コロナショックは他の経済危機と何が違うのか?
2020.05.25
リーマンショックや東日本大震災以上に大きな経済損失をもたらすパンデミック
新型コロナウイルスによる感染拡大防止を目的とした緊急事態宣言が発表されて以来、先日首都圏や近畿圏の一部を除き解除となりましたが、今後も三密を避けて、不要不急の外出や他県への移動を控える日々が続きそうです。
外出自粛が続くと、経済に与える影響が心配されますが、過去にも流行り病や大規模災害などが原因で、経済に大きな影響が出た例は数多くあります。
今回は、過去の経済的危機の実例と今回のコロナショックとの違いを検証してみましょう。
東日本大震災が発生した際にはどのような経済対策が行われたのか?
2011年3月11日に発生した東日本大震災で、東北地方で甚大な被害があった大規模災害の時にはどのような経済対策が行われたのでしょうか。
東日本大震災は、東北地方に甚大な被害をもたらしましたが、東京や名古屋、西日本などその他地域には直接的な被害がほとんどありませんでした。そのため、全国的に経済活動が完全に停止することはなく、被害のあった地域に集中的な復興措置を行う予算が計上され、被災者の補償に充てられました。物資などに関しても、被害がなかった地域から調達するなど、早期の復旧に向けての動きがありました。東日本大震災の前にも、阪神淡路大震災や関東大震災などで様々な教訓があり、自然災害に対する対応力は各自治体や政府もある程度慣れていた部分があったのでしょう。それでも、東日本大震災での被害は甚大で、2015年までに実施した復興事業の資金をまかなうため、所得税、住民税、法人税の増税分として復興特別税を新たに創設され、その負担は最大で2037年まで徴収が続く予定です。
リーマンショックが経済に与えた影響
2008年9月15日にアメリカの証券会社、リーマンブラザーズの経営破綻によって起こったリーマンショックは、日本においても、景気悪化の原因となりました。派遣切りなどに代表される非正規雇用者の解雇や、新卒者の内定取り消しなど雇用面で大きな不安を巻き起こしたのも皆様の記憶に新しいのではないでしょうか。
この時は、経済対策として国民一人あたり1万2000円の現金支給が行われています。
また、リーマンショック前は輸出が好調で、GDPは伸びていたのですが、リーマンショックを機に輸出産業の伸び悩みが始まったとも言われています。輸出を伸ばそうと、自由貿易を進める政策がとられ、多くの国と貿易協定やTPPなどへの参加を積極的に推進する動きにつながっています。
現在と酷似するスペイン風邪の事例
1918年~1920年に起こったスペイン風邪(インフルエンザ)のパンデミックの事例は、現在の新型コロナウイルスの事例と類似している点が数多く存在します。
スペイン風邪のパンデミックが発生したのは今から100年も前のことですが、外出や集会の自粛や、うがい手洗い、密集を避けるといった、現在と同じような感染防止対策が行われていました。また、現在私達が直面しているのと同じように、当時も、経済を守るか、人命を守るかという選択に迫られています。当時は第一次世界大戦中でしたが、スペイン風邪の大流行で、約2年間のうちに世界人口の3分の1~4分の1程度の人が感染し、スペイン風邪による死亡者が、戦死者の数倍に上ったと言われています。このため、第一次大戦が早期に集結したのではないかという歴史学的な見解もあります。
しかし、パンデミックによる経済の停滞が長期化したことで、第一次大戦の戦勝国が敗戦国に多額の賠償金を請求することにつながり、ドイツではナチス政権を生むきっかけとなり、第二次世界大戦の火種となったとも言われています。
日本では、第一次大戦中は、船舶の提供などで造船事業が繁栄し、成金といった言葉が出るなど、好景気に沸いていましたが、スペイン風邪の流行が始まった1918年には、米騒動が起こるなど、世の中は混乱状態にありました。そんな中でスペイン風邪の流行が始まり、当時は風邪の一種とみられていましたが、死亡者が多いことから学校が休校となるなど、現在とあまり変わらない措置が取られました。
結局スペイン風邪の流行は三度起こり、そのたびに経済活動がストップし、第一次大戦中の好景気は終焉してしまいました。その際の経済対策としては、大学など高等教育機関の拡充、通信や交通のインフラ整備といったマクロ経済対策をメインに公共事業を増やす景気対策が行われました。
リーマンショックや自然災害以上に大きな経済損失をもたらすパンデミック
過去の例を考察すると、リーマンショックのような金融危機や大規模災害などでも、必ず被害を受けていない業種や地域があるのに対して、パンデミックの場合は全世界的に被害が発生しているという違いがあります。
過去のスペイン風邪の例からすると、第二次大戦のきっかけを作るなど、大きな歴史の転換点となる危険性を持っています。その結果からするとリーマンショックや東日本大震災とは比較にならないような経済対策を必要とする可能性も十分に考えられます。
東日本大震災の復興事業の際にも復興特別税が創設され、財源とされたことからも、今回の経済対策による新たな財源確保を理由に増税が行われる可能性は否定できません。
新型コロナウイルスによる経済への影響とその対策については現在も状況が時々刻々と変化しています。
スペイン風邪の流行時も、患者で病院が溢れかえったと言われていますが、今回の流行に際しても当時と同じ状況が世界各地で起こっています。スペイン風邪が流行した当時とは、時代や世界情勢など異なる部分が多くありますので、そのまま当てはめるということはできませんが、新型コロナウイルスによる経済的なショックは、私たちが生きている間で経験する最も大きなものになる可能性は否めません。今後の動向を注意深く見守り、何か動きがあった際には、すぐに動けるよう準備しておきましょう。