今年10月から、パート従業員への社会保険の適用が拡大されます!
2016.07.11
扶養控除の対象額の変更について
「夫の扶養の範囲内」という場合、年収が「103万円」「130万円」の2種類があります。「103万円」は、妻の年収がパートの給与収入のみの場合で、年収103万円以下であれば所得税がかからず、夫の会社から家族手当が出るところが多いため、103万円以内の勤務を選ぶ場合です。
もう1つの「130万円」は、妻が年収130万円未満のパート給与収入のみであれば所得税はかかりますが、夫の健康保険の被扶養者にあたり妻は健康保険料を支払わずに夫の健康保険に加入ができますし、国民年金の第3号被保険者となり、保険料を支払わなくても国民年金に加入ができます。そのため、夫の扶養という恩恵を受けることができるのです。
ただ、この130万円未満の年収でも、正社員のおおむね4分の3以上(おおむね週30時間以上)の勤務時間があると、夫の扶養から外れて社会保険に加入することになります。そのため、130万円未満とおおむね週30時間未満という勤務形態で、働きたいというケースもあります。
このパート従業員の社会保険への加入が義務付けられている勤務時間等の範囲が、今年10月から変わります。勤務日数と勤務時間が正社員の4分の3未満で、以下の5つの条件にすべてに当てはまる場合には、パート従業員は、夫の社会保険の扶養から外れ、自分で社会保険に加入することになります。
1 週20時間以上の勤務時間(残業時間は含まれない)
2 月額賃金88,000円以上(※1)
3 雇用期間が1年以上見込まれること
4 勤務先が従業員501人(※2)以上の法人・個人事業所等であること
5 現在、学生ではないこと(夜間・定時制の学生等は除く)
※1 賞与、残業代、通勤手当等を除く
※2 適用拡大前に厚生年金保険・健康保険に加入していた労働者の数
つまり、おおむね週30時間以上という勤務時間が週20時間以上に減り、月額賃金88,000円以上になります。そして、今までの扶養の範囲で考えられていたのは、年収103万円、130万円という年収ベースでしたが、今回は単純に88,000円×12か月=105万6,000円以上というように計算して、年収ベースで考えるのではなく毎月の賃金が88,000円以上かどうかで判断されます。
もっとも、今回の改正は従業員数が501人以上という大きな法人等が対象になっていますので、対象とならない医院がほとんどかと思います。ただし、これから先、社会保険の加入の適用要件の見直しが行われる予定です。それによって、適用対象になる医院が増えることが予想されますので、法律の改正にはアンテナを張っておきたいものです。
自分の勤務する医院が改正の対象になるかどうかわからないという場合は、事前に確認をしておきましょう。今までと同じ勤務形態では社会保険への加入が予想されるときは、働き方を考え直したいといわれる従業員の方が出てくる場合も想定できるためです。
パート従業員の社会保険への加入は、健康保険料や厚生年金保険料を支払うことで手取り金額が減りますが、健康保険の被保険者になることで傷病手当金や出産手当金がもらえたり、厚生年金に加入することにより将来の年金額が増えたりするメリットもあります。
いつ法改正が行われ、自身の医院が適用となっても焦らなくてすむよう、この機会に、社会保険への加入のメリットを調べ、従業員の方々がどのような働き方を望まれているのか話し合ってみてはいかがでしょうか。