労働賃金高騰により、中国から撤退する台湾企業も

中国での生産委託を指揮する立場だった台湾企業ですが、近年の中国国内での労働賃金の高騰や、都市部での環境規制などにより、工業製品の生産が思うようにできなくなってきています。
こうした背景から、台湾企業が中国から撤退するというような状況も見られています。
同じ言葉が通じて、多くの労働力を確保できる中国の工場は、台湾企業にとって最早過去のものとなりつつあるのです。

鴻海のシャープでの成功は、国際経験にあった

今までのシャープといえば、どちらかと言えば内需向けの製品を多く生産していた企業でした。
そのため国内需要の不振により、経営不振に陥ってしまっていたのですが、鴻海による中国市場の立て直しにより、今期の黒字化が達成されたと言われています。これには、台湾企業が中国に進出した際のノウハウが活かされました。また、台湾は国内市場が小さいため、海外へと目を向けざるを得ない実情がありますが、こうした状況がプラスに働いたものと考えられます。

表には名前は出てこないが、実力のある国際企業が多い

鴻海の主力事業はiPhoneなどのアップル製品の生産受託(OEM)事業です。そのため、表立って鴻海製品であるというものがなく、アップルの製品として鴻海製品が市場に出回っています。
今回のシャープの一件でも、鴻海がシャープの製品を中国市場で販売促進を行っています。その際に中国市場での経験が大きな成果につながっていることがわかります。
台湾の企業は、このように国際的な縁の下の力持ちとしてうまく立ち回れる実力がある企業が多いといえます。
中国での生産委託が縮小していく中で、台湾企業は次なる活躍の場を探しています。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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