ファイナンス

未だ困難とされる医療とブロックチェーンの融合を目指す

2019.08.24

東大病院とクリプタクトが連携し、医療画像流通システム構築へ

2019年7月末、東京大学医学部附属病院(以下、東大病院)とブロックチェーン事業を展開する株式会社クリプタクトが連携し、『ICT活用による医療画像データ流通システムの構築』に関するプロジェクトの実現を目指すことが発表されました。
今回は東大病院とクリプタクトの計画や医療とブロックチェーンの未来について、少し掘り下げてご紹介します。

東大病院とクリプタクトのプロジェクトが目指す未来とは?

東大病院とクリプタクトが実現を目指すのは、医療画像の市場への適切な流通です。その分野では、「極めて秘匿性の高い個人情報が含まれる。流出したらどうするのか?」といった見方が強く、システム構築はおろか研究の余地も多分に残されています。
今回の流通システムではブロックチェーンが用いられ、医療画像の流通における強固なセキュリティを確保しつつ、「教師データ」が不足している医療AIの状況改善をねらいます。
急速に注目を集めはじめた医療AIでは、過去の症例データを参考に医師の診断をサポートする試みが行われていますが、この医療AIが今よりも正確な判断を下すには、より豊富かつ高品質の医療データからの学習が必要になります。このような大量のデータを基に、AIが出力結果の正否を判断するための軸となるのが教師データです。
今回のプロジェクト背景にあるのは、医療データは今後の医療の発展に欠かせないものですが、個人情報の保護の観点から各病院・各医師らが個々に保存するのみで、活用しきれていない現状です。
また、ブロックチェーンもとい仮想通貨と聞くと投資手法としての一面のみを捉える人も多く、その技術の革新性や未来にもたらされる可能性にはなかなか目を向けられません。このような最新のテクノロジーへの懐疑心もあり、ブロックチェーンや医療AIの導入にも二の足を踏む医療機関・医師は少なくないのです。

医療×最新テクノロジーの権威、金太一助教がチームを牽引

今回のプロジェクトは、仮想現実やコンピュータグラフィックス、手術シミュレーション、手術ナビゲーションシステムなど、医療と最新テクノロジーの融合を志向する、東大病院の金太一助教(専門:脳神経外科学)がチームを牽引しています。
金助教は過去に同じく東京大学大学院情報理工学系研究科の五十嵐健夫教授と『データ駆動型知的情報システムの理解・制御のためのインタラクション』(平成29年度報告)という共同研究を行った人物です。この研究は機械学習を用いた診断・治療支援技術の開発を念頭に置き、今回取り上げているプロジェクト同様にデータの適切な流通に関する考察が行われました。つまり金太一助教は、これまでにも医療データの流通に関する研究を精力的に行っている人物であり、単なる脳神経外科医ではではなく、今回のプロジェクトの適任者と言えるでしょう。

医療データが流通し始めると医療はどう変わる?

医療データが正しく流通できるようになると、当然のことながら医療は大幅に進歩すると考えられています。
例えば、もし、今回のプロジェクトで重視されている医療画像が流通できるようになれば、医師の学びの質も向上するでしょう。そして、豊富な医療画像からさまざまな見解が得られることで、実際の診断にも役立てられるに違いありません。
さらに、患者にとっては自身の医療データを複数の医療機関・医師に共有することで、あらゆる治療方法やセカンドオピニオンなどの検討にも役立てられます。もっと身近な話題でいうと、診察にかかる待ち時間や複数回の診察も少なくなり、時間的かつ金銭的な節約にもなるかもしれません。
しかし、現在医療AIの可能性が模索され続けている現代では、前述の通りその信頼性と安全性を解決することが第一とされており、厚労省も、医療AIに関して「AIは支援ツールに過ぎず、判断の責任は医師にある」との見解を示しています。
現状、医師の診断をサポートする役割に留まっている医療AIの信頼性を高めるには、病気は同じでも患者(病歴・体質等)が違えば診断結果にも違いが生じるように、できる限り豊富で高品質の学習が求められます。
これからの医療に必要なのはAIと医師による連携です。現在恐る恐る行われているAIと医師の協力による診断も、今回のようなプロジェクトを通じて医療画像流通システムが整い、豊富なデータベースの中からAIが正確な診断を下せるようになれば、現場の医師の大きな自信にもつながることでしょう。

まとめ

東大病院とクリプタクトが連携することで、医療画像は今よりも安全に流通させることができるようになれば、AIや医師にとっては今よりもはるかに高い学びの機会の創出を、患者にとっては病気治療の選択肢を広げることにつながります。
プロジェクトには脳神経外科医かつ医療データ活用の権威である金太一助教も参加しています。ここにブロックチェーンの活用の最前線を走るクリプタクトが加わることで、研究とシステム構築は一気に加速することでしょう。
流通が困難とされている医療画像ですが、その可能性は無限大。正しく扱えるようになれば私たちの社会は今よりもさらに発展するはずです。

【参照】
クリプタクト プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000031324.html

金太一助教 東京大学プロフィールページ
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/people/people003717.html

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
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