マネジメント

限られたリソースの中で、効果的な経営をするために必要なこと

2019.10.27

開業医の兵法書〜孫子から学ぶマネジメント論〜

開業医の皆様の中には、ご自身で診療も、経営も行なっていかなければならないため、特に学校で教わることの少ない経営面のお悩みを抱えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
今回は中国に約2500年も前から伝わる兵法書『孫子』の教えを基に、最大限に人を動かし、最高の結果を生み出すために押さえておきたいポイントについてお伝えします。

経営者と従業員の志を同じくする

孫子は、戦争の大筋を掴むには「五事(5つの基本原則)」が必要であると説いています。
この五事とは、道(理念・道理)、天(天候・季節)、地(地形)、将(将軍)、法(ルール)を指し、これを現代のマネジメント論に当てはめると、経営者と従業員が同じ目的を持っているか、時代背景や市場を捉えて有利に戦えているか、経営者の人格や社内ルール及び人事は適切かと言い換えることができます。
その1つである『道』を制するために必要となるのが、MVPです。これは、Most Valuable Playerの略ではなく、ミッション(Mission)バリュー(Vision)パッション(Passion)の頭文字を取った、会社の存在意義について説明する言葉です。
これらを浸透させることの最大の目的は、組織の方向性を1つにすること、そしてそれらに従って物事を判断できるようになることです。反対にこれが一致しない人を雇用した場合、途中で意見の齟齬が発生して辞めてしまったり、対立を生む原因になってしまったりすることもよくあります。対立が起こってしまった時に、まず対話をして同じ方向を向けるようにすることももちろん大切なのですが、採用面接の際などに、予め院長先生ご自身のMVPをきちんと伝えておくことも、経営者とスタッフが同じ方向を目指して歩んでいくためにはとても重要です。
皆様は、ご自身や医院が目指す方向を従業員の方ときちんと共有できていますか?

情報収集・分析は医院経営の要

孫子は「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」と言っています。
これを現代の医院経営に当てはめて言い換えると、競合する医院や潜在患者のニーズを分析し、自分の医院を改善することで、安定的な医院経営につながるとなります。競合分析を行うことで、自身の経営する医院に足りないこと、逆に他院より優れている点が明確になるためです。さらに、地域の需要を正確に読み解くことによって、医院に求められることを知ることもできます。
孫子の兵法の用間篇でも、「因間・内間・反間・死間・生間」という、間者(=スパイ)を利用して、情報収集を行うことの重要性が記されています。(死間とは、嘘の情報を流すことで、効果を得る間者ですが、言葉の通り、バレると死ぬ可能性が高い、命がけの仕事です。)
現代で、嘘の情報を流すことは、景品表示法違反となるので避けねばなりませんが、根拠のある情報を用いて、自院が他院に比べて優れている点を示すことは、医院のブランド力向上につながり、さらに従業員の士気向上、顧客の獲得に繋がるのです。
また、情報収集にそれだけの価値があることは今も昔も変わりません。一般企業が宣伝広告費に費用をかけ、自社のサービスをまだ知らない人に知ってもらうべく、様々な活動を行っているのもこのためです。
分析によってわかった自院の強みや地域の需要を従業員と共有し、医院全体として強みを打ち出していくことが重要なのです。

戦わずにして勝つ

ここまでは、孫子の兵法の考えを用いた勝ち方についてお伝えしましたが、孫子は、戦わずして勝つことが最も良いと説いています。
これを医院経営に当てはめて考えると、他院と同じ土俵で戦うと、価格競争に巻き込まれたり、必要以上に広告宣伝費がかかってしまったりと、たとえその競争に勝てたとしても自身も痛手を負う可能性があるため、ご自身の医院ならではの価値を見出し、競合のない市場を開拓し、他院と戦わずに勝つ方法を模索することが大切であると言い換えることができます。
もし、他院との競争により、ご自身や従業員が疲弊してしまっていることがあれば、競合の強み、自院の強み、そして地域のニーズを改めて分析し、戦わずして勝てるご自身にとってのブルーオーシャンがないか、一度立ち止まって考えてみてください。

まとめ

医院経営に悩まれている開業医の方は多いですが、経営は院長先生のみが行なわなければならないことではありません。院長先生のみで経営に関する課題を抱え込むのではなく、従業員の方々と考えを同じくし、協同して医院経営に当たることで、予想外に大きな力が発揮できることもよくあります。
『孫子』は戦争に関する中国の古典ですが、今回お伝えしたように、現代のマネジメント理論に通ずる点が数多く存在します。古くからの教えを皆様の医院経営にお役立てください。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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