FINANCE

年々増加する外国人患者にどう対応していくか

医療ツーリズム

2017.10.09

中国人富裕層がお客様? 海外から患者を受け入れる「医療ツーリズム」

医療目的で来日している外国人が急増しています。医療機関への受診も兼ねて来日する、いわゆる「医療ツーリズム」と呼ばれるものです。

外務省は2011年から医療滞在を目的としたビザの発給数を公表していますが、2011年は70人だった取得件数が2016年には1,300件を超え、約18倍に なりました。国・地域別で見ると、特に人数が多いのが中国で、全体の8割以上を占めています 。医療目的で外国に渡航するわけですから、主に中国の富裕層が利用しているものと思われます。

実際には医療滞在としてビザを取得しなくても、日本国内で医療機関に受診することは可能なため、正確な人数はさらに多いでしょう。

■2020年には40万人を超える市場規模に

実際に医療機関へ受診した外国人の人数についてのデータはありませんが、経済産業省が国内の医療機関を対象に、外国人患者の受け入れアンケートを実施し、外国人患者の受け入れ人数を推計したところ、2011年度には約2万2,000人が日本の医療機関を利用していると見られます。

医療滞在ビザの発給がわずか70件だった2011年時点で2万2,000人が受診していたわけですから、さまざまな要因を考慮せずに単純に18倍すると、2016年時点で約39万人が日本の医療機関で受診している可能性があることになります。

日本政策投資銀行は、2020年時点での医療ツーリズムの需要が約43万人に達すると指摘しています。同行はまた、医療ツーリズムの潜在的市場規模は2020年には医療のみで1,681億円、医療を受ける前後の観光も含めると5,507億円の市場規模になると予測しています。

■「外国人患者受入れ」に関する認証制度を取る医療機関も

医療機関はそれぞれ、独自に文化や言葉が異なる外国人患者の受け入れに対応する必要があります。積極的に受け入れ態勢をつくることで、人口減の中でも利用者数を維持できる可能性もありそうです。

日本医療教育財団は、外国人患者受入れ医療機関認証制度を実施しています。 医療機関がこの認証を受けることができれば、外国人患者の受け入れ体制が整っている施設であると認められる事になります。積極的な受け入れを考えたい医院は検討してもいいでしょう。

しかし、たとえ認証を受けても、医療機関にはさまざまな苦労があります。

まず、言語の問題です。患者へ渡す書類はもちろんのこと、施設内のさまざまな案内表示も外国人患者に対応させる必要があります。医療機関のWebサイトでも、英語はもちろん、中国語や韓国語など多言語への対応が欠かせません。

病院食にも配慮が必要です。イスラム教徒など豚肉やアルコールの摂取が禁止されているケースもあります。外国人患者受け入れ医療機関の認証を受けた国立国際医療研究センターでは、信仰上の理由などで口にしないものがあるか、英語の質問票を渡して、○か×を記入してもらう形式で聞いているそうです。

またイスラム教患者のために「ハラルフード」を用意し、間違えて提供しないよう、トレーの色を変えるなど徹底した対応をしているようです。その他 、ベジタリアンへの対応や宗教上の配慮として礼拝堂を設置する医療機関などもあります。

言葉や食事に限らず、異文化で生まれ育った外国人を受け入れるにはたくさんの苦労もあるはずです。実際、2017年9月現在、外国人患者受入れ医療機関認証制度の認証を取得しているのは29機関しかありません。

しかし、東京都は、管轄する14の医療機関すべてで認証を目指す方針を示しています。 2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、政府は今以上に多くの外国人を誘致しようとしています。せっかく日本を訪れるなら、高い技術力をもった医療サービスもあわせて受けようと考える外国人が増えてもおかしくありません。

既に外国人を診ることがあるという先生方もいらっしゃるでしょうし、そうでない方も、医院に外国人患者がやって来る日は近いかもしれません。今後更に増えていくことが予想されている外国人患者にどのように対応するのか。国の動きを見ていると、事前にきちんと対応策を決めておく必要がありそうです。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部