ファイナンス

「自己確立」を助ける幼児教育の必要性

2019.08.06

ドイツの幼児教育事情

ドイツは幼稚園発祥の地で〈キンダーガーデン〉はドイツ語の〈キンダー / Kinder(子供)〉と〈ガルテン / Garten(庭)〉の複合語です。今回は、幼稚園発祥の国であり、現在欧州の経済をリードしているドイツにおける幼児教育事情について紹介します。

ドイツの幼稚園事情

ドイツの幼稚園は大まかに
• 市・町が運営している公立幼稚園
• 教会が運営している幼稚園
• 私立幼稚園
の3つに分けられます。

一般的にクラス編成は縦割りで、3歳から6歳ぐらいまでの子供が同じクラスにいます。送迎バスはなく、保護者やベビーシッターが園児の送り迎えを行い、登園時間の制限も緩く、園児はだいたい6時から9時の間に登園します。また制服、指定のカバン・上履き・体操着などもありません。

特色のある私立幼稚園

公立幼稚園や教会系幼稚園に満足できない親たちは、自らの理想に近い教育理念を掲げている私立幼稚園を選びます。このような幼稚園に通っているのは、教育熱心でどちらかと言えば裕福な家庭の子供たちです。
私立幼稚園で代表的なのは〈ヴァルドルフ幼稚園〉〈モンテッソーリ幼稚園〉〈森の幼稚園〉です。

・ヴァルドルフ幼稚園

オーストリア出身の哲学者・思想家ルドルフ・シュタイナーの「人智学」に基づいた一貫教育が行われ、日本では「シュタイナー学園」として知られている私立幼稚園です。
「7歳になるまでは文字を教えない」「テレビ、ラジオ、DVD、CDなどはタブー」「玩具は木、木の実、石などの自然素材のもの中心」などのポリシーを持ちます。
ヴァルドルフ学園の保育士や教師は独自のプログラムにて養成されますが、自然科学を神秘思想に基づき教える教師もいるため、カルト的だと懐疑的な見方をする人もいます。しかし踊り、造形、絵画、演劇などを積極的にプログラムに組み入れているため、芸術的才能が花開きやすいとの評判もあります。

・モンテッソーリ幼稚園

20世紀の初めにイタリアの精神科医マリア・モンテッソーリが提唱したメソッドに基づく幼稚園です。「感覚教育」と「自発性」を重視したメソッドは、世界各国の幼稚園や学校で採用されています。
幼稚園にある「教具」と呼ばれる玩具は、子供達の持つ視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚を鍛え、集中力をつけることを目的に、大きさ、手触り、重さ、材質にこだわり考案されています。
また園児たちが自由に動けて、好きなことに集中できる「空間作り」も重視されており、独自のプログラムで養成された保育士たちは、子供の自発性を育成するサポート役として、基本的には子供たちの活動に口出しせず見守ります。ドイツでは公立、教会系の幼稚園以外の選択肢として特に人気が高い幼稚園です。

・森の幼稚園

1950年代にデンマークでひとりの母親が自分の子供と近所の子供を集めて森の中で保育したことから始まり、北欧やドイツで広まりました。1993年にドイツで正式に幼稚園として認可され、現在では1500以上の森の幼稚園がドイツ国内に存在しています。
「屋根と壁のない幼稚園」とも呼ばれるように、森の幼稚園には、幼稚園の建物は存在しません。森の中に小さなコンテナか小屋があるのみです。お弁当を食べるのも、トイレをするのも全て戸外です。園児たちは雨や雪の日でも森の中を歩き回って過ごし、木の枝、草の葉、石など玩具として遊びます。そして天候が最悪という場合のみ、コンテナや小屋に入ります。
森の新鮮な空気の中で過ごすことで、
– 免疫力が鍛えられるため病気になりにくい
– 知覚神経や運動神経が発達するため転んで怪我をすることが少ない
などポジティブな調査結果もあります。

ドイツの習いごと事情

ドイツでは日本ほど早期教育が盛んではありません。
むしろ「習いごとの強制は幼児にストレスを与えるので良くない」との意見も多いようです。
例えば、バッハやベートーベンなどの偉大な作曲家を生み、クラシック音楽の本場と言われるドイツですが、子供たちが楽器を習い始めるのは、小学校入学以降というのが普通で、楽器を習い始めても、1、2年で辞める子供も少なくありません。「子供が嫌がるなら、その意思を尊重する」という親が多いからです。
しかし東欧系やアジア系の家庭となると教育熱心な親も多く、早い時期から子供の習い事に力を入れます。そのため音楽コンクールの入賞者には、東欧系やアジア系の名前が多く見られます。

人気の習い事は【スイミング】

小さな子供にはあまり習い事をさせないドイツですが、スイミングだけは例外です。泳げなければ命を落とす危険もあるため、幼稚園に入るとスイミング教室に通い始める子供が目立ちます。ドイツの小学校の体育では、丁寧な水泳指導は行なわれないため、家庭のバックアップなしでは全く泳げないままになる可能性があるといった背景も存在します。
ちなみにドイツのスイミング教室では、泳ぎのフォームやスピードは重要ではなく、「溺れずに泳げること」を目標とするため、数十メートル泳げるようになればスイミング教室に通うのは終了というパターンが一般的です。

「自己確立」を助ける幼児教育の必要性

個人主義が浸透しているドイツなどのヨーロッパ社会では、幼い頃から自己確立のための訓練がされています。その一方、調和を大切にする日本では、小さい頃から自己より周囲に視線を向けることを教えられます。
「自分らしく遊ぶこと」を尊重するドイツと「みんなと仲良く遊ぶこと」を尊重する日本。文化が違えば、幼児教育への姿勢も大きく異なります。
日本の社会で生活するには「調和」は不可欠ですが、学校や会社に適合できずに、登校拒否や引きこもりが増えている今、子供達に「調和」プラスドイツ式の「個と集団の上手な線引きテクニック」を教えるといった方法を試してみる価値はありそうです。

執筆者:DR’S WEALTH MEDIA編集部
458件の開業医を成功に導いた成功事例集