マネジメント

統計結果を従業員満足度の向上に役立てよう

2020.11.30

最新の勤労統計調査から考える従業員の働き方

開業医の皆様の中には、従業員の働き方(労働環境)に頭を悩ませていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
今回は、厚生労働省が取りまとめる統計「勤労統計調査」から、経営者(開業医)が考えるべきポイントや具体策などについてお伝えします。労働環境(従業員満足度)のより一層の向上のため本稿をご活用ください。

毎月勤労統計調査の概要

そもそも「毎月勤労統計調査」とは賃金や労働時間の把握、そしてそれらの変動を把握するため、統計法に基づいて行われる基幹統計調査で、非常に重要な統計として位置づけられており、景気判断、政策決定の指針としても用いられています。調査の対象は「常時5人以上を雇用する事業所」ですので、たとえば常時5人未満を雇用されている開業医の方の場合、「現金給与総額」などの調査項目の結果数値について前提が異なる場合があります。

勤労統計調査結果(令和2年8月調査分)

※上段が産業全体、下段が医療・福祉産業の数値です。

考慮すべきポイント1:給与

大前提として、本統計は「医療・福祉産業」で括られているため、上記数値は、福祉産業に従事する労働者の影響も受けています。
医療・福祉産業の所定内給与は、産業全体に対しやや高めです。しかし所定内労働時間が8時間ほど多いなかで6,500円ほどしか差をつけていません。これは「医療・福祉産業に従事する一般労働者は、産業全体と比較し時間あたり給与が低い」ことを意味します。
一般的に、医師・歯科医師の方の給与は高めに設定されている医院が多いため、それ以外のスタッフ(看護士や歯科衛生士、助手等)の時間あたり給与が一般労働者と比較して低い可能性が考えられます。
もし、なかなか良いスタッフが集まらない、定着しないと感じていらっしゃる方は、平均値と比較しつつ、労働時間あたりの給与額を再検討されてみてはいかがでしょうか。

考慮すべきポイント2:労働時間

労働時間において、医療・福祉産業の結果は産業全体と比べ大きな差はなく、所定外労働時間が半値程度であることが特徴と言えます。ワークライフバランスの観点からは所定外労働時間は少ないことが望まれます。その点においては医療・福祉産業としては良好な結果だといえるでしょう。しかし、最近は土日や夜遅くまで診療されている医院も増えています。ご自身の事業所における値がこの統計結果から大きく乖離しているようであれば、従業員を増やして休みを取りやすくするなどの施策の検討が望まれます。

考慮すべきポイント3:入職率・離職率

医療・福祉産業における入職率・離職率は、産業全体と比較して入職率も退職率も低いため、「従業員の定着率が高めである」といえます。雇用・人材育成の観点からは入職率が低い点を考慮しなければなりません。なぜなら一定のスキル・経験が求められる職においては安定した新規受入れが望まれるためです。離職率が低い点に頼りすぎてしまうと、従業員の高齢化が懸念されます。もちろんご自身の医院の状況にもよりますが、長期にわたって弾力ある経営を行うためには、入職率をどう向上させるか考える必要があるでしょう。

まとめ

労働に関する主要項目の結果に関し、ご自身の医院はどのような位置にあったでしょうか。
勤労統計調査は、毎月、結果が更新されます。本稿では主に単月の結果を基にして給与や労働時間、入職率・退職率といったポイントをご紹介しましたが、これらは絶対的ではなく過去からの相対的な変化を見ても非常に面白いのではないかと思います。本稿により、開業医の方がご自身の医院の労働環境を考えるきっかけ、または経営判断の目安となれば幸いです。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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