差別化を図り勝ち続ける方法とは!?
2020.11.20
競合他社に負けない!Netflixの勝利の方程式
「不可能を可能にせよ!NETFLIX 成功の流儀」は、創業者で初代CEOだったマーク・ランドルフによる創業記という点で一読の価値があり、経済ジャーナリストの手がけた「NETFLIX コンテンツ帝国の野望」も、経営マネジメントのケーススタディとして参考になる一冊です。
今回は、これらの書籍から垣間見えるNetflixの歴史や企業文化についてご紹介します。熾烈な競争に勝つヒントとしてお役立てください。
サブスクリプションが生まれた背景
Netflixの強みは、「絶対にうまくいかない」と酷評されても、最終的にニッチ市場を開拓しライバル企業との競争に勝利をおさめている点です。それができた理由は、①新規市場を開拓したこと②新規市場のパイオニアになったこと③参入障壁の高いサービスをどこよりも早く作ったことの3つと考えられています。
Netflixの創業ストーリー
1998年4月14日、NetflixのオンラインDVD宅配レンタル事業はスタートしました。これは、オンラインで書籍を販売しはじめたAmazonにインスパイアされた、映画のDVDを取り扱う事業でしたが、当時はVHSビデオテープを店舗でレンタルするのが一般的でした。しかもDVDプレーヤー自体も、Netflix創業の1年前に試験発売されたばかりというタイミング。DVDは最先端すぎる商品だったのです。
創業当時のNetflixは、DVDレンタルと販売の両方を手がけていました。予想に反して、消費者はDVD購入に傾いていました。お気に入りの映画を手元に確保しておきたい、といった意識が強かったのでしょう。その結果、レンタル事業はNetflix事業売上のたった3%にすぎませんでした。そのような状況のなか、AmazonがNetflixのDVD販売部門の買収に乗り出したのです。
売上の大半を占めるDVD販売事業をやめた
Netflixは、Amazonが提示したあまりにも安い買収額にショックを受け、買収話には乗りませんでした。そのかわり、AmazonがDVD販売を始めるなら勝ち目はないと見切りをつけ、レンタル事業のみに専念する方向で舵をきったのです。
そして、DVDレンタル部門を成功させるために、競合と差別化をはかる画期的なサービスを構築しました。それは、①翌日配達②延滞料金なしのサブスク③独自のアルゴリズム「シネマッチ」導入の3点です。
DVDレンタル事業の勝利の方程式
翌日配達は熱狂的なNetflixファンをうみ、新規の口コミ客を急増させました。ただし、洗練された物流ネットワークを必要としたため、郵便局の配達エリアごとに物流センターを設置しサービス提供可能な地域を拡大していきました。
さらに、当時の商習慣からすると荒唐無稽にさえみえるサブスクを生みだします。これは1カ月の定額料金を払えば、1度に4本までレンタルでき、返却期限を心配せず(返却後に次のDVDをレンタル可能)じっくり鑑賞できるというものです。さらにNetflixはサブスクの「やめやすさ」も提供したため、簡単にキャンセルできる安心感から顧客は拡大しました。顧客の離脱はツライですが、キャンセル時に離反理由を収集できます。離反理由から競合よりいち早くサービスを強化できるというわけです。
おすすめ映画を提案するレコメンドエンジン「シネマッチ」は、「旧作」映画の回転率を上げる目的で実装されました。シネマッチのおかげで、Netflixは、コスト高な新作に依存していません。実際に2006年10月には、既存の「シネマッチ」の精度を2011年までに10%以上向上させたチームは賞金100万ドルを獲得できる「Netflix Prize」を開催。このことから、Netflixの成功のために「シネマッチ」は必要不可欠だとわかります。
Netflixが力を入れる独自の企業文化
2000年にドットコムバブルが崩壊したことから、身売りを画策するほど追いつめられたNetflixはついにレイオフに踏み切りました。Netflixによる身売りや提携の提案を一蹴したビデオレンタル界の雄「ブロックバスター」が、後に競合相手として死闘を繰り広げたあげく内紛で自滅した経緯は、「NETFLIX コンテンツ帝国の野望」に詳しく書かれています。
このレイオフはNetflixにとって辛酸をなめる経験でしたが、逆境を逆手にとって組織をスリム化し少数精鋭体制を整えたのです。業界ナンバーワンの座を守り続けるために、Netflixメンバーに求められる要件を改定するなど、Netflixは企業文化の維持・向上を重視しています。ここで注目したい3つの要素を紹介しましょう。
それは、①自主的な意識決定②有能な人材のみを選ぶ③正直な情報共有の徹底の3つです。
自由とともに責任も重視された、最新の要件が公式サイトのNetflix Culture内に紹介されています。2009年に公開されたオリジナル版では「Brilliant jerk」について言及されており、これは「有能な人材」にまつわる定義のひとつです。「Brilliant jerk」は、明らかに優秀な存在ですが不愉快な人のこと。効率的なチームワークを崩壊させる原因になるため容認できないと明記されています。
Netflixメンバーに求められる要件は、FacebookのCOO、シェリル・サンドバーグも賛辞を贈るほど、組織が硬直しないためのヒントばかりですので、ぜひお役立てください。
まとめ
今回は、独自コンテンツを制作するなど勢いがとまらないNetflixの歴史や企業文化をご紹介しました。創業時のストーリーは、創業者ならではの実体験がつづられており、臨場感を味わえる内容です。諦めない、たゆまない努力の成果として現在のNetflixが存在することがよくわかります。第三者の経済ジャーナリストによって、客観的に執筆された書籍と比較しながら読み進めると、競争に勝つヒントをより深く理解できるのではないでしょうか。