マネジメント

セブン-イレブンの快進撃は鈴木敏文元社長の心理学にあった

2018.06.20

セブン-イレブンの鈴木敏文元社長に学ぶ経営論

セブン-イレブンの鈴木敏文元社長の経営は、連戦連勝、向かうところ敵なしでした。あまり知られていないことですが、その後の流通業界に大きい影響を与えた偉大な経営者です。
今回はセブン-イレブンの元社長である鈴木敏文氏の経営論をご紹介します。

連戦連勝の秘訣は心理学にあり

鈴木氏はしばしばインタビューなどで、成功の理由は心理学にあると語っており、その発言からも鈴木氏が心理学をいかに重視していたかが分かります。
例えば、消費の冷え込みと一世帯あたりの貯蓄額を見て、貯蓄はあるのに物を買わないのは経済学の問題ではなく、心理学の問題であるという結論を導き出し、以下のように述べています。
「今、消費者の心理をどう捉え、どう対応すべきか、という問題を解明することが、経営の最大のテーマとなっている。企業の存続はひとえに長期的に消費者の支持が得られるかどうかにかっている。そうであるなら、消費者の心理を経営の要にすえてものをつくったり卸したり販売することは避けて通れない。それを実直にやり通してこそ、ビジネスチャンスが生まれる。」

【エピソード】 新製品開発の定石破り

セブン-イレブンは新製品開発の多さに特徴があります。同著書には、約2800の品ぞろえのうち、1年に7割が入れ替えになると記されています。新製品開発にはコストがかかるため、よほどの自信がなければ商品の入れ替えは避けたいものです。しかし、鈴木セブン-イレブンはこの定石を打ち破り、顧客の嗜好変化をつかむことで、ヒットの確率を上げることができることを証明したのです。こうして、ヒットを重ね、成果を上げることに成功しています。

【エピソード】 おでんは冬の食べ物ではない

また、鈴木セブン-イレブンは、早くからお客さまの心理に焦点を当て、様々な企業活動を行っています。しかも、顕在化している心理をつかむだけでは満足せず、潜在的な欲求にまで光を当て、それをいち早く顕在化して経営に反映してきたのです。
例えば、おでんを夏場でも販売を続けているのも、顧客心理を分析した結果です。過去の常識では、おでんは冬の食べ物であり、夏場には売り上げは落ちると考えられていましたが、鈴木セブン-イレブンはおでんの発売を早めて成果を上げ、この常識を打ち壊したのです。

連戦連勝の秘密

上記のエピソードを実現したのは、統計分析のおかげでした。セブン-イレブンでは、性別・年齢層・時間帯・地域という膨大なデータを持っていたため、そのデータを統計分析して顧客の行動を予測することにより、顧客ニーズを抽出できたのです。統計を使い顧客の心理を掴むというのが鈴木セブン-イレブンの心理学です。この分野を心理学では「心理統計」と呼びます。このように、流通業界でも、様々な条件や売上データを統計処理することで、売上の変化や顧客動向が予測できます。

例えば、気温とアイスクリームの売上の間には相関関係があるのが明らかになっています。気温とアイスクリームの売上についてのデータがあり、これを「回帰分析」という統計処理プログラムを使うことで関係性が明確になります。そうなれば、気温の予報を見るだけで売上が予測でき最適な戦略を立てることができます。
また、顧客の購買動向を抽出する統計処理プログラム(因子分析)もありますので、顧客のニーズ変化や潜在ニーズを明らかにすることができるのです。これらのように、実際のデータに基づいた戦略なので、事業の成功率が高くなるわけです。

鈴木セブン-イレブンでは、このシステム構築のために600億円という巨費を投じたと言われています。今では、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの流通業界でPOS(販売時点情報管理)というレジシステムがポピュラーになっています。これも、鈴木氏のパイオニアとしての貢献があったのです。

医院経営においても、今回ご紹介したような心理統計を用いることにより、事業の成功率が高まります。【夏場のおでん】のような、試さずして無理だろうと思われているものの中にも勝機が見出せるかもしれません。

出典:セブン-イレブン流心理学(国友隆一・知的生きかた文庫、2002.1)

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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