ICOは詐欺が多い?仮想通貨による新しい資金調達の可能性とそのリスクについて
2017.10.30
新しい資金調達方法「ICO」について
ICOとは、Initial Coin Offeringの略で、仮想通貨を用いた新しい資金調達方法の事を指します。
同じく企業の資金調達方法としてIPO(Initial Public Offering:新規株式公開)がありますが、IPOが株式の発行と引き換えに資金を調達するのに対して、ICOは企業が特定のプロジェクトのために必要な独自のトークン(デジタル通貨)を発行し、市場に出すことによって、資金を調達します。
ICOをする際にはICOで調達した資金をどのように使うのかを明確にしなければなりませんが、ICOの際に企業側がすべきことはホワイトペーパーというものにプロジェクト計画や調達した資金の使い道を書くだけなので、複雑な手続きが必要なIPOに比べると簡単かつ素早く資金調達を開始することが可能と言われています。
ICOによって発行される独自のトークンはビットコインやイーサリウムという仮想通貨で購入することができ、このトークンを購入することによって投資家はICOによる資金で作られたサービス上でトークンを利用することができます。また、通常の金融商品と同じように購入したトークンを市場で売買することもできます。
ICOによって作られたサービスが革新的なものであり、非常に価値があると判断された場合、購入したトークンの価値も跳ね上がるので、ICOに投資する人たちは、将来性のあるサービスを開発している企業のICOに投資することができれば、大きなリターンを得ることができるでしょう。
ただし、ICOをして資金調達をしているところはベンチャー企業が圧倒的に多く、そのほとんどが革新的ではあるものの本当に将来実現するのかは分からないプロジェクトを掲げています。実際に、IOCをする際に掲げていたものに近いプロダクトをリリースできているプロジェクトは非常に少なく、このような企業のプロジェクトへの投資は、実体が伴わない投機的なものになりがちである側面もあります。
このようにICOは全く新しい形の資金調達方法として最近はベンチャー企業などが活発に利用しており、投資先としても大きな注目を集めているのです。
今年の9月にはALISという国内のスタートアップ企業がブロックチェーン技術(仮想通貨の決済や送金に使われている技術)を用いた新しいSNSサービスの開発のための資金をICOで調達したところ、わずか4分で1億円が集まったことが話題になりました。
確かにICOへの投資は革新的なサービスを開発している企業への投資に成功すれば大きなリターンを得られることは確かですが、やはりその分だけリスクの大きい投資先であることも否めません。
前述のようにICOをするハードルはIPOに比べて非常に低いのが現状で、ICOをするための審査は厳しいものではありません。有価証券を発行する際に作成する目論見書で虚偽記載を行うと金融商品取引法違反となりますが、ホワイトペーパーの場合は虚偽記載や誇張表現を罰する法律はまだありません。だからこそ、実際には実現不可能なプロジェクトやプロダクトを掲げてICOをするような企業や詐欺まがいのICOの案件が頻発しているのです。
つい先日には、あのLINEがICOをするという名目で全く関係のない団体がICOをしており、実際に何人かはお金を振り込んでしまった人もいたようです。
このようにICOを使ってお金儲けをしようとする詐欺グループも出てきていることも事実で、今年の9月には、中国人民銀行通称PBoCがICOを中国国内で企業または個人により行うことを禁止することを発表しました。
中国はもともと仮想通貨に対する取り締まりも厳しく、法定通貨である中国元の価値を守るためという動機があるため、この規制がICOの信用を落とすものかどうかは不明ですが、中国以外の国でも今後ICOに対しての何らかの規制は進んでいくことが予想されています。
いずれにしても、これまでの資金調達の形をがらりと変えたICOは、今後の会社設立のプロセスや金融業界全体にも大きな影響を与えていくことでしょう。
今後まだまだ白熱するであろうICOにまつわる話題を、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。