退職金を準備する上で押さえておくべきポイント~医療法人の場合~
2017.03.13
退職金Vol.2
今回はこの方法で退職金の準備をされている医療法人の先生が陥りやすいポイントを中心に解説します。
まず、最も見落とされがちなポイントに「役員退職金支給限度額」があります。正確には法人税法上の規定で、役員退職金を損金算入することの出来る範囲が決められているのですが、医療法人の役員の場合はこの範囲内の退職金を受け取ることになります。
その計算は以下の通りです。
最終役員報酬月額×役員在任年数×功績倍率
因みに、この功績倍率に関しては、明確な定めはなく、一般的には「社長3倍・専務2倍・取締役1倍」が目安と言われています。医療法人の理事長であれば3倍弱、副理事長であれば2倍程度で計算されているケースが多いようです。上の式とは別に特に貢献が大きい役員には功労加算金を上記の式で計算した金額の3割程度の範囲内で規程に定めて支給することも可能です。
第5次医療法改正に伴ってできた平成19年4月以降の「基金拠出型医療法人」では、解散した場合の残余財産はそれまでの出資者ではなく国又は地方公共団体に帰属するようになりました。医療法第54条に「医療法人は剰余金の配当をしてはならい」と定められている配当禁止に基づき、医療法人の非営利性を強化するための改正が行われたといわれています。この「非営利性」故、この退職金の上限を超えない出口戦略、長期的計画が必須なのです。
1つの事例を見てみましょう。
役職:理事長(功績倍率2.7、功労加算+30%)
在職年数:10年
最終報酬月額:200万
退職時法人に残っていた資産:1億
死亡保険金(被保険者B様、契約者医療法人):2億
退職理由:死亡(業務外)
この場合のB様の退職金の上限は上記の計算式を元に計算すると
200万×10年×2.7×1.3=7020万
となり、死亡退職金の場合は弔意金が加算されます。
弔慰金は
業務上の死亡の場合
普通給与(賞与等を除く)の3年分
業務外の死亡の場合
普通給与(賞与等を除く)の半年分
とされていますので、B様の場合は600万となり、合計7620万となるわけです。
この際に、後継者がいて医療法人を継続できる場合は大きな問題になりませんが、解散する場合、このケースにおけるB様死亡時における法人の資産は合計3億ですので、この退職金等で取りきれない残余財産は国や地方公共団体に帰属してしまいます。
つまり、目先の税金ばかりを意識し法人保険に加入するのではなく、この上限を意識した上で退職金を積み立てていくことが大切なのですが、この上限を大きく超えて退職金の積み立てをされている方も少なからずいらっしゃるもの事実です。
今回例に挙げたような万が一の場合は計画通りというわけにはいきませんが、長期計画を持っていれば、退職予定の例えば5年前から少しずつ役員報酬を上げていったり、法人開設当初から利益余剰金の残さないように調整したり、法人保険の一部を退職時以前に受け取るよう設計したりすることにより、トータルで受け取れる金額、所謂「可処分所得」を上げることに繋がるのです。
出口を見据えての退職金積立はできていますか?