ファイナンス

イデコの最新動向を探る~使い勝手の改善を目指すイデコ制度~

2019.12.25

積極活用が図られるイデコの最新動向

2019年6月初頭に、金融庁が人生100年時代の資産形成に関する報告書を公表し際、95老後に夫婦で2,000万円の預貯金の切り崩しが必要になると指摘したことを受け、個人型確定拠出年金(愛称:イデコ)の活用が拡大しています。政府としても、年金プラスアルファの資産形成を図る手段の一つとしてイデコの活用を積極的に促しており、より使い勝手の良い制度への変更を実施および検討している状況です。そこで今回は、イデコを活用した効率的な資産形成を図るべく、同制度に関連した最新動向を解説します。

使い勝手の改善を目指すイデコ制度

イデコ制度を運営する国民年金基金連合会が公表した最新のイデコ加入者状況を確認すると、2019年9月時点で前年同期比32.8%増の約138万人に拡大しています[1]。メディアなどでもイデコの加入者数が100万人を突破したと報道されていますが、同制度の加入対象者全体と比較した割合は依然として低い水準です。そこで、政府としてはイデコを活用する際の利便性を向上させる工夫を矢継ぎ早に打ち出しています。これらの動向を把握することで、実際に加入している人のみならず、これから利用を検討している人にとっても参考になるでしょう。

加入期間の延長が検討されている

確定拠出年金制度を司る厚生労働省では、高齢者が就業する社会情勢を鑑み、現在の60歳までとする加入期間を5年間延長して65歳までとするために、確定拠出年金法の改正に動き出しています。
加入期間が長くなることで、着実ながらも資産形成を実践し、老後資産を拡大させることが期待されています。また、加入期間の見直しと併せて、現行制度では60歳から70歳の間に受け取る仕組みになっている受給開始年齢も変更される見通しです。
たとえば、個人開業医で課税所得が1,000万円の人が、第1号加入者の月額拠出限度額である68,000円を拠出し、5年間加入期間を延ばした場合には、その間の所得税および住民税の税制優遇金額は約175万円、積立総額は約400万円になります。このように、確定拠出年金は、税制メリットを享受しながら老後の資産を手厚くする効率的な資産形成手法なのです。
なお、厚生労働省は、2020年の通常国会で改正案の提出を目指す意向であり、正式に制度が改正されれば、加入者の運用方針や具体的な投資商品にも影響を与えると考えられ、今後も動向を捉えていく必要があるといえるでしょう。

WEB完結で申し込めるように

現在はイデコに加入申し込みする際には、紙ベースで申込書を作成し、本人確認書類と併せて金融機関へ郵送しなければなりませんが、手続きの簡素化を図ることでイデコへの加入を促すべく、2021年度にもインターネットで加入手続きを完結できる仕組みを導入する見通しです。

中小事業主掛金納付制度(愛称:イデコプラス)がスタート

2018年5月から中小事業主掛金納付制度(愛称:イデコプラス)がスタートしました。厚生労働省は企業型確定拠出年金(略称:企業型DC)のみならず、イデコの積極活用を促すべく、企業年金(企業型確定拠出年金や確定給付年金、厚生年金基金など)を実施していない従業員数が100名以下の中小企業を対象に、イデコに加入する従業員の掛け金に上乗せする形で、企業も掛け金を拠出することができる仕組みであるイデコプラスを導入しました。
同制度は、事業主掛金の全額を損金算入とすることができるため、企業年金のない中小規模の法人にとっては、節税しながら会社の福利厚生を充実化させる2重の効果を発揮させることが可能です。また、従業員への福利厚生を充実させることで、優秀なスタッフの採用にも寄与すると考えられます。さらに、加入者掛け金と合算して月額5,000円から23,000円の範囲内で事業主も掛け金を拠出することが可能であり、掛金の算定方法も対象者全員に同額を拠出することも、職種や勤続期間などに応じて掛金額に差を持たせることもできる一方で、イデコへの加入を希望しない従業員に対して加入を強制することのない柔軟な制度設計が可能です。

貯蓄に頼らずゆとりある老後生活を送るために

世界の政財界の要人が集うダボス会議を運営するスイス拠点のシンクタンクである世界経済フォーラムは、日本が貯蓄に頼る生活を強いられる期間が15年から20年にもおよぶと指摘する報告書を公表しています。現状のままでは公的年金だけでは厳しい老後生活を余儀なくされるため、若年層からの資産形成の必要性が高まっているのです。
このような市場環境下において、イデコの掛け金で運用する金融商品を投資信託に限定したサービスを提供する銀行や証券会社が散見され始めました。ゆとりある老後生活を送るために、長期におよぶ積み立て投資を後押しする動きが出てきている状況です。

まとめ

今回は、イデコの最新動向を解説してきましたが、制度の積極活用を促すべくイデコの仕組みが今後も改善される見通しです。医師の先生方も、加入者期間の延長や受給期間の変更など、イデコを通じて投資の拡大を図るための新たな動向を踏まえ、同制度を積極活用した老後の資産形成を検討されてみてはいかがでしょうか。

出典
[1] 国民年金基金連合会
https://www.ideco-koushiki.jp/library/pdf/join_overview_R0109.pdf

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
458件の開業医を成功に導いた成功事例集