娯楽だけじゃない!次世代の医療を支えるVR
2018.09.24
VRが変える医療の現場 手術シミュレーション、注射の痛みを緩和
今回はそんな魅力ある応用例についてご紹介します。
次世代の医師を育てる 臨場感ある手術シミュレーション
通常、手術はやり直しのきくものではありません。緻密な治療計画と積み上げられた医師の実力によって支えられているものです。しかし、その手術が極めて精巧で臨場感のあるVR映像によって、今よりも充実した準備・練習が可能になるとすればどうでしょうか?
VRを使った手術シミュレーションはアメリカで研究が進んでおり、その成果を競うコンペティションも開かれています。
なかでもOsso VRは医療器具の扱い方を示したシステムを開発し、米教育省主催の『EdSim Challenge』という権威あるコンペティションで優勝しています。このコンペティションは次世代の新しい教育の形を模索・支援するもので、優勝したプロジェクトには5,000万円のほか、OculusからはVRヘッドセットが、SamsungからはGalaxy等のデバイスなども贈られます。
OssoVRのシステムを活用することで、その場にはない手術室を投影することができ、手術器具の扱い方などをその場にいるかのように見て学べるようになります。
Youtube動画『Osso VR | Results Matter You』
https://youtu.be/Ep3rEcFHKEk
子どもにとって痛くも怖くもない注射
私達大人が思っている以上に、子どもにとって注射は忌むべき存在です。実際にはそれほど恐れるものでなくとも、「何かわからないものが身体に近付いてくる」という事実だけで、子どもは痛みと恐怖を増長させてしまいます。
注射ができなければ初期の検査に支障をきたすだけでなく、ワクチンが接種できないことにより本来予防できなかった疾病にかかる可能性も高まります。
これまでは「泣かせてしまっても終わらせてしまえば良い」という考え方が一般的でしたが、これは時代に則した考え方といえるのでしょうか?VRはこうした固定観念をも覆す力を持っているのです。
アメリカやブラジルの一部医療機関では子どもに注射する際に、VRゴーグルを装着させアニメ映像を流す取り組みが行われています。これにより子どもは注射に感じていた恐怖を紛らわせられるばかりか、「注射は楽しいもの」と感じさせることに成功しています。病院へ連れていく際にも「楽しいゲームができるよ」と伝えれば十分です。
人間の五感のうち視覚と聴覚を子どもにとって心地よいものへとコントロールするだけで、痛みや恐怖は大きく軽減することが可能です。
結果的に医師と子どもとのコミュニケーションも円滑に行えるようになり、信頼関係を築きやすくなるでしょう。子どもを病院に連れていく保護者の負担軽減にも役立ちます。
Youtube動画『Realidade virtual transforma a experiência da vacinação infantil』
https://youtu.be/P9JwAH0298w
期待されるVRの市場規模 革新の余地は医療にあり
日本のIT専門調査会社であるIDC Japanの調査によれば、世界のVR/AR関連市場規模は2,087億円になるとみられ、複数のサービス、システム、ソフトウェアの成長が予想されています。このうち最も存在感を示すのが2018年の支出規模が70億ドルと予想されるゲーム事業です。やはりVRを使った映像コンテンツは、3D映像がブームになった頃と同様に様々なサービスへと活用されそうです。
ただ、今後のVRのトレンドを考えると、今回ご紹介した医療などにおける技術・教育の革新にこそ、その余地が広く残されているといえるでしょう。VRは充実した娯楽を提供するだけでなく、人々の健康を根本から支える力を秘めています。
今しばらくはそれを見守るしかありませんが、医療の明るい未来の実現は確実に近付いています。VRの医療への進出度を確認する際は、市場規模で見るのではなく、国内外で開かれているコンペティションや、その出展作品を確認されてみてください。