マネジメント

医院経営に役立つマキアヴェッリの言葉

2020.12.15

マキアヴェッリに学ぶ医院経営者のあり方

塩野七生著『マキアヴェッリ語録』は、イタリア・フィレンツェ共和国の軍事・外交担当者だったマキアヴェッリが、メディチ家の台頭により失脚した後に書いた『君主論』などの本から、重要な項目を抜粋し、「君主篇」・「国家篇」・「人間篇」の3つの章にまとめた書籍です。
マキアヴェッリは『君主論』をメディチ家にプレゼントすることで、メディチ家の政治顧問として返り咲きます。しかし、メディチ家の追放により、再び職を失い、ローマ教皇には「異端の書」とされ、18世紀の終わりまで『君主論』が脚光を浴びることはありませんでした。
マキアヴェッリズムという言葉の由来にもなっているマキアヴェッリの思想は、目的のためには手段を選ばない冷酷なイメージもありますが、組織の利益や存続を図る上で重要なことを教えてくれます。
今回は、『マキアヴェッリ語録』から、経営者である院長先生方の参考になる言葉をピックアップし、その活用方法について例を交えながらご紹介します。

<医院経営に役立つマキアヴェッリの言葉>

・君主たる者、ケチだという評判を恐れてはならない

医院を経営していく上で、今回の新型コロナウィルスのように、何かイレギュラーなことが起きる可能性も考えられます。そんな時でも困らないよう、なるべく手元にお金を残しておく工夫をすることは大切です。
例えば、医療機器にはお金をかけても(その場合も、相場をチェックするなどして、なるべく安く仕入れる)、近距離ならばタクシーや車は使わずに歩いたり、文房具などの備品は相見積もりをとるなどして最安値の取引先から仕入れたり、医薬品の消費期限を表などで管理して在庫を無駄にしないようにしたりするなど、公私混同せずコスト意識を身に付けることは、医院を経営する上で大切なポイントと言えるでしょう。
トップが率先して行動すれば、スタッフも「院長が節約しているのだから」と、自然と従うようになるはずです。

・結果さえよければ、手段は常に正当化される

人は悪者にはなりたくないものですが、マキアヴェッリは公共の利益を優先させるためには非常手段を用いても非難されるべきではないと主張しています。
例えば、医院の経営が立ち行かなくなった場合に、人員を削減したりすることで医院経営の安定化を図ることなどは、この例に当てはまるでしょう。
その場合も、可能な限り、解雇した人の再就職先をあっせんする、または、退職金を通常よりも多く出すなど、病院の評判を落としたり、退職者に恨みを買ったりするリスクを減らすことができる方法はいくつか存在します。

・金銭で傭(やと)うことによって成り立つ傭兵(ようへい)制度が、なぜ役立たないか、の問題だが

医院で直接雇用するのではなく、経費を削減しようと事務や受付の職員を派遣してもらう場合には、自分たちの病院だという思い入れの強さや忠誠心が弱いので、何かあったらすぐにやめてしまったり、給料以上の仕事をしてくれなかったりする可能性が考えられます。もし、直接雇用のスタッフとそうでないスタッフの間で、勤続年数や勤務態度に大きな差が生まれているようであれば、雇用形態の見直しを検討することにより、状況が改善する可能性が考えられます。

<職員をマネジメントする際に役立つマキアヴェッリの言葉>

・人間というものは、自分を守ってくれなかったり、誤りを質(ただ)す力もないものに対して、忠誠であることはできない

業務上のトラブルやクレームが起こった場合など、頭ごなしにってしまうと、反感を買い、今後注意しても、耳を貸してくれなくなる可能性が生まれます。スタッフがトラブルを起こしてしまった場合には、なぜ起こしてしまったのか、同じようなことを繰り返さないためにはどうすればよいのかを一緒に考え、必要であれば一緒に謝罪するなど、スタッフを助けることも大切です。

・君主にとっての最大の悪徳は、憎しみを買うことと軽蔑されることである

もし、誰かが失敗をしたとしても、みんなの前で注意して、その人のメンツをつぶさないようにします。ほめる時も、みんなの前は避けたほうが良いでしょう。そうすれば、他の職員が、ほめられた人を嫉妬することもなくなるでしょう。

・へつらいおもねる者たちから、どのようにすれば逃れられるか

医療関係者や業者など、院長には耳ざわりのいい話しかしない方もいるかもしれませんが、気分を害して評価を下げたくなかったり、利益を上げたかったりするために、本音を語っていない可能性もあります。
マキアヴェッリは、他の人の意見を聞きつつも、最終的な判断は自分で行い、その実現も自分で行うことの重要性も語っています。そうすれば、有言実行が認められ、職員からの信頼も得られるはずです。

まとめ

性悪説に基づいたマキアヴェッリの思想は、性善説を良しとする日本人には受け入れがたい部分もあるかもしれませんが、実用的なため、約500年経っても、多くの政治家や経営者がこれを手本としています。感情よりも理性を重視したマキアヴェッリの考え方に触れることで、経営者やリーダーとして、客観的かつ大局的に物事を判断する力が身に付きます。『マキアヴェッリ語録』には、他にも参考になる言葉がたくさん掲載されていますので、機会がありましたら、ぜひ目を通してみてください。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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