開業医のミカタ

個人の税金を考える上で押さえておくべきポイント

2019.12.10

年度末直前!今年の税金が気になる方に節税の見るべきポイントを解説!

12月に入り、今年も確定申告の時期がやってきます。個人事業の方であれば年度末のタイミングに当たるため、今年度の納税額が気になられている方も多いのではないでしょうか。そこで今回の開業医のミカタは、個人の税金を考える上で押さえておくべきポイントなど、年内駆け込みで節税を検討される方に役立つ情報をお届けします。

所得税の節税に効果的な4つの手法

①所得の受け取り方を工夫する

 所得税・住民税、相続税、贈与税と個人にかかる税金はどれも最高で55%の税金がかかるのに対して(ただし、贈与税は近年非課税枠が数多く設けられています)、法人税は利益が多く出ても1/3程度が法人の実効税率の上限となるため、個人で所得税などを払うより、税率が低い法人税として支払った方が節税の観点からは有利になります。
 また、所得を分散することができれば、トータルで支払うべき税金は安くなります。例えば、開業医の方であれば、ご家族に専従者給与や役員報酬を支払ったり、勤務医の方であれば、副業などで会社を立ち上げ、その中で家族に給与を支払ったり、経費を出したり、法人に利益を残すことで、個人で受け取る所得を抑え、税金を上手にコントロールされている方も多くいらっしゃいます。
 このように、所得の受け取り方1つで、納めるべき税金の金額は大きく変わりますので、極めて節税効果は高いと言えるでしょう。

②控除枠をフル活用する

 確定申告時期になると、皆様も、生命保険控除の用紙や医療費の領収書、ふるさと納税の寄付証明書を準備される方が多いかと思います。そのような、公的な制度を活用して、控除枠をフル活用することができているか否かだけでも納税額は大きく変わってきます。
 代表的なものでは、小規模企業共済や倒産防止共済、確定拠出年金、マイホームローン、生命保険、医療費などが挙げられます。これらの制度や共済を活用することで税金として払うはずだったものの一部を資産として残していくことが可能となりますので、ぜひ検討してみてください。

③経費枠を活用する

 個人開業医や、法人経営者の場合は、事業経費をマネージメントすることで所得として受け取る金額をコントロールされているかと思います。
 勤務医の方でも、法人を作る以外にも、リース業や不動産賃貸業など副業として何らかの事業を行うことで経費枠の活用が可能になります。ただこの方法は税理士やその他専門家の意見も取り入れながら行わないと税務調査や事業損失が出るリスクなどがありますので、ご自身の環境や資産状況ほかをしっかり分析してから検討されることをお勧めします。

④減価償却費を計画的に計上する

 開業医の皆様であれば、医院の建物や設備等で減価償却費を計上されているかと思います。減価償却はものによって、償却する年数が決められていますが、この減価償却費を上手にコントロールすることができると、非常に大きな節税効果を得られるでしょう。
 勤務医など給与所得者でも減価償却費の計上を可能にする事業に、少し前に流行した太陽光発電事業がありますので、それを例に減価償却の仕組みについてお伝えします。
 太陽光発電事業が流行した背景には、この減価償却費を効率的に計上する制度が設けられたことがありました。民主党に政権が変わった時に施工されたグリーン投資減税の即時償却制度(平成27年3月31日で終了)では上記年次までに購入した太陽光発電に関してはパネル設備部分を買った年次で全額償却してよいという優遇制度が存在していたのです(その他にも特別償却や税額控除も選べました)。
 太陽光パネルは本来であれば17年かけて償却していくものであるため、例えばその価格が3,400万円だと仮定すると、毎年200万円ずつ経費計上するため、節税効果は最大でも年間100万円程度です。当該制度を利用して3,400万円分を一気に経費に出すことで、その分だけ利益を圧縮でき、短期的に1,000万円以上の節税効果が得られたため、高収入の医師や経営者、及び中小規模の企業に大流行したのです。その他にも当時は売電価格が高く設定され、利回りが他の収益事業と比べて高いものであったことも理由として挙げられます。

減価償却資産を活用する際の注意点

 太陽光発電事業の事例のように、減価償却を伴う事業や商品を上手に活用すると短期的に大きな節税効果が得られます。しかし経費となるからといって不必要なものを購入したり、先行きが不透明なものに投資をするなどということは長期的な視点で見るとお勧めできません。
①商品の信頼性
②償却年数と償却方法
③利回りと資金回収の目処を立てられるかどうか
 単に、その年にどの程度節税できるのかのみを見るのではなく、上記の3点も踏まえて、本当に必要なものかどうかをしっかりと検討しましょう。そして長期資金計画や経営計画とも照らし合わせて、ライフプラン上無理がなく運用していけるようであれば、皆様の税金をコントロールするための良き手段となるのではないでしょうか。

まとめ

 そもそも納税は義務ですので過度な対策や複雑なスキームを活用してまで節税するかは賛否あると思います。しかし長期的な視点で見ると、個人でも法人でも、一番大きな支出は税金であると言っても過言ではありません。そんな税金をコントロールして上手に付き合い、必要なヒト・モノ・カネに投資をして豊かな経営体制や人生設計に落とし込むことは非常に重要なファクターだと思います。
 皆様も是非タックスコントロールをしっかりされて、豊かな人生を築いていっていただければと思います。

■プロフィール
山下 晃司(やました こうじ)

シニアコンサルタント。500件以上の医師のコンサルティング実績を誇る。資産形成プランニング、ライフプランニング、財務改善、リタイア・相続プランニングなど医師の人生設計のワンストップ・プラットフォームサービスを手掛けている。

 

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