医院経営にも情報の力を!スタッフの士気が上がる人間力とは?
2020.03.05
データを駆使した情報戦で必勝法を編み出す!野村克也のID野球に学ぶ医院経営
病院の経営において、様々な数字が出てくることに頭を悩ませている医院経営者の方は多く、治療に関する数値と違って、経営に関する数字が苦手だというドクターも意外と多いのではないでしょうか?
野球選手として、三冠王など輝かしい成績を残し、監督としても様々な球団を渡り歩き大活躍した野村克也氏が今年2月11日に亡くなりました。
今回は、野村克也氏の追悼企画として、同氏の生き方と「ID野球」に学ぶ病院経営についてお伝えします。
ノムさんの愛称で親しまれた野村克也氏、選手としてのスタートは順風満帆でなかった
野村克也氏は、選手時代はキャッチャーとしてチームの守備をリードし、打者としては、打率、本塁打数、打点すべてにおいて年間最多となる記録を出した「三冠王」に輝いた一流選手で、監督としての印象が強い人も多いと思いますが、選手としても記録を残しています。
しかし、プロ野球選手といえば、甲子園などのアマチュアで特筆すべき成績をあげてプロ入りするような選手が多い中、意外にも野村氏は入団テストで当時の南海ホークスに入団した選手でした。さらにプロ入り直後は成績も悪く、常に戦力外通告と隣り合わせだったようで、その後の大きな成績を残すなどと当時誰も考えていなかったと言われています。
そんな状況を自分の手で変えようと、様々なトレーニングを行い、基礎を作り、頭角を現し始めます。打撃面において、どうしても打てない投手が現れた際に野村氏が考えた戦略は、投手の投球フォームをカメラで撮影を行い、投げ方の癖を研究し、対策を考えるというものでした。また、守備面においても、キャッチャーとしてサインを送る際に、過去のスコアを参考に、打者がカウントによって、どの球種であればストライクでも見逃すかといったことを徹底的に研究し、打者をキャッチャーとして抑える研究を行いました。このように、過去のデータから、相手を負かすための戦略を考える野村氏の野球は、監督になってからも「ID野球」としてその地位を確立したのです。
監督時代には、選手から慕われる人間力を発揮
スター選手の中から名誉職のよう形で、球団監督に就任することが多い中、野村氏はヤクルトや阪神、楽天など様々な球団からの監督のオファーがあった「プロ監督」でありました。
監督になると、試合に勝つこと以外にも選手のケアや、年毎の選手の評価やどういった布陣で試合に臨むかなど、管理職の人事のようなことも考えなければなりません。勘を頼りに天性の才能で野球をしてきた選手にとっては舞台が変わってしまうと言っても過言ではないでしょう。「優れた選手は優れた監督になるとは限らない」と言われている球界でも、野村氏は特異な存在であったと考えられます。
野村氏が選手、監督時代を通して行ってきたことは、相手の出方を徹底的に分析して、対策を考えるということでした。どうみても力では劣勢だったチームと試合を行う時も、必ず相手チームには弱点があるということを選手一人一人が理解し、勝てる可能性が少しでもあるということを理解してから試合に臨むため、選手の士気も上がったといいます。野村氏は、監督をしていないチームの選手や、過去に監督だったチームの選手からも慕われていたと言われており、実際に多くの選手を監督時代に育成し、その後大きな成績を残した選手もいます。
ただ、データを駆使し必勝法を編み出す「ID野球」だけでなく、野村氏自身が人間的な魅力にあふれ、周囲に対して気を配る細やかさなども含めて「名将」と言われている所以ではないでしょうか。野村克也氏には、多くのエピソードがあり、亡くなった後も多くの人を惹きつける魅力があるのです。
医院経営にも情報の力を!スタッフの士気が上がる人間力を!
野村克也氏の軌跡をたどると、スポーツの世界でデータに基づく戦略を組むという今のビジネスではよく用いられている手法をいち早く取り入れた草分け的な存在だったことがわかります。そのきっかけとなったのは、プロ入り当初の劣等感からとも分析ができます。
医院経営においても、うまくいくことばかりではないでしょう。困難に陥り八方ふさがりの状態で、どのような打開策を打ち出すべきかと悩んだ経験をお持ちの方もいらっしゃることでしょう。
スポーツの世界では、今でこそスポーツ科学による成績向上が常識ですが、野村氏が選手として活躍していた時代は、練習と根性が全面に出て、知力は二の次だった時代です。そんな中、常識にとらわれずに全く別ものを取り入れたことで、大きな成果を上げたのです。
医院経営でも、様々な数字が出てきますが、それらを活用することで思いもよらない経営改善が見込める場合があります。医療とお金儲けは違うと考えられている方もいらっしゃるかと思いますが、病院経営が困難になって医療が行き渡らない状態となると困ってしまう人はたくさんいます。そのためにも、経営面の数字やデータを分析し、経営に生かすことは重要となるのです。
しかし、データの分析による結果で医院運営を行おうとしても、最初からスタッフ全員がその意図を理解してついてきてくれるとは限りませんし、データ分析結果がどれだけ正しくても、無茶なことを言っていては疲弊を生む場合もあるでしょう。
要は、現状を理解し、データ分析の結果を分かりやすく伝えたり、スタッフの心配事などに真剣に耳を傾けたりする姿勢も重要となります。データ分析などはAIでもできますが、こうしたものは人間でないとできない部分にもなります。
野村克也氏の生き方に、医院の経営やスタッフのまとめ方のヒントがあるのではないでしょうか。